『どしたの、三玲?』
「えっと、なんか買ってない本が混じってるんです……」
『だってお前「こっちの棚からこっちの棚までください」とか言ってたじゃん。
覚えのない本が混じってて当たり前じゃない?』
「んー……。
というか、重い?」
「重いってどういうことすか?」
「なんか中身が重いみたい」
三玲が帝人に本を渡す。
「あ。ほんとだ。重いね」
外見はふつうの箱入りの本だ。
三玲が銀色の、箱から本を引っ張る。
ぱさり。
という本にあるまじき音がした。
白い粉の入った袋が落ちてきた。
「え?」
どうやらページの間に無理矢理、中身の詰まった透明なビニールの袋が挟みこまれ、それが本の箱に詰められていたらしい。
白い粉が入った袋が。
それを見た帝人たちは何が起こっているのかよく分からない顔をし、三玲は膝の上の袋を見て固まり、俺と神楽は冷静に状況を分析した。
まず神楽が車を適当な駐車場に止め、俺は袋を少し破り、粉を口に含んだ。
神楽が厳しい顔で俺を見る。
呆然とする来良組と三玲を驚かせないよう、ゆっくりと俺は言った。
『――……麻薬だ』
車内の温度が下がった。
神楽が袋を受け取り、手にとってみる。
「麻薬だな」
「嘘だー!!!」
三玲と帝人と正臣が同時に叫ぶ。
杏里はおろおろと戸惑うだけだが、三人は今にも車を飛び出さんばかりに慌てていた。
帝人なんか目に涙を浮かべている。
神楽が頭に手を当てる。
「なんでお前といると、こう、事件に巻き込まれるんだ、刃」
『……俺のせいじゃない』
嗚呼……こっちが聞きたい。