※暴力あり



ああ、嫌な感触だ。

身じろぐ際にとろり、と腿をつたって流れるそれは見なくても何なのかわかっている。

何の後かは言いたくもない、「あの」後、すぐに気を失った俺が次に目を覚ますとそこはシズちゃんに襲われた路地裏ではなく、どこかのアパートの一室のようだった。見覚えなどないがこの部屋に充満するにおいがこの部屋の主が誰であるかを教えてくれる。ヤニ臭さをたっぷりと含んだ、あいつのにおい。嗅ぎ慣れたそのにおいは平和島静雄という俺の大嫌いな奴のものだった。…あいつのにおいの他に、もっと充満しているにおいがあったが、それについては知らないふりをしておこう。まあ、においなんぞに頼らなくてもすぐ左を見ればそいつは横たわっていたのだが。


ともかく、今すぐにここを出たい。

うんしょと腕をつっぱって立ち上がろうとしてはみるものの、腰に襲う激痛、体全体のだるさ、腿をつたう精液の三コンボに頭まで痛くなりそうで俺はおとなしくもう一度ベッドに身を委ねた。


気を失った後、ここに運ばれた後も何度か行為をされたのだろう、シーツにはかぴかぴとした精液が点々とこびりついていた。隣でグースカ寝ているシズちゃんを殺してやろうとも思ったが、ナイフも見つからない上弱った俺が素手で戦って勝てる相手じゃない。だがいつまでもここに居るわけにもいかない、と全力を振り絞ってベッドから抜け出したその時、リリリリとけたたましい音が枕元で鳴り響いた。どうやら目覚ましであるそれをのそりとした動きで止めたシズちゃんは、ゆっくりとこちらを見、ぼーっと俺を眺めた。

シズちゃんの顔をまともに見た瞬間昨日の体を裂くような痛みを思い出し、恐怖が背筋を駆け抜けた。部屋を包む静寂にたえかねて、なんとか声を絞りだそうとしたのだが、特に何も言うこともなかった事に気がついた。

「……お、は…よう?」

「………あぁ」


考えた末に絞りだした言葉もあぁ、の一言で霧散し、気まずい沈黙が帰ってくる。俺はとにかくこの場から逃げたくて痛みを訴え続ける腰を叱咤しつつコートを探したが、見つからない。アレさえあればタクシーでも拾ってなんとか家に帰れるのに、と必死になってキョロキョロしてるうちに、すっかり目が覚めたであろうシズちゃんが俺の腕をいきなりつかんだ。


「いっ、」


ぎりぎり、と握るそれは掴むというより握り潰さんとしているようで俺は必死に振りほどこうともがいてみたがシズちゃんは身じろぎすらしなかった。


「…はなして」


遠慮がちに言ってみるもののシズちゃんの力が緩むことは無く、軋むような音すら響く腕の痛みに思わず顔がゆがむ。シズちゃんは俺の顔を見てにやりと笑い、掴んでいた腕を引いて俺をベッドに引きずり込んだ。


「や、」


ぼすんと体をベッドに預けさせられると、すかさずシズちゃんは上にかぶさった。
まだやる気なのか。つい二日前の事だがもう随分前のような気がするいつかと同じようにみぞおちを蹴ってやろう、と足を振り上げるとそれをがしりと捕まれる。やばい。


「同じ手が通用するかよ」

「…それ、がシズちゃんだったじゃん」


強がってはいるものの勝手に震える肩のせいで何も誤魔化せない。なんだか本当に違う人になってしまったシズちゃんが、俺はただただこわかった。
捕まれた足が高く上げられ、シズちゃんの肩に乗せられた。


「お前がそうやって強がったりすんの、すげえそそるんだよ」


耳元で囁くと彼は息をひゅっ、と吸い込んで、熱いペニスで俺を貫いた。


「っ、」

「声も、出ねぇの、かよっ」


ぐりぐりと無理矢理ねじ込まれるそれにまたしても昨日の恐怖が俺を襲う。ああ、やっぱり意識は飛んではくれないようだ。がたがたと体が震えた。
昨日彼が放った精液によって滑りが良くなっているのか、難なく受け入れたそれに彼は顔をしかめる。


「……きもちわりい」


お前の排泄物だろ、と突っ込むのは心の中だけにしておく。
せっかく入れたそれをずるりと引き抜いて、意識を手放しかかっていた俺の後頭部をわしづかみにする。


「あ、」

「おい、ノミ蟲、」


口あけろ、と言われて嫌な予感が俺の体を駆け抜けた。そのまさかだった。シズちゃんは自らの股間に俺の顔を持っていった。


「くち、あけろ」


二度目のその言葉には威圧感というかすごい重圧が含まれていて俺はもうなるようになれ、と口を開けた。「舐めろ」と言いながら押しつけられたそれはとても気持ち悪く、せりあがってくる吐き気を必死で押さえて夢中で舐めた。


「、む、んぅ」

「…へたくそだな、手前」


じゃあやらせるな。

ああもう、こんなの地獄以外のなにものでもない。

シズちゃんは俺の後頭部をむりやり押さえ付けて喉の奥へ奥へと突っ込む。あまりの苦しさにえづくと彼はにやりと笑った。しばらく出したり突っ込んだりを繰り返したシズちゃんはぶるりと体を震わせた後、俺の口内に精液を流し込んだ。逃げようと引っ込めかけた頭を押さえ、強制的に嚥下させられたそれは俺の喉を焼くようにして流れていった。



気を失う寸前。

額にはりついた髪を払う、節ばった大きな手を見た気がしたが、夢だったかもしれない。




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