変声期は迎えたものの、いまだ幼さの残る声が俺を呼ぶ。「折原先生」。わずかに緊張をはらんだ、聞きなれないその声に誘われるようにして俺はゆっくりと瞼を上げた。
西日の射す旧校舎。俺が監禁されているその一室に、一瞬だけ光が差し込む。ほぼ一日ぶりに見た太陽の光は、その少年の茶色がかった髪をきらきらと輝かせた。
目付きの悪いこの顔は、確か―

「平和島、くん…だよね?……昨日までの子は?」
「……今日から、俺が委員になったんで」

なんとも素っ気ない返事。その言葉さえ終わらないうちに、無機質にがちゃん、と扉が閉まる音が響いて狭い教室は再び薄暗い闇に閉ざされた。

平和島くんは俺の担任するクラスの生徒だ。前期は生き物係だったと記憶しているが、後期から、この「搾乳係」と呼ばれる給食係になったのだと言う。
平和島くんは足元に乳汁を溜める青いバケツを置き、俺の首輪から伸びる鎖を乱暴に引っ張った。急にぐいっと引っ張られた事でバランスを崩した俺は、平和島くんの胸元に引き摺られるようにしがみつく。彼は暗闇の中でまさぐるように全裸の俺の胸や腹を撫で、やがて乳首を探り当てると、それをぎゅうときつくつねった。

「いっ…、そんな、きつくしなくて、も…出るから…」

じわりと液体が染みだす感覚がする。俺がどれだけもういいと言っても、平和島くんは何かを確かめるように押したりつぶしたりを繰り返した。

「ねえっ、てば…もう」
「……よくわかんないんすけど、」
「…え…?」
「やり方、よくわかんないんすけど、とりあえず搾ったらいいんすよね」

ここに赴任し、この教室に閉じ込められるようになってから少しずつ膨らんでいき、今では起伏をもつようになった胸。それを平和島くんはがしりと掴んで握り潰した。
もぎ取らんとするかのように思い切り鷲掴みにされた俺の乳房は勢いよく乳汁を吐き出す。

「や、ひぅう!」

ぶしゃあ、と威勢のいい音が薄暗い部屋に響き、俺の乳汁は位置を調整されたバケツの水位をどんどん上げていった。

「っあ、あぅ…っ!」
「すっげえ…牛みてえ」
「や、ああっ…!いっぱ、いっ…!みるく、出、あ、あっ…」

今までの子は、乳首どころか全裸の俺を見ることにさえ恥ずかしがったり、それこそ本当に乳絞りをするように機械的に絞ったりするだけだったのに。
力任せに揉まれるという、今までなかった感覚に理性がぶっ飛んだ俺はまるで蛇口をひねったかのように乳汁を吐き出し続けた。
やがて水音はジャアア、という水面を打つ音に変わり、バケツは飽和状態に達した。入り切らなかった乳汁が俺の足元に水溜まりを作る。すっかり腫れあがった俺の乳房から平和島くんが慌てて手を離しても、乳首から吹き出すそれの勢いは衰えることがなかった。

「…っ先生の…おっぱい、止まんねえ…」
「あ、あんっ…へ、わじまくんが、あんなに…っ、つよく揉むからぁ……」

平和島くんはぴゅうぴゅうと乳汁を吐き出し続ける俺を、吐息がかかる距離で観察する。はじめは焦りを隠そうともせず、俺の乳首を押さえたりしてどうにか射出を止めようとしていたようだが、やがて彼は何か思いついたように呟いた。
……勿体ないっす、よね。

言葉の意味を察した俺が慌てて身を捩る前に、彼は俺の腕を引いて、むきだしの胸に口をあてた。がり、と歯を軽くあてて乳首を刺激しながら、吹き出したものを一気に吸い上げる。

「へ、わじ、く、っ…や、やら!ああ、あ、あっ、あああ!!」

まるで赤ん坊のようにちゅうちゅうと乳首を吸い上げられると、とてつもない快感が俺を襲った。薄っぺらい乳房を揉みしだかれるたび、頭の中はまるで靄がかかったように真っ白になる。

「あ や、ああ、だ だめっ…も、もう、出るぅ、あ、あっ」
「…もう、いっぱい出てんじゃないすか…」
「や、違、ちあう、し、下ぁ…っ!もっ…いく、いっ、あ、ああっ!!」

体が大きく跳ね上がり、俺はびゅくびゅくと精を吐き出した。
毎日のように乳汁を搾られてはいたが、射精したのは、もう数ヶ月振りかもしれない。

「あ、あ…あああ…」

いきおいよく吐き出されたそれは、たぷたぷと表面張力で揺れるバケツの水面に波紋を作る。平和島くんは名残惜しげに染み出す乳汁をペロリと舐めとりながら俺の乳首から口を離し、バケツを覗きこむように見た。

「……バケツに入っちまった」

せっかく搾ったのによお。ぼそりと呟き、残念そうにため息をつきながら、彼は重そうなバケツを軽々と持ち上げた。縁から乳汁が少しばかり溢れたが、彼は気にする様子もなく、右手にバケツをぶら下げて俺にじりじりと近づく。もともとそう遠くなかった距離が、ゼロになった。
なんとも言えない恐怖を感じ取った俺が「どうしたの」と問う、と同時に、平和島くんは俺の頭上でバケツを思い切りひっくりかえして、残酷に言った。

「……もっかい、搾り直し、っすね」


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