あとはもう、思うがままだった。
深く唇を重ねて、舌を絡める。苦しそうな息は聞かないふりをした。
臨也の唇の端から唾液が一筋こぼれ落ちる。首に回した手は先程よりきつくなっていた気がした。臨也のペニスを掴んで、強く上下に扱く。臨也が耳元で熱く甘く喘ぐものだから俺は手の動きを更に早くした。

「ん、あ、あ、シズちゃん…っ」

臨也は案外あっけなく吐精した。俺はそれを手に絡めて、臨也の後ろの蕾に手を伸ばした。臨也はそれをやんわりと止めた。俺の手に自分の手を絡ませ、さっき自分が吐き出したばかりの精を自分の手にも絡ませる。

「自分で、する…」

臨也は自分で慣らし始めた。俺の腹の上で乱れまくる臨也から目を逸らす事はもうできなかった。

「ぁ、ん」

手持ちぶさたになった俺は臨也の髪をすく。さらさらの髪が臨也の精に濡れた俺の手の上に捕われて、束になっておちる。そんな事を繰り返していると臨也は自分の指を三本まで飲み込んでいた。

「シズちゃん、も、ちょうだい…?」

臨也の誘いに俺はもう何も考えられなくなって、臨也の細い腰を掴んで、俺のペニスに打ち付けた。

「や、いた…あ、あぁっ、いたい、うぅ…っ」
「…誘ったのは手前、だろ?」
「あ、シズちゃん、シズちゃぁん、シズちゃんっ」

臨也は俺の上で髪を振り乱して喘ぐ。暫くすると痛みだけでなく快感を感じ始めたようで、臨也の濡れた唇からは俺の名前と無意味な声だけがこぼれ落ちる。

「シズちゃん、あぁ、あ、シズちゃんっ…」
「臨也っ」
「ぁ、もっと、もっとぉ、シズちゃん、もっとぉ」
「ああ、全部くれてやるよ…っ」

何度も俺の名を呼ぶ臨也に答えるように動きを激しくすると、臨也は限界を迎え、ナカがきゅっと締まった。俺も臨也の中に注ぎ込む。
荒い呼吸を何度か続け、かなりの時間が過ぎたが臨也は俺の上から降りようとしない。それどころかまた首に手を回した。

「臨也…?」
「…まだ、足りないよ…シズちゃん、ちょうだい…?」

重なる誘い文句に熱を覚えたが、辛そうな臨也の顔に冷静を取り戻す。

「理由くらい聞かせやがれ」

少し怒った調子の俺に臨也は長い睫毛に縁取られた両目を伏せる。少しの間を置いて、呟くように言った。

「俺のほうが、上手いでしょ?」
「…?「ほうが」って誰と比べてんだ」
「…シズちゃんの、カノジョ。だから、俺にしなよ、シズちゃん、ね?」

臨也は俺のペニスに手を伸ばすが、俺はそれを阻む。臨也の言ってる意味がよくわからない。

「彼女?どういう意味だ?」

すると臨也はぽかんと、拍子の抜けた顔をする。
なにやらかなり重要な食い違いがあるようだ。

「は?だから、シズちゃんの彼女。昨日から付き合ってんでしょ?」
「何の話だァ?そういうのは居ねぇけど…」
「え、だって新羅が…シズちゃん、昨日告白されて、そのままラブホにって…」

なにやらべらべら喋っているうちに気付いたのか、臨也の頬が真っ赤に染まる。腹の上からそろそろと降りようとした臨也の腰を掴む。

「ちょ、何すんの!もう出したじゃん!二回も!」
「あ゛?足りねぇって言ったのはどこのどいつだったかなァ、臨也クン?」
「あれは必死だったの!もー無理だって!バカ、発情期、死ねっ!」

臨也の言葉はぐさりぐさりと突き刺さるが、もう俺のペニスは勃ち上がってるし、簡単には止まらない。

「知るか、誘ったのは手前だ!」
「ちょっとシズちゃん!もう…いい加減に…してよっ!」

臨也の拳が的確に鳩尾に沈む。さすがの俺でも腰を掴む手は緩む。臨也がその隙を見逃す事はなく、素早く間合いをとって、脱ぎ捨てた俺のシャツをはおった。

「…シャワーしてくる。入ってきたら殺すから」

絶対零度の声。さっきまでの甘えた態度は何だったのか、熱など微塵も見せない冷たい瞳で命令する。少し頭に来るが、ああこっちのほうが臨也らしくていいななんて思った俺は臨也がシャワーを浴びてる間に頭を冷やさなければならない。



…残念ながら。
臨也がシャワーを浴び終わって、新羅に電話で罵声を浴びせて、ストレス解消と言わんばかりにナイフでどぎついピンク色の枕を八つ裂きにして、いつものジャケットをはおり、もう二度と会わない、死ね。などと言い残して、バンと大きな音をたててドアが閉まっても熱は冷める気配すらなかった。

くそ。臨也なんか死ね。あー、くそ、臨也の色んな顔が頭から離れねぇ、くそ。


翌日、トムさんが少し遠慮がちに「な、静雄。昨日、あの後どうなったんだ」なんて聞いてきて、昨日吸った煙草の本数が過去最高だったのは臨也には絶対、死んでも言わない。



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