「いいか、臨也、痛くなったらすぐ言えよ。なんなら手え上げろ。叩いてもいいし、ぶん殴っても」
「たぶん大丈夫だよ。そんなびびらなくても」
「俺、ちゃんと加減できるか心配なんだよ。……なあ、臨也、やっぱり」
「シズちゃん、大丈夫だってば。……ね、」
「…あ、ああ」

俺と臨也が付き合いはじめて、もう三ヶ月になる。

高校二年の俺は、待ちに待った今まさに、童貞を卒業しようとしているところだ。これといった動機はないが、お互いが「そろそろ…」と意識はしていた頃に、幽と両親の居ない家という、まさに絶好の機会を得た俺が臨也を誘ったのだった。

俺たちは「普通」ではない。俺は男だし、臨也も男だ。よって、「普通」のセックスもしたことのない俺が臨也を抱くということに躊躇してしまうのも仕方のないことなのかもしれない。出来る限りの事は調べ、ローションなどの準備もしたが、未だ心の準備だけはできそうにない。俺は、一矢纏わない白い体をひからせながら緊張した面持ちでこちらを見上げる臨也の髪を梳いてやり、大きく深呼吸した。

「臨也、あのな…ええと、まず慣らす、からよ」
「う、ん…シズちゃん」

たっぷりと、使いきるくらいの気持ちで、ローションを自分の手にかける。どろりとしたそれはまるで生卵を触っているようで、気持ちのいいものとはいえない。ベッドに横たわり恥ずかしそうにシーツをたぐりよせる臨也の脚を抱えあげ、あらわになった後孔にローションをかけながらおそるおそるそこへ指を滑らせると、臨也の骨張った肩がピクリと震えた。

「臨也」
「大丈、夫…だから」

まるで自分に言い聞かせるようにつぶやく臨也の形の良い頭を撫でる。手のひらに吸い付くような白い尻たぶを遠慮がちに押し広げ、小さな蕾に指をゆっくり、ゆっくりと埋め込む。
臨也は緊張しているのだろう、終始びくびくと震えていたが、ローションのおかげもあってか、指で押し広げるようにすると二本目も難なく受け入れた。

―えーと、確かネットには指が二本回るようになったら挿れていいって書いてあったよなあ…

「も、いいよ、挿れて…」

俺の気持ちを読み取ったかのような臨也の催促じみた言葉に、俺はチャックを下ろし、ズボンを突き破らんとばかりに猛っている自身を取り出した。臨也は先走りに濡れたそれを見て息を呑んだが、すでに覚悟は決まっているらしく、俺から視線を外すことはなかった。
―ああ、こういうところが好きだ。すげえ、好き。

「…じゃあ、挿れるぞ」

臨也への思いを噛みしめながら、てらてらと光る臨也の尻に猛り切った己をあてがい、先をねじ込む―はずだったのだが、緊張していたためか力加減を誤り、臨也の後孔は一気に亀頭のあたりまでを埋めることとなった。臨也はあまりの衝撃にヒュッと喉をならした。

「っ、…!」
「臨也、」
「痛っ…く、ない!」
「…っ何でバレバレの嘘吐くんだよ、手前は!抜くぞ」
「だっだめ!抜いたらもう入んないかもしれないし…ちょっと、待ってくれたら痛くなくなると…思う…」
「……本当だな、無理してねえんだな」
「してない、から、安心してよ」
「……俺はどうすりゃいいんだ」
「動かないで、ちょっと待ってて」
「わかった。動かなきゃいいんだよな」

ふうふうと息を吐いて、首に回した腕からゆっくりと力を抜いていく臨也をただ見ていることしかできない自分に苛立つ。情けねえ。そのことに気付いてか、臨也はしばらくすると少し頬を染めながら「大丈夫だから、ちょっとずつ、挿れて」と促した。俺はせめてもと臨也の額にキスを落とし、探るように腰を進める。

「こ、こうか?」
「う、ん…っくぅ、」

臨也の眉間は深いしわを刻んでおり、心配でいてもたってもいられなくなった俺は動きを止めて臨也の顔を覗き込んだ。

「なあ、臨也、本当に大丈夫なのか?」
「うる、さい…!大丈夫だから!」

ふうふう、ふうふう。しんどそうな臨也の息が首筋にかかる。俺は相変わらず臨也の頭をただ撫でてやる事しかできない自分をひどく歯痒く思いながらゆっくりと腰を進めてゆき、やがて臨也は俺の根元までを飲み込んだ。

「…ん、も、ぜんぶだよね……、動いて、いいよ」
「ゆっくり、ゆっくりだよな」
「うん、…う…」

徐々に腰を揺らしだすと、臨也が苦しげな声を出した。痛いのだろう。当たり前だ、だってそもそもこういうことをするためにつくられた器官じゃないのだから。

「なあ、臨也、すげえ苦しそう」
「だいじょ、ぶ…」
「…待ってろ、なんか、いいところがあるらしいんだ。今探してやっから」
「なに…っ、…変なこと、しなくていいってば…うぅ…」
「…あ、そっか、そうだよな。ヘタに動いたら手前が辛いんだもんな」
「んっ、…、ああっ!んっ…」

臨也の中をうごめく俺の自身がある一点を捉えた瞬間、臨也の声がひどく上ずった。明らかに色を含んだ声。己の出したものだということが信じられないのだろうか、臨也はぱっと手のひらで自らの唇をふさいだ。

「臨也!今の」
「…うるさいっ…いまのは、あっ」
「ここか、臨也、ここが好いんだな」

臨也が俺を感じてくれた事が嬉しくて、臨也の細い腰を掴んだ俺はその一点をえぐるように突く。臨也はかぶりを振って乱れた。

「ああ゛ん!ぅあ、ちょっと…はげし、っ、やだ、あ、っ!」

臨也の赤茶けた瞳がふるふると揺れる。まるで飴玉を溶かしたようなそこには切羽詰まった表情の俺がいた。かぶりを振った際に赤い飴玉から一滴の雫が溶け滴ったのを見て、慌てて挿抜を中止すると、臨也ははあはあとおぼつかない呼吸を繰り返しながらとろとろの瞳で俺を捉える。

「…あぅ、…やめる…の……?」

羞恥に頬を染めながら強請るように甘えた声を出す臨也はひどく色っぽく、なんとも目に毒で、俺はなるべく臨也を見ないようにしながら「そうか、そうだよな」と、まるで呪文のようにぶつぶつとつぶやいた。
ゆっくりと挿抜を再開するとぐちゅぐちゅとローションやら先走りやらがいやらしい音をたてた。「ゆっくりだ、ゆっくり」と言い聞かせ続けているにも拘らずに俺の理性はぶっ飛んでしまったようで、まるで絡み付くような臨也の中を穿ち続けた。

「あ、あっ、はあ、っあ!ああん、あ!」
「いざや、いざや」
「ああ、し、シズちゃん…っ」

臨也が詰まった声で俺の名を呼ぶ。普段も同じ呼称で呼ばれているはずなのに、俺はどうしようもなく自身が昂ぶるのを感じた。やばい、

「やば、出る…!」
「えっ、中で、いいよ…?」

臨也の細い腰をつかんでもちあげようとすると、なよやかで細い指が制止するように俺の腕に触れた。

「いや、なんか、腹…壊すらしいから出す…」

自分の満足感なんかの為に臨也の腹を犠牲にする訳にはいかない。俺はしぶる臨也の腰をつかんで、自身をずるりと引き抜いた。俺はまとわりついた臨也の内壁の名残を噛みしめながら、自慰をするときのように自身を激しく扱き、臨也の腹に射精した。

「っ…ん、っ…」

ぱたた、と雨音のような音が響き、薄桃に色づいた臨也の腹に白濁の液体が散る。それは解放を待ち望むかのようにふるふると震える臨也の自身にも付着した。

「臨也、」

ともすれば壊してしまいそうな、俺の精液と臨也の先走りで怪しくぬらつく臨也の自身をやわらかく掴み、緩急をつけながら上下に扱く。
臨也は限界に近かったのか、あられもない声で喘いだ。

「ああ、やあ、あ、あぁん、や、おれ、おれぇ」
「いざや」
「や、いっちゃ…し、ちゃ、んっ…」
「イっちまえよ…っ」
「だ、も…っ、っあ!あ、あ……っ」

臨也はぴゅくぴゅくと密を吐き出した。俺の手がどろりとしたそれに濡れる。

「はあ、はあ…っふ、ぅ…」

あらかじめ準備していたティッシュでそれを拭き取り、肩で息をする臨也の額にはりついた髪を払ってやると、臨也ははにかむように笑いながら、小さな声で「くすぐったいよ」と言った。






「……この頃は手前も可愛げがあったのによお、いつからこんな憎たらしくなっちまったんだろうなあ」
「……おーサムイサムイ、若気の至りってコワイね」





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