「や、やだ、やだ、うあ、」
「…うっわ、いきなり何かエロくなっちゃってるし」
「やだやだ、離せ、離して、」
「切羽詰まってるって感じ?」
「やだ、やめ、やめろ、やめ…」

制止の言葉など、意味を持たないだろう。しかし臨也は「やめろ」と叫ばずにはいられなかった。そうしなければ、自分が何か、とんでもないものに飲み込まれそうだと心の何処かで感じていたのかもしれない。壊れたオルゴールのように嫌だやめろと泣き叫ぶ臨也に舌打ちしたリーダー格の男は臨也の前髪を乱暴に掴んで強制的に視線を合わせる。

「やめろだあ?あ?止めてくださいだろうが。てめえ自分の立場わかってんのか?」
「う、あ…っ誰が、そんなこと…」

大人しく楽になっちまえよ、と心の何処かで誰かが囁いた気もしたが、臨也にまとわりつく自尊心はそんなものを許さない。歯を食いしばって睨み付けてやると、男は残酷に笑って、「やれ」と誰かに向かって声をかけた。途端、臨也のベルトは引き抜かれ、トランクスと一緒に勢い良くズボンが引きおろされたかと思えば、陰茎への本格的な愛撫が始まる。激しく上下する手のひらが誰の物かもわからないほど、臨也の周りには男がいた。ただきもちわるい。それだけなのに、オトコと言う名前の身体はそこに快感を味わっていた。

「うああ、あ、あっ、や、や」
「やめてください、だろ?」
「や、あ、や、め、ろお、うあっ」
「…生意気だなあ、ほんと」

ぱしん、と頬をたたかれる。リーダー格の男が、周りの奴らに向かって「おい、そろそろ」と声をかけた。羽交い締めにしていた太い腕が緩む。解放されるのやもと一瞬安堵したのもつかの間、臨也の体は180度回転させられた。解放なんてとんでもない。誰かの指が、臨也の後孔に触れた。


「や、ちょっと、どこ触って、」
「慣らさなくてもいいだろうが」

ぐり、と少しばかり埋められた、ただそれだけなのにもの凄い痛みが臨也の背中を駆け抜ける。嫌な汗が、先ほど痛みを伝えた背中を逆方向に流れた。

「やだ、やめろ、やめて、」
「止めてください、だろ?」
「、っ…、や、」

この状況をどうにかして打破せねばと必死に頭を回してみるものの、焦っていることもあってか全くもっていい案は浮かばない。俯いて唇を噛んでいると、「…さーん、にーい」と、カウントダウンを始めた声が聞こえた。

「いーち…?」

最悪、だ。

「や、め…てく、ださい」

羞恥心がぎりぎりと心をしめつける。さっき背中を抜けたそれよりも強い痛みを伴い、臨也はぽろぽろと大粒の涙をこぼした。
しかし、カウントダウンをしていた男は臨也の口から吐き出すように告げられた言葉を聞いて、ヒヒヒと、ひどくこっけいなものを見たような目付きをして意地悪く笑った。

「ひ、ひひひ!……まあ、止めねえけどなあ!」

みちり。そう音がしそうなくらいに、肉が引き裂かれる。この質量は指などという生易しいモノではなかった。

「ぐあっ…ひ、ひ、っ」
「おいおい、やばくねえ?せめてローションくらいは使ってやれよ」

猛り切った陰茎が臨也の後孔を穿つ。臨也は呼吸の仕方という、人間が生まれた時から身に付ける動作すら忘れてしまったかのように、必死に口を開閉させた。パクパクと酸素を求める様子は、まるで砂浜に打ち上げられた魚のようで、臨也を取り囲んでいた男の中の一人が、自分たちがいかに非人道的な事をしているかに漸く気付いたようで、諫めるように呟いた。しかし、その、臨也にとっての蜘蛛の糸は、無惨にも一瞬で霧散した。

「何優しい事言っちゃってんの?コレ折原臨也だぜ?」
「こんなんじゃ足りないくらいだろ。もう一本もう一本」
「はは、もう一本、もう一本」

泣きじゃくる臨也を尻目に盛り上がりはじめる様は、まるでおかしな宗教のようだ。臨也はひたすらに恐怖だけを感じていた。人間が観察したいがためにこんなとこに来るんじゃなかった、と今更ながら悔やんでも、もう遅い。
我をねじ込まん、と、臨也の後孔を我が物顔で突き進んでいたそれは、ようやくその全てを収めたようで、ゆっくりと動きを停止した。臨也にも僅かばかりではあるが余裕が生まれ、久しぶりに酸素を吐いた。痛みを堪える為にひたすら吸う動作をくりかえしていた臨也は過呼吸を起こしかけており、げほげほと大きくむせた。

「、はっ、はあ、ごほ、げほ、げほっ、」

しかし息をついたのもつかの間、おもむろに、その入り口付近にまで抜かれたそれは再び激しく臨也の中を抉った。

「は、あ!ひっ、ひっ、ひい、」
「力抜け、息くらい吐け、よ」
「は、っはっ、ふう、ふ、う」

男の言う通りにするのは癪だが、すこしでも楽になりたいと息を吐くことを心がける。ふうふうと意識的に呼吸をすると、男は臨也の乱れた黒髪を撫でた。

「そうそう、そうだよ、やればできんじゃねえか、さっすが、エロい顔してるだけある、わ!」
「ふう、う、う、そつき…!」

「…言ったら止めるなんて言ってねえだろうが、バーカ」

ぐちゅり、と水音が響いた。臨也を痛め付ける目的の男たちがローションなんて使うわけがないし、臨也の陰茎は挿入の痛みにすっかり萎えてしまっているし、男である臨也には濡れたりなんて女みたいな機能はついていない。鉄臭い臭いがすえた臭いに混じって臨也の鼻腔に届く。裂けてしまった後孔は相変わらずに無茶な挿抜を繰り返され、鮮やかな血が水音を響かせるまでに滴っているのだ。
臨也は、もう何が何だか、わからなくなりかけていた。
痛みのせいか。屈辱のせいか。それとも少しづつ感じるようにってしまった快楽のせいか。おそらく全部であろう。臨也の顔は涙やら鼻水やら唾液やらでぐちゃぐちゃになっていた。臨也のちいさな顎をつかまえて、男がその顔を携帯のカメラで撮った。

「う、うっ、あ、やだ…も、やっ…」

ピロリン、とこの場にはとてもじゃないが似付かわしくない間抜けな音が響く。
臨也は意識を闇に沈めて、ひたすらに時が過ぎるのを待った。






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