野性の獣みたいだ。臨也を初めて見たとき、新羅はそのように思った。折原と岸谷。名簿の順番で並んだ席。新羅の眼前の椅子は臨也のそれだった。入学式から一日経った今日、臨也を背中からずっと観察していてわかった事といえば、授業中も休み時間もずっと携帯をいじくっているということと、クラスメイトが声をかけてもろくに応えないということくらいだろうか。メールアドレスを聞こうと近寄った女子のすべては例外なく、涙ぐみながら自分の席へと戻っていくのだった。
臨也には隙がない。まるで手負いでもあるかのように、たえず相手を威嚇しているのだ。
変わった人間だ、と思った。同時に好奇心をかきたてられた。
愛するただ一人の女性以外にはたいして興味を抱く事はないが、面白そうな人間には好奇心くらいは湧くらしい。小学生の時に出会ったあの男を「解剖したい」と思うように、新羅にとって臨也というのは「精神的に解剖したい」人間なのだ。
「折原くん」
たまらず、やや角張った学ランの肩を叩けば、臨也は緩慢とした動作で振り向き、無言のままめんどくさそうに新羅を見た。
「やあ、僕、岸谷新羅っていうんだ。川岸の岸に谷底の谷、新羅は、朝鮮最初の統一王朝のシラギ、あの漢字で、「しんら」。変わってるでしょ」
にこりと人懐っこい笑みで話し掛けたにもかかわらず、臨也はしばらく新羅を見つめた後から携帯に視線を戻した。
「ちょっ、ちょっと。まだ話してるんだけど」
慌てて臨也の肩を掴んで揺さ振れば、臨也はあきらかに不快だという文字を顔に貼りつけ、再び振り返った。
「……なに」
たった二文字、二音の言葉だったが、新羅には臨也の声はひどく透き通って聞こえた。愛しいあの人に、もし声があったとするならば―いや、声などなくてもセルティはセルティでそれ以上などないのだけれど―、このような声であってほしい、とぼんやり考えた。





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