目覚めは最悪だった。目覚め、というと自然に、俺の意志によって瞼を開いたようにもとれるが、それは目覚めと呼ぶには余りにも痛みを伴うものだった。

「何勝手に気ィ失っちゃってるんですかー?」
「ーっげほっ、が、はっ…」

胃液と、精液の味。目覚めと同時に広がったなんともいえない味に、臨也はむせかえった。おそらく腹あたりを殴られ、顔に精液をかけられたのだろう。たらりと頬をつたうものが何なのか、確かめたくもなかった。
現実から目を背けようとした訳ではないが、名前もろくに知らない男たちのにやついた顔を視界に留めておくという事に耐えきれず、ぎゅうと目を伏せると、ピロリン、と、この場にはそぐわない、なんとも間抜けな電子音が響いた。

「かわいいなあー臨也くん」

黒い塗装が剥げたような銀色の携帯電話が俺を捉える。やめろ、と言いながら手を伸ばすが、それに届く前に別の男の腕が阻む。

「何してんだ、ああ?」
「ばーか、ちゃんと掴んどけっつったろ。こいつ変な技みてえの使いやがるんだからよ」

抵抗するな、と、みぞおちに一発加えられ、臨也の身体が跳ねる。

「げほっ、う、おえ…っ…ふ、ぅ」

あまりの痛みに涙がこぼれる。名前も知らない男たちはそんな臨也を嘲りながら細い四肢を押さえ込み、さんざんにした後孔へと手を伸ばす。どろどろと精液がなだれていく感覚に、臨也はどうしようもなく死にたくなった。

「やべ…エッロいわ」
「物欲しそうにヒクヒクしてやがるぜ、とんだ淫乱だな!」



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