月光


月が満ちる夜は、どうにも身体がざわざわして落ち着かない。
ベジータは、ブルマに割り当ててもらったカプセルコーポレーションの一室のベッドに寝転がりながら、ガラス越しの満月を眺めていた。満月を見ても大猿化しないのは尻尾を切られたからだが、尻尾のない状態で満月を見るのはこの地球に来るまでは一度もなかったことだった。妙な気分だ。
夜も更けているというのに、まったく眠れそうな気がしない。
満月の夜は、月が沈んでしまうまで、睡眠をとるのは不可能に近かった。
地球人はあまり月の満ち欠けに左右されないらしいので、家の中はシンと静まり返っている。
血が、サイヤ人の血が、「戦いたい」と訴えているかのように、頭は冴えて心臓の拍動が激しく感じられる。
(…くそったれ)
ベジータはごろりと寝がえりを打つが、殆ど効果はない。
あの下級戦士は、ずっと尻尾を失ってからも地球で暮らしていたらしいが、こんな風になったことはないのだろうか。
否、絶対になるはずだ、だって同じ人種なのだ。同じ生き物。同じように、月の光が身体を変化させるのだから。
そのとき、ベジータは遠くに、確かにその人物の気を感じた。
真夜中だというのに、背筋が凍るほど凄まじい気が、――悟空との組手をするときに使うことが多い、殺風景な岩場のあたりだろうか――から、びりびりとベジータの神経を灼く。
間違いない、この気の強さは、自分が死ぬ直前に見た最終形態のフリーザを上回っている。
つまり、これは――超サイヤ人。
『戦いたい。』と、また血が沸騰するようにベジータに訴えかける。
敵うわけがない。何度か見たことはあるが、あれは別次元の強さを誇る伝説の超サイヤ人だ。
敵うわけがないのに。

「チッ!」

ベジータは盛大に舌打ちをすると、がらりと窓を開けて、月光に照らされた街角へ飛び立つ。
冷たい風を頬に受けながら、ぐんぐんと近づいていく気の波に、恐怖と興味が同時に沸き起こる。
強い奴を見ると、思わず戦いたくなってしまう、サイヤ人の本性だ。
街を抜け、広がる草原の向こうの岩場が見えてくると、刺すように鋭い気が歓迎した。
かなり遠くからでも視認できるほど、その姿は神々しくまた恐ろしい。
青い月光の下、じっと立ってどこかを見つめている後姿。
きらきらと、金色に輝いているのは月光だけのせいではない。
いつも着ている、ゆったりとしたオレンジ色の胴着。
それなのに、同一人物とは到底思えないほどの、近づいただけで殺されてしまいそうな圧倒的な力。
岩場にゆっくりと降り立つと、ベジータはその背後からゆっくりと近づく。
当然、後ろも振り返らないままの悟空の声が聞こえた。

「よう、ベジータ」
「……」

同じはずのその声すらも、低く残虐なもののように感じる。

「どうした?こんな夜中によ」
「……しらばっくれるな」
「何がだ?」
「わざとその姿でこんなところに来て」
「おめぇなら、ぜってぇ来るって分かってたぜ」
「知ったような口を利くな」
「ああ、そうだな。わりぃ。」
「貴様は、俺が超サイヤになれないことをバカにしてやがるのか。」

悟空は、その言葉にゆっくり振り返る。
月の光を背に、煌々と輝くペリドットのような薄い緑の瞳を細め、くつくつと喉の奥で笑った。

「なっ…何がおかしいッ!」
「いや、……嬉しいんだ」
「なにぃ?!」

片方の口角を上げたその不敵な笑みに、ベジータの神経が逆撫でされる。
感情を剥き出しにして睨みつけても、彼は動じもせずこちらに歩み寄ってきた。もちろん、後ずさりなどできるはずもない、怯えたような態度を取ることは癪だった。本当は、その気が近づいてくるだけでも背中にじわりと嫌な汗をかいているのだが、ぎゅっと拳を握って耐える。

「おめぇがそうやって、オレを追い掛けてきてくれんのが…。オレと本気でやりあえるようになんのは、きっとおめぇしかいねぇ」
「あ…当たり前だっ、貴様を倒すのは俺だぞ!」
「ああ……だからおめえが好きなんだ、……愛してるぜベジータ」

ぐい、と大きな手に顎を掴まれた。
抵抗をするような隙はない。
そのまま半ば強引に合わせられた唇は、すこしひんやりとしている。
美しい金の髪。
吸い込まれるような、薄い色の瞳が、間近で射るように見つめている。
身体が動かない。
いまや伝説の超サイヤ人となったカカロット。

こんなに綺麗な生き物を、いまだかつて目にしたことがあっただろうか。

入り込んでくる熱い舌を吸いながら、うっとりと、ベジータは目を閉じる。
いつのまにか密着している身体が、絡め取られるように抱きしめられ、息をするのも苦しいほど身体が震える。
それは恐ろしさからか、それとも強い者に憧れるサイヤ人の血が歓喜しているからなのか。

「んっく……」

喉を鳴らしながら彼の唾液を飲みこむと、ゆっくりと唇を離された。
銀色の糸が間に繋がり、それが妙に恥ずかしくてベジータは忌々しげにごしごしと唇を拭う。

「…ッ、な、なにしやがる」
「なんにも。…期待したんか?」

少し小馬鹿にしたような声が降ってきて、ベジータは思わずその両腕を振り払おうとした。
普通だったら、吹き飛ばされないまでも容易に離れることはできたはずの力だったにもかかわらず、悟空の両腕はびくともしない。

「期待!?するかッ!ふざけるな!」
「ふざけてねぇよ」

悟空の冷たい声とともに、一気に視界が反転した。
がつん、と背中が何かに当たり、反応する間もなくごつごつした岩の上に押し倒されている。

「貴様…ッ、何を考えてやがる!?」
「言葉にして聞きたいんか?物好きだなぁ?」

ぐい、と両腕を一纏めにされ、ようやくこれから何が起こるのかを理解したベジータの顔色が変わる。

「………ッ、や、めろっ、離せ!」
「やろうぜ、ベジータ。おめぇもホントはやりたくて来たんだろ?」
「な…!」

侮辱の言葉に、ベジータはかっと頭に血が上る。
しかし、どう足掻いても敵わないのは、最初から分かり切っていた。
――そして、伝説の超サイヤ人になった悟空に力で屈伏させられることは、ある種の快感でもあった。
掴まれた両腕は使えず、ベジータはかろうじて自由になる両足をバタつかせ、体をねじってめちゃくちゃに暴れる。
逃げられるなんて思っていない。
しかし、そのまま好きなようにされてしまうのでは、プライドが黙っていない。
悟空の顔に向けた頭突きが命中し、彼の口に当たったらしくゴツンと歯に当った感触がした。
悟空は、金色の眉を少し寄せて、ペッと血を吐き捨てる。

「いてぇな」
「はぁっ、はぁっ、」
「往生際悪ィ奴。」

大してダメージも受けていないらしい悟空は、片手で、自分の青い腰紐に挟んであった何かの小さな瓶を取り出す。
一瞬何か分からなかったベジータだったが、その瓶が見覚えのあるものだと気づいて背筋が凍りついた。
ラブドラッグだ。
身体を重ねるのは初めてではない。
だいたい、どこから手に入れてくるのか悟空は薬を使ってきたことが何度かある。
いやだ、と小さく呟いても、彼が聴き入れてくれるはずもない。
片手でビンの蓋をもぎ取ると、悟空は一本をまるごと口に含んで、そのまま唇を合わせてきた。
なんとか口を閉じてそれの侵入を阻もうとしても、舌にこじ開けられ、むせかえるほど甘い原液の液体が口の中にとろりと入り込んでくる。
喉に焼きつくほどの甘さに、思わず咳込みそうになると、強引に鼻をつままれた。そのまま上を向かされると、喉が勝手にごくりとその液体を胃に送り込んでしまう。
同時に、彼の喉もごくりと鳴った。

「う、う」
「オレも飲んだからな。おめぇだけじゃねえ。安心しろよ」
「っくぅ…」
「可愛いなぁおめぇ…。」

愛しげに微笑む悟空が、薄い色の瞳でじっと見下ろしている。
ふわりと頭をなでられ、ドキリとして動きを止めると、彼は低い声で呟いた。

「サイヤ人。…オレはサイヤ人。地球人じゃねぇんだ。おめぇと同じ、サイヤ人だ」
「…そうだ、貴様は、最後に残った…純血のサイヤ人だ。」
「オレとおんなじなのは、おめぇだけなんだ。なあ、早くオレに追い付いて来て、オレを倒してくれよ」
「言われなくても、そうす、んんっ、ん」

まだ甘い味の残る唇に唇を塞がれる。
悟空の背後に浮かぶ、満月に近い月に気持ちがざわざわして落ち着かない。
尻尾がないぶん、行きどころのないブルーツ波の影響が毒のように体中を駆け巡っているかのようだ。
口付けが深くなり、ほとんど無意識に夢中で吸いつく。ゆっくりと解放された両腕で、広い背にしがみついた。
いつの間にか布を持ち上げていたベジータの陰茎に手が這い、薬で敏感になったベジータの肌に爪を立てながら、上半身の服を破いていく。
がりっ、と乳首を引っ掻かれて、ベジータが分かりやすくビクンと背を反らせた。
上気してピンク色に色づいた肌を、悟空の大きな固い掌がゆっくりと撫でる。

「あ…ッ」
「クスリ、ちっと量多かったもんな。でぇじょぶか?ベジータ」
「はぁ、は、ッ…ふざけやがっ…て…!」
「気持ちよく、なりてぇだろ…?もっと、もっと」
「あ…!あうぅっ」

悟空は、布の上からベジータの陰茎を優しく優しく擦りながら、ねっとりと首筋を舐める。
そのもどかしい愛撫に、すっかり神経が過敏になったベジータは我慢できずに自ら腰を揺らした。

「うん、そうだ…、もっと欲しがっていいぜ、ベジータ…」
「はぁ、はぁ、んっ、!」
「オレは、今日おめぇが来てくれてうれしいんだ。…な?気持ち良くしてやっから」
「た…っ、頼んでないっ…!」
「身体は素直なんだけどなァ」

悟空はベジータのズボンの中に手を入れて、すでにべとべとの陰茎を少し強めに握って上下に擦る。
にちゃにちゃという恥ずかしい音が自分の股間から聞こえてくることが信じられない。

「んっ!んんっうくうう」

口を押さえて声を出すまいとするベジータに、悟空はすっかり硬く勃起した先端に軽く爪を立てる。瞬間、ベジータは背中をそらして身悶えた。

「ひィッ…!うぁあっん!」
「他人の手だと、気持ちいいだろ?」

手が口元から外れ、ベジータはもう自分で口を押さえることもできず、快楽のままに腰を振る。
悟空は、空いた手でベジータの乳首を摘まんだ。
指先でその周辺を何度も触れてから、爪先で転がすと、掴んでいる陰茎がビクビクと震える。
ゆっくり覆いかぶさって、赤くなっている耳たぶを優しく甘噛みする。

「ひ、ぃっ、うぁ…!」

細い声が聞こえたと思うと、ベジータはそのままイってしまった。薬の影響だろうか、ずいぶんと早い。
まだ脱がせていない布の中で出されたそれを、悟空は器用に手に受け止める。
ぬるりと独特の匂いを放つ粘液を手につけたまま、後ろ側へと滑らせた。
絶え間なく垂れてきていたカウパーですでに濡れている孔に、彼自身が出した精液を塗りつけながら中指をぐちぐちと挿入する。

「ふぅ…ううっ、やめ…っ」

ズボンをまだほとんど脱がせていない。布の中でブラインドで行われている行為に、余計興奮した。
熱く狭い肉壁の中で指先を曲げて、中を探る。
ぐちょぐちゅと粘着質な音をわざと立てながら、こりこりとしたものに押し当てると、イったばかりの体がガクンと反応した。

「あ……ああっあ、あ!」

ベジータは目を見開き、腰を浮かせる。ぽろ、と透明な涙がこぼれた。

「ココか?イイところ」
「うっ、あ、あ、やめ、カカロッ、やあ、あ」
「ココだけでイきそう?」

知らぬ間に、ベジータの陰茎はまた硬度を増していて、とろとろと粘液を溢れさせている。
指を二本に増やし、そこをゴシゴシと強く擦ると一気にわけがわからなくなったのかベジータは口を馬鹿みたいに開けたまま動物のように喘いだ。
乳首を弄っていた手を、そっと背中に滑らせ、尻尾の痕をざわりと撫でると、電流を流されたようにビクンと体がのけぞる。

「や、あぁっ、なんっ、で俺、ばっかっ…!い、イクっ、イ、ああっ」
「おめぇの声、とか、顔、とか、…そんだけで、オレもイっちまいそう…」

びゅるるっ、と飛び出した白い粘液が、ぱたぱたと彼自身の腹の上に落ちる。
涙と涎を垂らしながら、2回目の絶頂を迎え体を時折ぴくんぴくんと痙攣させている。
ベジータの汚れた下着とズボンを、ゆっくりと脱がせた。日に当たったことのないような白い脚を抱え上げ、自分の胴着をくつろげて、ぬるぬるに溶けた孔に先を当てる。

「なぁ、入れっぞ…?ベジータ」
「……ッ」
「力抜けよ…、」
「う…っ!」

ぐちゅ、と悟空の太い陰茎の先端がそこに飲み込まれる。
力の抜けきった肉壁は、意外にも柔軟にそれを包み込む。ベジータは苦痛に顔をゆがめながら、浅い呼吸を繰り返していた。それでも圧迫する肉の壁に、悟空も少し金色の眉を寄せる。

「今日…随分、具合いいな」
「あ、あう…うっ」
「なあベジータ…、」

悟空は、涙と涎でぐちゃぐちゃの顔にキスしながら最後までずぶずぶと挿入する。
体が繋がった感触は、何回やっても凄まじい。
薬の効果か、ベジータの陰茎はゆるゆるとまた勃起しつつあった。

「あいしてる、ベジータ、…」
「…っ、るさいっ……!さっさと動けッ!」
「うん、もういいんか?」
「…ッうああっ!あ、あっあ」

ぱちゅん、と肉がぶつかり合って、ベジータは声を上げる。
中を抉られ突き抜けるような快感に震える体を、無遠慮に突き上げる。

「ッあ、アぅ、んあッ!」
「…っ、は、」
「あ、あつ…っ、はぁっ、あつい、っ、カカ…ぁっ!」
「オレも…、あちぃ……ベジータん中…」

ぎゅうう、とその両腕で縋りついてくる小さな体を、抱き締め返してやる。
腹の間で擦れるベジータの陰茎が粘液でぬるぬると滑り、ぐちゅっ、と奥まで突き刺さる度に息を詰める。

「あっ…うぅ、あぅっ、いっ…いいっ…!」

ぐいぐいと上を狙って腰を打ちつければ、ベジータの体が跳ねた。一気に快楽に従順になった姿はいつ見ても愛しくてしかたがない。

「オレも、いい…ベジータ…っ」
「はあ、カカぁあっ、あ、」
「一緒にイこ、…な?」

そう囁くと、身体の下でベジータは必死にがくがくと頷いた。
汗の浮いた広い額から逆立った髪の毛を優しく撫でる。

「…ッあ、はぁ、うぁあ、いっ、いくぅ…」
「オレも、だ…ッ」
「あっ、あ、んっ、あ…あぁ…!」
「く、ぁっ…、」

律動的に揺さぶり、ぎりぎりまで引き抜いてから最奥まで捩じ込むと、ベジータの中がびくびくと痙攣してきつく収縮した。
熱い液体が腹に飛び散るのを感じながら、悟空もそのまま射精する。
まるですべてこぼさず飲み込もうとしているかのように、ベジータの腰が浮いた。彼の体内に自分の欲を注ぎ込みながら、悟空はゆっくりと息をつく。
三回もほとんど連続でイカされて失神しかけている、涙に濡れた柔らかい頬を両手で挟んで唇を重ねる。
焦点の合わない潤んだ漆黒の瞳には、丸い月が映っていた。
ああ、足りない。
まだ足りない。






end.






ふげー\(^o^)/
これはひどい
10000ヒット記念小説でした。
アンケートの結果、「ツンデレが基本だと思う」、「鬼畜ドSがカカさんの本性だと思う」が同着1位で25票でしたので、鬼畜ドSカカさんとツンデレベジを書いてみました。
で、え?なんで?エロになってんの(^q^)
「エロならなんでもいい」は5票でかなり下の方だったのにww
ドS×ツンデレはどう頑張ってもエロにしかなりませんでした…力不足ですみません…
せっかくアンケートに答えてくださった方々がたくさんいるのに、なんでこんなものしか書けないんだろう
しかし、出来る限り頑張ったつもりです。
へぼへぼサイトですが、これからもどうぞ見捨てずにやってください。
若干フライングですが、10000ヒットありがとうございます!


101011

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