Trust Meよりも少し前の話。GT後、悟空死んだあとちょっと経ったくらい。ベジたんヤンデレ、天→ベジ要素含みます。それでもよろしければ↓







もともと、トランクスを呼びにきたこいつを見て何となく、だった。
最近、また髪の毛を伸ばし始めたらしく、最近はまるで生前の父親と寸分違わぬそれで、もちろんそれは何度目を瞬かせても変わらぬものだった。確かに着ている服は地球人の着る軽装であったが、首から上を見るとやはりまるで自分の知る違う男の生き写しのようで、思わず何度も首を傾げて、随分上から下までじろじろと確認してみる。
なに、どうしたの、おじさん。と奴は少し低めの声で言いながら、楽しそうに小さく口角を上げた。
その表情。
ズキリ、と胸に棘が刺さる。
悟天お前ちょっとこっちに来いと、その腕を掴んだ。
奴より細い腕だ。ああ、トランクスと同じで修業不足なのだろう。

「ちょっとおじさん、離してよ、俺、トランクスと約束してたから来たんだってば、」
「別にトランクスなど待たせておけばいい」
「ええ!?」

別に何ら他意はないのだ、久しぶりに身体が疼いたからだ、ただそれだけだ。
それは、この男のこの姿を見て、そういえば愛しい最後の同族がこの世を去ってからすっかり忘れていたような心躍る戦闘欲に、ベジータはすっかり上機嫌だった。
清潔を閉じ込めたようなカプセルコーポレーションから出て雲ひとつなく晴れ渡る空の下で太陽、まるであの男の代名詞のようなその光を浴びたのは、随分と久しぶりのような気がした。

「お前がどのくらい修業をサボっていたか、見てやる」

野原に出て、自分より背の高くなった悟天の顔を見上げ、ベジータはにやりと口角を上げた。
蟹頭。
見上げる位置にあるその間抜け顔。
ああ、ああ、そうだ、この感じだ。
俺は戦いたい、いくら地球に長く住んだとて、戦闘民族は戦いこそが生きることと同義である。
俺は戦いたいんだ。
なあ、そうだろう、そうなんだろう。
大きな体躯、地球を全力で守ってドラゴンボールとともにその姿を消したお前も、そうなんだろう、なあ?

「ええ、やだよ、俺そんなことより今日はトランクスと一緒にダブルデートするんだから」

同じ顔が、不満そうに歪んだと思うと、まったく冷水を浴びせかけるような台詞が耳に届いた。
ベジータは茫然と、何かの間違いであるのではないかと、男の顔を見上げた。

ああ、ちがう。ちがう、ちがう。
カカロットじゃない。

「平和になったんだから平和を楽しもうよ、ベジータおじさんも」

だからいい加減手を離してよ、と面倒くさそうに溜息を吐いたのは、まるであいつと同じ顔。

いつだって平和を望みながら、戦いたいと願う相反した理想を背負うあいつは。
戦う時に見せる生き生きとした表情、結局戦闘の魅力に取りつかれて離れられない同族の血。
平和の中にあっても心はいつも戦いに向いていた。
あの、純粋な穢れなきサイヤ人の血を持つあいつは。
同じ顔して。
同じような声で、
似たような背格好で

そう、お前と同じなんだ。
なんでお前は。
お前は、どうして。

瞬間、意図せずとも身体全体に怒りの力が爆発する。
一気に金色に変わる瞬間、体中の力を放出し興奮状態になるこのとき、サイヤ人ということをもっとも意識する。

「なっ…、べ…ベジータおじさん?」

悟天は、突然超サイヤ人となったベジータに困惑したように後ずさろうとした。
しかし、白い手袋越しにギリギリと強く掴まれた腕は外れるわけもなく、眼前で凄まじい気を放つベジータをただ見つめるしかない。
ほとんどの時間を平和の中で過ごしてきた悟天にとって、ベジータや父親の考えは到底想像に及ばないものだった。
別に、戦う必要がないなら戦わなくていいじゃないか、平和なときくらい、平和を楽しみたいのだ、目いっぱい。
修業をさぼっているだとか、遊んでばかりいるなとか、ベジータもいつまで固い頑固な頭でいるのだろう、もうそんな時代は終わったのだ。父親である悟空はまだ帰ってくる気配がないのだけれど、神龍に乗ってどこかへ消えた彼がいなくなってから地球はずっと平和だった。
しかし、悟天は知っていた。
自分が父親に瓜二つであること。
瓜二つだから、ずっと違う髪型をしていたのだけれど、最近少し、初心に帰って元に戻してみようか、なんて。
本当は、ベジータが悟空の面影を自分に重ねているなんてことは知っている。
見るたびに、何か懐かしそうに、もの言いたげに。
興味なさそうな目しか向けられたことのなかった自分が、あの頑固なベジータにそんな目を向けられたのは初めてだった。
面白くてたまらない、ああ、それだからわざわざトランクスを迎えに来たりなんかして、そうしたら今日はこんな風に。
いつも、父親はベジータにこんな風に見られていた。
いつもこんな風に、あの心を開かないベジータが。

「……………」

ねえ、ずるいよ、お父さん。
この人の全部は、お父さんだけのためにあるだなんて、ねえ。

「お前が半分サイヤ人の血をひいているだと?」

腕が折れそうなほど、握りしめる手は溢れかえる気で熱く燃えるようだった。

「……」
「おまえなんかが、あのカカロットの息子でカカロットと間違うような顔して似たような声出して、それでそんなこと、」
「…ベジータ」

悟天はゆっくりと微笑みながら、悟空の声色を真似る。
少し低めの、田舎訛りのある、どこか温かみのある、それなのに逞しく力強い。

ベジータはその瞬間、その眼を見開いて、悟天を見上げた。
頭の中で重なる影、少し細いはずの悟天の体格も、ぼやけて見えなくなる、そこに、そこに笑っている姿はまるで、
まるで彼がいるかのように、

「うそだ、うそだ、死んでしまえお前なんて、」
「そんなこと言うなよ、なあ、オラはここに居んだろ?」

腕が、違うと分かっているのに、あたたかい腕が背中に回った。思わず掴んでいた相手の腕を離すと、火傷のような痣がついていたけれど、目の前の男は気にする様子もみせず、そのまま胸元に抱き寄せられる。
少し高めの体温。
何を期待している、何がしたいんだ、だけど、それでも。
ぽろぽろ、やりきれぬ激情が透明な涙となって頬を濡らす。


居ない、って分かってる
こいつは違うんだって、カカロットじゃないんだって、分かってるのに。
それなのに。

ああ、心臓が突き刺されるように痛い

痛いんだ、苦しいんだ。
お前がいなくなったら、
俺は、宇宙で最後のサイヤ人の俺は、一人なんだ。

俺の居場所はお前の隣、それだけだったのに。
そのお前が死んだら、
俺はどこに居たらいいのか、わからないんだ。

「大好きだベジータ」

偽物の愛を囁く偽者のカカロットを、殺せばよかったんだろうか、
でももうそれさえ出来なかったんだ。

胸がいたくて、
心臓がいたくて、

俺は、堪えられなかった。




(ただ、お前に会いたい)











END.


心臓が痛いのは、精神的なものだけじゃなく、実際に病気ですベジたん。
Trust Meに若干つながったりしてw
心臓病です。病院行きなさい!

今日、電車の中で、譲り合いの精神を持たない人たちが無言のバトルを繰り広げているのを見て
「ああ、何でみんな譲り合えないんだろう。」と思った
それで、これがきっとベジたんだったら、
「カカロットの奴とは違うんだ」と思うだろうなと←いきなりぶっ飛んだ
そんで、違うんだ、って思う対象はやっぱり似てる人がいいよね
悟飯はよく見かけるんだけど、私の大好きなサイトさん(閉鎖(移転?)しちゃってもう見れない)が天ベジやってて、そのおかげで天ベジいいなーと思ってたので、ここは悟飯ではなく迷わず悟天。天ベジやっちまったテヘ☆
すごく萌えた個人的には。天ベジの方が飯ベジより好きだったりして。
あと、
最後のカラフルなやつをやりたかった。
どっかのサイトさんでも見かけたことあったんだけど、先ほどそのテンプレが出てて、これ使いたい!みたいな。
はい、何か完全なる自己満足でした。すみません。

100909