egotistical prince


腹が減った何か食わせろ、カカロット。
眠いから少し黙ってろ、カカロット。
喉が乾いた、カカロット。

ワガママな王子様は、なんだかんだと要求してくる。

「貴様のせいで腰が痛い、マッサージしろ、カカロット。ただし、変な気起こすなよ?この期に及んでまだやりやがったら殺してやる。」

ありがたーい今日のご命令は腰のマッサージであった。

「へいへい…」

断るほどの労働ではないので、悟空は草の上に寝そべるベジータの上におとなしく跨がると、その細い腰に指を当ててそっと力を入れる。
普通の人間ならバキバキに骨が折れている程度の力であったが、サイヤ人であるベジータの頑強な腰を解すにはその程度の力が丁度良いらしいと数回行ったマッサージで悟空は学んでいた。
最初の頃は、ヘタクソ弱すぎるだの、全然気持ち良くないぞ無能だの、痛い強すぎる俺の腰を折る気かくそったれだの、散々に口汚く罵られていたものだが、今は両腕につんつん頭を乗せておとなしく目を閉じているようだ。

(オラ、上手くなったんかな!)

ちょっと得意になりながら、それにしてもベジータは何で自分にばかりこんなことを命令してくるのかなと思う。

(やっぱ、カキュウセンシっちゅうヤツだからかなぁ…)

ベジータ星の記憶は全くないし、父親のことだって覚えちゃいないが、どうやら自分は「下級戦士」というランクであったらしいのは聞いた。
しかし、それならばなぜ王子様のベジータが下級戦士にこんなに構うのか。
最近、なし崩し的にいつの間にか一緒にいることが多いのだ。それがどうしてなのか、悟空自身理解していなかった。一番実力が拮抗しているベジータと修行をするのはお互いに楽しい。だが、そのあと気が昂ったままセックスに雪崩れ込んだりするのが一番謎で、どうもよく分からない。
戦っていると、途中で二人とも超サイヤ人になって夢中になって拳を交えることが多く、だいたいそんなときはベジータを殴るたびに、そして相手から反撃を食らう度に興奮が高まる。傷だらけになりながら、まっすぐに向かってくるベジータを今すぐ抱き締めて押し倒したいような、もっとぎりぎりまで戦っていたいような、殺してしまいたいような、キスしたいような、もういろんな欲が混ざりあって訳が分からなくなって、…どうやらベジータも同じらしくそのまま二人でやってしまう。
なんでそこでセックスになってしまうのか、やはり悟空にはよく分からない。もともと、他人を大切にする気持ちはあっても胸を焦がすような恋を知らない悟空にとっては、ベジータのことは「仲間でありライバル」と認識していたとしてもそれ以上の感情は未知の領域であった。普通はライバル、しかも男同士で体を重ねたりはしないのだが、悟空の基準は一般地球人のそれとは大きくかけ離れている。ベジータも基本的に宇宙人であるため、好きだの嫌いだのという感情にあまり敏感な方ではなかった。サイヤ人同士だからこそ、言葉にならないこの同じ気持ちを共有していればこそ、何が何やら分からないけれどなんだか二人でいるとお互いにお互いのことが受け入れられて心地好い。

悟空は、ぐいぐいと腰を揉む。ボコッと少し地面が凹んだような気がして、慌てて少し力を緩める。…うん、なんだかやっぱり、こういう作業はあんまり向いていないと思う。

確かにときどきベジータは素直じゃないし(ときどきなどというレベルではないが)、何で気にするのか分からないところを気にしたりしているのは見かけるが、戦闘欲にまつわる感情は同じだった。
それに、セックスになるとベジータはやたらと色っぽい、ような気がする。
ぎゅっとしがみつく手は自分より小さいし、耳まで真っ赤になって目が潤んでたりして、全身でキモチイイって叫んでる。
『あ、…んッ…!カカぁ…』
『ベジータぁ……きもちい、か?』
『…ッそ、んなこと、訊くなバカ、…はぁ、んっ!』
そんなこと言いながら、ぐいっと腰を回すように突いてやるとイイところを掠ったのかビクンと腰を跳ねさせて、その小さい口から嬌声を漏らす。普段じゃ考えられない近さと、その表情と声。

(…やっべ。)

思い出してたらそれだけで勃っちまいそうだ。

「フン、まあ、悪くないな。…って、貴様…なにをニヤニヤしていやがる?」

そのとき、気むずかしい王子様が珍しく小さく微笑んで振り返ったのだったが、直後には眉間に皺が寄っていた。
ああ、レアな反応だったのに勿体無い。

「あはは……そか?」
「またろくでもねぇこと考えてやがったな?」
「い、いや……さっきのベジータ、可愛かったなァ…って……」
「………!!」

突如茹で蛸のように真っ赤に湯気が立ったベジータは、バカ死ねうるさいどけもういい!と一気に悪態を連ねたのだが、悟空はそのまま背後から被さるように抱き締めてしまう。

「もうやらんぞ…っ、クソ絶倫野郎!」
「なあベジータ。」

必死に拘束から抜け出そうとする小柄な身体をぎゅっと力を込めて抱き寄せ、肩に顎を乗せて名を呼ぶとベジータの耳が赤くなる。

「オラ、こういう、まっさーじとか、そういうん苦手だ。おめぇとは戦ってるときが一番好きだ。」

下級戦士だから命令されるのかもしれないけれど。
この人は王子だから人に命令することに慣れているだけかもしれないけれど。

なんだか、やっぱり、今の関係って、王子と下級戦士っていうものじゃない気がする。

すると、ベジータがフンと鼻で笑った。

「俺だって貴様に下手くそな奉仕されるより、戦ってるほうが何百倍もいい。当然だがな。」

そうか、そうだよな。
だって、言葉にしなくたって気持ちを同じくするのだから、当たり前だ。

「「サイヤ人だからな。」」


互いの本能を互いが理解している。
ああ、これが同族。
残されたたった二人の戦闘民族サイヤ人。
きっと最後まで隣にいられるのは、――こいつだけだ。



end.




はい、何だか書いてたらぐっちゃぐちゃになって若干意味不明気味\(^o^)/
とりあえず、恥ずかしながら補足的に書いておくと、
言葉なしでも分かりあえる同族で、二人とも地球でいう恋をしているのだという自覚はない!
でも二人とも同じ気持ちで、二人とももやもやとしか理解できないからお互いにちょうどいいと。そんな感じ。



100812


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