酒と肴に酔い痴れて
今宵始まる二人の密約
交錯する視線は肩越しに見える月に流して
絡まり合う舌と互いの熱を感じるばかり

歪み霞む朧月
馬鹿な俺を嘲えばいい








青白い光に曝け出した身体は上気して、薄く笑うオマエは何処の女にも見劣りしねぇくらいの別品。

これが逆の立場だったなら万更でもなかったかもしれない。


「‥ん…ぅ…っ。」


洩らす声は低く甘く。
見上げてみれば伏し目がちな瞳は潤み視線は何処か曖昧におよいで。

既に堅くなった自身に軽く口付けて濡らすように舐め上げ、ぴちゃりと音を立てて刺激すれば息をついて笑う。


「なかなか巧いじゃん。経験あんの?」


「…言う必要はねぇな。」

「そりゃそうだ。」


くくっと喉を鳴らしてあっさり肯定。

興味がねぇなら始めから聞かなきゃいいじゃねぇか。

実際初めての行為で巧いも下手もよく分からねぇし。

だって普通女相手の経験はあっても男なんてするのもされるのも無いのが当たり前なんじゃねぇの?

用は自分で抜く時に良いところを舐めたり扱いたりすりゃあいいんだろ…。


試行錯誤の末の奉仕活動

先を銜え込んで唇で締め付けながら舌で先端を突いてみたりする。

トロトロ溢れてくる精液が苦くて不味くて思わず眉間に皺がはいってしまう。


「…ん‥ぅ‥」


口に納まらない部分は手で扱いてまわりをやんわり揉みしだいて。


「っ…」


短く息を吐いて感じてるのが分かって少し安堵した。


そのまま口をずらして下から上へ顔を上下させながら更に深く銜え込めば

口端から納まり切らない苦い液がこぼれて喉を伝う感覚に身震いした。


「ん…むぁ‥」


舌を動かしながらこの後どうすっかなぁなんて考えてたら後頭部の髪を思いっきり掴んで仰向けに転がされた。


「いてぇっ!」


ハゲるんじゃねえかっつう勢いに思わず不満の声を上げれば冷めた瞳と一瞬だけ視線が絡んで


「俺ばっかってのも悪いしアンタも良くしてやるよ。」


なんて吐き捨てられた。
ゾクリとした感覚に軽く背中が震えて心臓は早鐘を打ち鳴らす。




「っぅ…あ‥。」


そのまま覆い被されて肌が唇が重なる。舌で歯を割ってくるソレの侵入を許せば歯列を舐めて舌を絡めてと好きに中を犯される。


「っ…ん‥」


脳から痺れるような眩暈に襲われて何時の間にか下肢へ伸びていた手に軽く握りこまれた。


「ひぁっ…」


「すげ‥舐めてるだけで感じちゃったっての?」


上ずった声が喉から漏れれば案の定卑しめる言葉。


「トロトロ零しちゃってだらしないねぇ…」


曝された俺自身は既に先端から先走りを溢れさせて簡単にイッちまいそうなほど膨れ上がっていて。


「一回出してやろうか?」

「っ…‥」


「…黙りっての?」


耳を軽く噛んで前髪を梳いて額に口付けられて。
エロい低音で囁きながら不埒に動く手はそのまま俺を追い詰める。


「…甘寧‥。」


「っぁ‥ぅん…。」


上から下へ段々と舌が這って時折キツク跡を残される甘い痺れがもどかしくて
この先に続く強い快楽が欲しくてたまらない。

既に解放を願う自身からは凌統の手は離れて放置状態。さっき素直に言わなかったから。


「…意地張んなっつの」


「…‥…」


意地なんかじゃなくて
交わす言葉なんて
無くていいと思うだけ
言えない
言いたくない
オマエを欲しがる言葉なんて一つも口に出したくないオマエに知ってほしい俺なんて此処には居ない


髪を降ろした姿を見せるのがオマエだけって事も。

罪の意識からなんかじゃなくオマエに抱かれて悦びを感じる浅ましい身体も。

オマエが触れるたびこんな事を考える女々しくて弱い俺の事なんて知らなくていい。


「甘寧‥。」


呼び掛ける甘い声は俺を求めろと促すけれど、これは俺なりの抵抗だから。


「欲しがれよ…。」


流れ続ける生理的な涙はそのままに首を横に振る。


「俺を欲しがれよ、甘寧」

触れられる部分ばかりに意識を持っていかれて甘い響きも要求も判らなくなりそうだけど。


「い、やだ…ん…ぁっ…。」

求めたが最後
溢れて溺れて
俺だけが捉われる
俺だけが堕ちて行く。


オマエはソレが目的なんだろう?

だから
言わない、言えない
堕ちた先にきっとオメェは居ねぇから。


「あっそ…。」


「ん、っぁ‥っ。」


甘い声は諦めたかのように呟いて内腿にまで降りてきたまた舌を這わす。


そのまま自身には触れずにおもむろに後ろまで舐められた。


「う…ぁ‥っ…。」


入り口を舐め回されてすっかりぐしょぐしょに濡れれば中に指突っ込まれて次第に絶頂が高まってきて。


「ん…やっ…。」


「逃がさないっつの。」


たまらず身を捩れば逃すまいと抱え込まれた。


ぴちゃぴちゃと舌と指で掻き回されて自分でも判るほどにひくひく凝縮しながらオメェを締め付ける始末。


「身体は素直に欲しがってんのにね。」


「っあっっ!や、…喋んじゃねぇ‥っ。」


かかる息すら今の俺には強い刺激。


「降参?」


「…絶対、しねぇっ…。」


「可愛くないねっと‥。」


ニヤリ人の股の間から見上げて笑うオメェの憎らしさと言ったら今まで出会った誰よりも最上級。


「ん…ん‥っ。」


ぐちゅぐちゅ音を立てながら激しく指を出し入れされて、そのくせ前立腺には一際触れない。

イきたくても決定的な刺激が無くて新手の拷問か嫌がらせに感じた。


「んあぅっ!」


ほっとかれてた前をいきなり掴まれ扱かれて、打って変わってイイトコばっか擦られて悲鳴を上げれば指を引き抜かれ

その後間髪入れずに凌統自身があてがわれて一気に押挿いってきた。


「あっ‥ぁぁっ…ん」


抉じ開けられた腹ン中はオメェで一杯に満たされて。圧迫感に自然と息が荒くなって顔が歪むのが自分でも判る。


「なぁ甘寧、俺を欲しがれよ。」


始まらない律動に受け入れたソコも俺の身体も痙攣したみたいに震えあがって。それを気にも止めずに、また前髪を梳きながらひどくやさしい仕草と声色で囁きかける。


「いやっだって‥言ってんだろ…!」


堕とされてなるものか
溺れ沈んでなるものか
持っていかれそうな意識に足掻きとばかりに背中に爪を立てれば揺れる身体。





「ひっ‥あ…ぁあっ!」


急激に開始された律動。上がる音は気持ち悪い自分の甲高い甘声と卑猥な水音。そのまま片足を肩に担ぎ上げられて更に奥まで挿れられた。


「あっ…やめ…深ぃっ!」

「はっ…止めろって言うわりには美味そうに銜え込んでるけど?‥いい加減素直になっちまいなよ‥」


嫌っていうくらい前立腺を擦られてとてつもない快感に頭ん中は真っ白。

それでも首を横に振って睨み付ければひどく顔を歪めたオメェが涙で霞む視界に映った気がして。確かめようとしたけれど派手な突き上げに抗えるはずなく。


「っあ…ぁ…んぁっ」


ただ与えられる熱に喘ぐだけの物に成り下がる。高く腰を上げられて上から突き刺すみたいに何度も貫かれて、容赦なく快感を与えられればもう我慢なんて出来ない。


「っ…凌、統…んぅ…」


イキたいって続くはずだった言葉は形良い唇に呑み込まれて。


「ふぁっ…ぁあっっ!」


声も息も脳も触れる箇所のどこもかしこも熱く痺れて性急に貪る唇に射精を促され呆気なく身体は陥落。


射精後の倦怠感にだらり身体を投げ出せばドクリと中に注がれる熱。そのまま上に覆い被さってくる細い身体。


「…は、ぁっ‥」


荒い息も感じた熱も冷めるまでは俺だけの物。
刹那的な独占欲はこの瞬間にだけ満たされる。


「甘寧…?」


手放す意識の淵に聞こえたのは俺の名前。あぁ、上等じゃねぇか。オメェは浮かぶ月に毒されて犯した過ちだと言い訳して欲望の赴くままに俺を堕としに来れば良い。俺はその度抗って否定し続けるから。


月が霞み歪む今宵に
甘い仕草に酔わされて
始まり狂うは二人の密約
犯され浮かされ
思いは違えど
求めるのは互いだけ


見下し暴け朧月
愚かな俺達を嘲えばいい



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