「俺、そしてお前。何か問題でも?」

そう言って目の前の男はニヤリと笑った。

「問題って…」

そんなん有りまくりに決まってんだろと声を大にして罵ってやりたいが後が恐いのでぐっと飲み込んだ。

とりあえず現状を思い出しつつ物事を把握しようと周りを見てみる。

まず第一に家の中で休みを満喫してた俺が何処ぞの旅館内の卓球場に居るのだろうか。

「オイ、何ぼさっとしてやがる!やる気あんのか!?」

「この分だと楽勝のようだぞ恋次!」


第二にこの旅館の浴衣と思われる物を身に纏い、ラケット片手に気合い十分な二人組。

…なんなんだよお前等。

「ハッ…馬鹿言うなよ。初心者なお前等が俺様達に勝てると思うなよ?」

…第三に俺を個々迄拉致ってきた張本人が何処からくるのか凄い自信を振りまいて浴衣の袖を捲り上げ肩を露にしている。

どこまで袖無しに拘るんだろうか。

いや、今はそんなこと考えてる場合じゃあない。

「なぁ、俺様達って誰」


俺の中でまさか俺?いやいやまさかねーそんな訳無いよねーと思っていた疑問を投げ掛けてみたら冒頭の台詞を返されたって訳だ。


「ありぇねぇ…」

死神って暇なんか?
アンタ等かりにも席官じゃん?つーか、副隊長じゃなかったっけ??

「行くぞ一護!!」

「くらいやがれ!恋次スペシャル!!」

そんな俺の葛藤なんてお構いなしにいつのまにか館内に響き渡る二人の声。カコーンとキレのいい音と共にとんでくる球体…

「甘いぜ恋次!!」

鮮やかな身のこなしでそれを打ち返す隣の卑猥入れ墨男。

「なんのっ!」

カコン

「やるなっ!!」

カコン

無駄に気合いの入った掛け声と共に狭いコートを行き来するオレンジ色の球体。

「一護!くらうがいい!!」

ぐぁっと物凄い勢いのルキアのスマッシュが俺を目指して飛ぶ。

打った向こうにニヤリと笑うルキアと恋次。それを見た瞬間に俺は自分の血管の切れる音を聞いた気がした。

「…やってられるか!!」

「うぉあっ!!?」

「おぉっ!」

俺の叫びと共に繰り出したスマッシュは見事恋次達のコートに炸裂。同時に聞こえた二つの叫び。

「やったな一護!」

「やりやがったな!」

二人してやったやったと

「うるせぇんだよ!この馬鹿!!」

「「なんだと!?誰がバカだ!!」」

「お、おぃ、貴様等」

「止めてくれるなルキア!」

「これは男の戦いだ!」

「アホかー!!!」

ガッシャーンっとひっくり返る卓球台。飛び回るボールにラケット。見る見るうちにヒドイ有様となった卓球場に俺等が修学旅行並みに正座させられたのはこの少し後のこと。

ちなみに騒ぎだした俺たちとルキアが逃げ去るのはほぼ同時だったとか。




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