アンタが居ない
それだけなのに
容易く壊れた俺の日常


オッサンの仇討ちだとテメェの病おして出陣した挙げ句、自分が矢に射られて死んじまうなんてとんだお笑い草だ。


アンタの事だ。
どうせ病で死ぬんなら、
派手に戦で逝こうと思ったんだろ?


少しでも国のため
先に散っていった仲間のために最期まで尽くしたんだろう?


意外に一途で
思った通り馬鹿だよな。








「よぉ、甘寧さん…今日も朝から暑苦しいねぇ」

「あぁ?!毎朝うっせぇんだよ、オマエはよ!」


通い馴れた修練場。アンタに悪態吐いて始める朝の鍛練も。


「見ぃつけた。‥いつも同じ木の上で寝てるよなアンタ。」


「ぁ?だってこれがここら辺の木の中じゃ一番でかいからな」


「ふーん…ってかさ、寝てばっかり居ないでたまには脳みそ動かせよ」


「余計なお世話だ」


「まぁ、そう言いなさんな。殿から良い酒貰ったぜ?」


「…しゃあねぇ、付き合ってやるよ‥」


「はっ、現金な奴」


「良いから行くぜっ!」


お気に入りの木の上で昼寝するアンタの邪魔をして、酒を餌に無理矢理碁に誘って。夜は二人で酒飲んで抱き合って。


良くも悪くも毎日毎日
馬鹿みたいに一緒に居た。


どれもこれもが鮮明なのにアンタはもう居ないんだ。



アンタが居ない
それだけなのに
容易く壊れた俺の日常




アンタの言葉は
もう聴けない

アンタの笑顔は
もう見れない

アンタの腕に
抱き締めて貰いたい

どれこれもが違和感で
蛇みてぇに絡み付いて
苦しくて悲しくて
それでも、それでも
アンタは帰ってこない


なら、俺はジジイになるまでこの違和感と共に生きるから

それがアンタが俺と居たっつう証みてぇなモノならば全部全部
受けとめるから
忘れねぇから
アンタは上から俺の姿を
指を銜えて見てりゃいいさ


そしていつか俺が逝った時ジジイになったと笑いながらまた二人で一緒に居よう


名前を呼んで
微笑みながら
キツクキツク抱き締めて
飽きるまで二人一緒に




だからそれまで待ってろよ。
俺はアンタの分まで精一杯生きて死ぬから。




だからそれまで…




「精々首を長くして待ってろっつの」





呟いた言葉は遠く遥か。
澄み渡った空の彼方に。







アンタの元まで届いたと信じて…。





死ネタにしてはちょっと甘めな感じ…?たまにはこんなのも有りですかね‥

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