戦に出るたびに鳴り響く不調和な旋律


何度も繰り返される惨劇


目蓋に焼き付いて離れない光景




目を閉じても耳を塞いでも貴方は繰り返し殺される



赤い飛沫で渇いた大地を彩って、物言わぬ亡骸になった貴方は無念の表情を浮かべてた




「…ぅあっっ!!」


自分の叫びとともに飛び起きれば全身汗でぐっしょり濡れて、呼吸も荒く心臓は早鐘を打ち鳴らしている。


「…はぁ‥」


戦の後の夜はいつもこうだ繰り返し父上を失った日の夢を見る。


「最ッ悪…」


父上を殺したアイツを死ぬ程憎んで殺してやろうと思った。

憎む事で痛みを誤魔化して認められない自分を欺いてた。


けれども
けれども
時が過ぎる内に憎しみは形を変えて、変わりに言い様の無い感情が渦巻いていった。


何時だかアンタが言った詞

『敵は殺す。味方は守る』

アンタらしい単純明快な考え方。

嫌いじゃない。
嫌いじゃないよ。
アンタの考え方も真直ぐな所も。


敵は殺す。
そんなの当たり前だし。
俺がアンタと同じ状況だったら間違いなく、躊躇いなく殺してる。

罪悪感なんて微塵も持たず息をするほど自然な行為。

殺す事が乱世の生業。
殺す事が国のため。
殺す事が主君のため。
殺す事が名誉あり
生きるために必要なこと。


「乱世に慣れてない」


自分でもよく言ったもんだ


なんて詭弁
なんて偽善
俺だって同じ穴のムジナ
割り切れないのは俺が弱いから。



「おい、凌統!」


どんどんと乱暴に扉を叩く音と自分を呼ぶ声に思考に沈んでいた脳は不意に現実に引き戻された。


「…こんな夜更けにうるせっつの。開いてるから勝手に入ってこいよ」


口から出るのはいつもの悪態。体を起こして扉を開けに行くのも面倒臭くて声だけで促した。


「邪魔するぜ」


言えば遠慮も無しにずかずかと中に入ってくる。

腰には鈴の変わりに酒。
顔や肌は上気していかにも酔ってますを全身で表していて。


…つい最近まで俺に命を狙われてたっつう自覚なんて皆無なんだろうか。なんてどうでも良い事が浮かんできた。


「で?何のよう?」


酔っ払いの相手なんてしてられるかと早々話を切り出した。


震えてる手と汗に濡れた身体を気付かれたくないし、あわよくばサッサと追い返して再び床に就こうと未だ身体は寝台の上。


「分かんねぇか?」


口端を釣り上げて聞かれても癪に触るだけで検討もつかない。

怪訝な顔して見上げれば、クッと喉を鳴らして「馬鹿だな」と笑われた。


馬鹿に馬鹿にされる筋合いなんて毛頭なく「馬鹿はアンタだろ」と罵ってやろうとしたけど叶わなかった。


いつのまにか目の前に迫ってきてた手に阻まれた。


「夜中に煩くしちゃ不味いんだろ?」


「ん…んーっ!」


文句を言いたくても口は塞がれたままでモゴモゴするばかり。

自分の手で引き剥がそうとしたら口を覆うのとは逆の手に伸ばした手を取られ寝台に縫い付けられた。


「何すんだっつの!」


口を解放されてうまく息を吸え無いながらもなんとか文句を言えばゾロリと首筋を舐め上げられて。


「なっ!?」


「まだ分かんねぇのか?男が夜中に部屋にくるなんて犯りに来たに決まってんだろ?」


……?

「…はぁ?」

裏返る声。
本気で訳が分からない。


何だソレ。
どういう事だっつの。
アンタが、俺を?
何で、どうして?
ありえないっての。


思考を駆け巡るのは否定と疑問。そんなんばっか。


目の前には薄く笑みを浮かべた憎たらしい顔。


「…酔ってんだろ?冗談なら他当たれっての…」


まとまらない頭で漸く叩きだした結論。


コイツは今明らかに酔ってるし、マトモに頭が働いてねぇんだ。


むしろそうじゃなきゃダメだ。


「はっ…酔ってなんかいねぇよ。言ってんだろ?俺はおめぇの事を抱きにきたんだ。知ってんだぜ?オマエ戦に出た後は必ずうなされてんだろ」


「なっ…!?」


何で知ってる?

アンタにだけは知られたくなかったのに。

弱いところなんて見せたくなかったのに。

目だけ見開いて、開けた口からは巧く言葉も出てこない。


「何で知ってるって面してんな。隣の部屋とか同じ陣営に居たりすれば嫌でも分かんだよ」


「…嘘だ…」


「嘘じゃねぇよ。見てりゃ分かんだよ、テメェの事なんか。俺の所為なんだろ?うなされんのも震えてんのも泣けねぇのも。責任取ってやるって言ってんだ。素直に抱かれちまいな」


思考が追い付かねぇ。
なんでとかどうしてとかそんなんばかりが浮かんできて。口から出たのもそれだけだった。


「何、言って…」


「ぐだぐだ言ってんじゃねぇよ」


言われて再び首筋を舐められた。



流されちゃイケない。
拒否しなければ。
離れなければ。
縋っちゃイケない。
甘えちゃイケない。
この渦巻く感情を認めちゃイケない!!


頭でいくら否定しても体がぴくりとも動かない。


「っあ…い、やだ…んぅっ…!」


「もう黙れ…」


かろうじて動いた唇は吐き捨てられた言葉と同時に薄い唇に塞がれた。


上顎から歯の裏まで舌をはわせられて簡単に捕えられて絡まり合う。


「ぅ…っふぁ…」


出したくないのに声は漏れ情けなさを引き立たせる。

唇を解放されて伝う液はそのままにごつい指先は下へ下りてきて。


胸元を開いて指を這わせられる。爪先で頂きを詰むように引っ掛かれて吸い上げられれば赤い跡が咲いた。


「ぁ…っ‥んぁ…」


思考はやけにクリアなのに身体は相変わらず動かない
ただ降ってくるむず痒い甘い痺れに震えるばかり。




舌先で転がすように舐められて痺れは腰から下へ集中してきて。


「気もちぃかよ?」


意地の悪い問い掛けに素直に頷ける訳もなく目を伏せて首を振る。


「嫌でもその内欲しくなるぜ」


「ひぁっ!」


胸から腰を撫でてスルリと腰紐を解かれそのまま一気に脱がされた。熱をもった下肢が空気に曝されてビクリと震える。


スルリと絡み付いてくる手はくちゅくちゅと音を立てて扱きあげ始めて。


「っはぁ…」


荒くなる呼吸と声が止まらなくなる。


ゆるゆる扱かれて先を舌で突かればとめどなく溢れてくる半透明の液体。


「ふ、ぁっ…」


「人にしてもらったことねぇのか?」


「やっ…あるわけ‥無いっつの…ん、も‥離せッ!」

「馬鹿。これからが本番だろ」


「ひぁぁっ!」


パクリと口内に迎えられて裏筋を辿って先端を刺激される。やんわり周りを揉みしだかれればもう思考なんてメチャクチャ。


「ぁっ…あん…」


ただ触れる手が熱いぐらいのアンタの愛撫が狂うほどに気もちイイ。


いつの間にか押さえることを忘れた声は女みたいな喘ぎだけを響かせる。


「イイ声。でも、まだイかせねぇよ」


甘寧が頭に巻いてるバンダナを外したかと思ったらソレで自身を戒められた。


「やっ!何すんだ!」


抵抗を試みるも力の入らないソレはあっさり躱されてしまう。


視界から姿が消えたかと思えば今度は下肢に違和感。

「ひっ!」


ぴちゃりと何かが這う感覚舌だと認識する頃には既に中に差し込まれた後で


「あ…そこ…やだぁっ!」

裏から抱え込まれた態勢では逃げられる訳もなく舌で好きに嬲られる。


「大分解れてきたぜ?」


ズプリ

嫌な音と同時に差し込まれたのは舌とは比べものにならない質量。


グチュグチュと遠慮なく内壁を開かれて抜き差しをされれば簡単に込み上げてくる射精感。


「ひぁっあ…もぅっ…」


イキタイ。
けどイケない。


「もう何だよ?」


言えない。
認めたくない。
アンタに感じた挙げ句
アンタが欲しいなんて。



「あっ…や、」


「何が嫌なんだよ。ここは随分素直だぜ?」


ぐりっと中を掻き混ぜられて更に指が増える。


「ひぁっ…やっあぁあ…」

「スゲェぞ?熱くて、二本なんかじゃ足んねぇのかぎゅうぎゅう銜え込んで離しやしねぇ…」


囁かれる卑猥な言葉は脳を掠めてアンタの低い声が鼓膜を揺さ振る。


「こんなにグチョグチョに溢れさしちゃって…そんなにいぃか?」


「やっ…言ぅなぁっ!」


恥ずかしくて恥ずかしくて顔から火が出そうってこういう事なんだ。


「なぁ、公積。言えよ。どうして欲しい?俺が欲しいか?」


「っ…」


「…それとも俺がまだ憎いか?」


そんな聞き方は卑怯だ。

蓋をした渦巻く感情は決して口には出してはいけない事なのに。


「我慢してんじゃねぇよ。分かってんだろテメェも。捕われてんじゃねぇ、凌操の息子としてじゃなくて凌公積…おめぇに聞いてんだよ」


分かってるよ。
苦痛と痛みを植え付けたのはアンタだけど誰も悪くない。悪いとすれば時代とこだわりを捨てきれない己。

付け狙う内に魅かれたてた

人柄・強さ・言い尽くせないアンタの全部。全部に。


父上を思えば不実としか言い様が無くて、無念のうちに死んでいった事を思えば申し訳なくて…


沸き起こった感情に蓋をして見てみないふりをした。


「…公積?」


痺れを切らしたかのように問い掛けてくるアンタの顔は戦の時のように真剣で思わず目を背けたくなる衝動に駆られる。

「言えよ」

その瞳に捉われて促されて口を突いた言葉はただ一つ。


「……っ好きだ…アンタが、好きだ‥っ…」


溢れだした感情。
せき止めていた涙。
噎びを切ったように零れて止まらない。


「…責任取ってくれんだろ…?」


見つめてきてた視線に目を合わせて精一杯な言葉。


「‥上等…」


お気に召したのか口端上げて笑いかけられた。



「ん…」


半端に止められてた内壁への刺激を再開されて鼻から抜ける自分でも嫌になる甘い声。


「んぁっ…あっも…」


「あぁ、イかせてやるよ…」


ズブズブと中を押し広げながら挿いってくる感覚は物凄い圧迫感でひどく苦しい。思わず締め付けたらしく甘寧は小さく呻く。


「っ…力抜けよ…」


「む、りぃっ…んぁっ」


縛られっぱなしの自身を握り込まれて数回扱かれて唇を塞がれた。


絡まり合う熱い舌が気持ち良くて意識を持ってかれてる間に最奥まで侵入してきた昂ぶり。


「ひぁぁあっ!」


呼吸が整ったところを見計らったみたいに揺さ振りかけてくる。


「あっ…もっ…イきた…放し…放してぇっ…」


内壁を擦り上げる感覚がリアルに感じれば感じるほどあまりの快楽に気が狂いそうになって解放を願うばかり。


ギシギシ軋む寝台の音と卑猥な水音。荒らぶる息に感じる体温…何もかもが頭に入ってこなくてただ気持ち良さだけが巡って。


「いいぜ、イッちまえ」


耳たぶを噛まれてスルリと戒めを解かれて、同時に前立腺を擦るように奥まで突かれた。


「‥うっ…あ…っあぁあー…!」


どくん


脈打つと自分でもヤバいと思うほどの量がお互いの腹に吐き出された。


「っはぁ…」


「まだ、終わんねぇぜ?俺がイッてない…」


繋がったまままたぐちゅぐちゅと激しく奥まで突き立てられれば簡単に精を放ったばかりの自身は熱を取り戻して。


「あっあぁん!んぁっ…」

甘寧を締め付けるようにヒクツクのが自分でも分かった。


「…イくぜ?」


「っひ…ぁっ‥うぁ…興覇ぁ…!!」


「‥公積っ…」


ドクリと脈打つ熱。
流れ込んでくる白い飛沫。

閉じた目蓋に焼き付いたのは薄く微笑んだアンタの顔

塞いでた耳を震わせたのは甘く囁かれた俺の字









奪われて与えられて
何時だってあの時から踊らされてるのは俺ばかり。






遠退く意識の中で感じたのはアンタの温もり。






月明りの綺麗な
深夜の出来事。


痛みと記憶は
塗り替えられて。

次の戦からは
夢にみるのはアンタの姿…






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