「っ…ぁ…」
口から漏れるのは自分の物とは思えない高い声。ゾクゾクと背筋を這い上がる感覚は妙に冷えた頭に警鐘を打ち鳴らす。
「逃げへんの?」
人を押し倒しておいてさも抵抗が無ければつまらないとでも言うように顔を覗き込んでくる。
「嫌なら嫌って言ってえぇんよ?」
柔らかな口調とは裏腹に着物を割ってくる指先は止まらない。膨らみもない青白い胸元に舌を這わす貴方の髪に指を絡ませれば銀糸はスルリと離れていく。
「…」
「何、笑うてんの」
思わずクスリと口端を上げれば怪訝に問われた。
「…何でもありません…」
心も髪も指の間から擦り抜けるように。僕では貴方を捕まえる事は出来ない。そう言われたみたいでヒドク可笑しかった。
「ふぅん…もう止まらへんで?」
「構いません。僕は貴方の信者ですから」
「信者?なんやの、それ。」
なんだと言われても言葉通りの意味でしかない。
「…‥貴方は…僕の中で絶対的存在で…憧れで…」
巧く言葉が出ずに視線を彷徨わせていればふと細く白い指が唇に押しつけられた。
「えぇわ。もう黙り‥」
興味無さげに。けれどやんわり言葉を封じられて進められる指先は身体に熱を生んでいくけれど。
「っ…」
恋人同士のような甘い雰囲気も口付けも無く。それが只の処理であろう行為を裏付けていた。
「ぁ…隊長…っ」
それでも呼ばずには居られない。触れてくる貴方を拒めない。
僕はそれほど貴方に堕ちている。
終
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