こんな行為は何の意味もねぇのに
そう理解してるのに
拒めないのは俺がお前に負い目があるからか
それとも…
背徳と行為
「…っく…ぁ‥ふぅ…ん」
擦れた喘ぎと荒い呼吸音が静まり返った夜に響く。
「声、でかいっつの。聞こえちまってもいいのかぃ?」
そう言ってやれば甘寧は悔しそうに顔を歪め歯を食い縛って声を押さえようとした。
けれど凌統はそう易々とはそれを許さない。じわじわと掠めるような動きで肌を滑らせる手の動きに身を捩れば拘束された手首は傷をつくり身体は熱を持つ悪循環。
「っふ‥」
更に鎖骨から肩、二の腕や胸筋の上に住む龍の上を丹念に舌を這わせられる。
「っく…ぁ…っ」
抑えようとも声は漏れ、身体はぴくりと素直に反応を返す。そして反応を示した所はキツク吸い上げて跡を残されるのだ。
「…あ、やめっ…!あとは残すな…っ」
普段上着を着ていない甘寧にはそれは当たり前とも言える抗議。けれど言ったとたん頬に鈍い衝撃がくる。顎を伝う血の感触に殴られたと理解する。
「うるせぇよ…。アンタには拒む権利なんてねぇんだよ」
そう言って殴った頬を撫でながらイヤラシク笑う。
「あんまうるせぇ事言ってと口も塞ぐぜ?…まぁ、声が聞けねぇのはつまんねぇけど…アンタは見つかるリスクが減ってイィんじゃね?」
「……」
ギシリ
奥歯を噛み締める。
罵ってやりたい。
そんな事あるわけねぇだろと叫んでやりたい。
けれど場所がソレを許さない。
ここは呉軍の駐屯地で。
先の戦いに見事勝利し今は国に帰る凱旋中。
言うなれば野っ原に味方同士でくっついてゲルの中で雑魚寝状態。
一応将軍階級の俺等は雑魚寝って事はねぇけど密集した布一枚の隔たりの中だ。
大声なんて出したら即アウト。
回りに控えた警備が直ぐ様飛んでくるだろう。
改めて状況を理解すると寒気すらしてくる。
誰かにバレるだなんて。
こんな姿を見られるだなんて。
それだけは、それだけは避けなければ!!
両手を拘束されて、元々薄着の服は既にその意味を無くして、自分の上には凌統が覆いかぶさっている状態。こんなの。どんなオボコイ奴でも理解しない訳がない…。
「ぅあっ…!」
不意に胸元をキツク噛まれて声が漏れる。
「意識飛ばしてるなんて余裕だねぇ?」
欲情した瞳で俺を見下して口端を釣り上げて淫美に笑う。
確かに嫌な筈なのに、その瞳に声に姿に煽られる。
「見られてるだけで感じてんの?ここたってきたぜ?」
そう言って布越しにさわられれば確かにだらしなく先走りを零して主張しはじめてる俺自身。
「随分淫乱だなぁ甘寧サンよぉ?」
屈辱で顔が歪む。
ひどく楽しそうに笑うコイツに吐き気がする。
(‥気持ちわりぃ…)
下半身をまさぐる手は間接的に緩やかな刺激を与えてくる。
「っくぅ…ふ‥ぁ」
確かな刺激が欲しくて無意識に腰が揺れる。もちろんコイツがそれを見逃すはずがなくて。
「腰…動いてるぜ?」
言われなくても分かってるのにわざわざ羞恥を煽ってきやがる。やわやわと扱かれれば我慢なんてできなくて思考とは裏腹に身体は次の快楽をもとめてしまう。
けれど
「どうしてほしい?」
なんて聞かれて素直に答えられるほど理性は剥がれていなくて
ただ下唇を噛み締めて、首を左右に振るだけしかできなかった。
その行動は凌統には気に入らなかったらしく眉間に皺を寄せて睨んでくる。
「まだ自分の立場分かってないみたいだね?…お仕置きするとしますか‥」
言うなりおもむろに高く結上げた髪を解くと髪紐で俺自身の根元をギュッと縛ってきた。
「っく…や、は…ずせ‥!」
せき止められた苦しさに思わず抗議するが
「外したらお仕置きにならないだろ?」
と、ごく簡単に却下された。
鼻腔を擽るお前の甘い女みたいな香が、襲ってくる快楽がひどく俺を酔わせていく。
そのまま手で扱かれて徐々に硬さを増していくのが自分でも分かった。先から出る液を塗り付けるように親指でぐりぐり撫でられて
「ぅあ…はっ‥ん」
無理矢理に広げられた足の間に身体を割り入られて膝ががくがく震えた。
ぱくり…
凌統が躊躇いなく俺自身を銜え込んで舐め回す。銜えきれない所は手で扱いたまま先端を中心に攻められた。
ぐちゅ…と卑猥な水音は鼓膜を犯す。
俺の液で口元を光らせたお前の顔が視覚を犯す。
「ふぁ…は‥ぁ…」
せき止められたままの愛撫はもはや苦痛でしかなくて、張り詰めた自身に髪紐が食い込んでかなり痛い。
「あ…っ‥痛ぇ…っんぅ…コレ、外せ…よ」
息は荒くなって、もう俺の頭ン中はイきてぇっていう欲しかなくて、2回目の哀願。
「未だ駄目。お仕置きなんだしアンタの言う事聞くわけないっしょ?」
また軽く拒否られた。
「さぁーってと」
じわりと生理的な涙が浮かぶ俺の顔を見て満足そうな顔をしたと思ったらひどく楽しそうな声がする。なんだ、と思うと同時にぐいっと身体を引っ張られて。
両手を拘束されてる俺はそのまま前のめりに倒れこんだ。顔は床に伏せて腰だけを高く突き上げた獣じみた格好。
「ぁっ!?」
起き上がって抗議しようとしたら何時の間にか裏に回った凌統に押さえ込まれた。そのまま俺の液で濡れた手で尻の肉を割って撫でられる。
「ひっ…」
ぬるりとした感触が気持ち悪くて思わず声が出るが、そんな事はお構いなしにつぷりと指が入り込んでくる。ぐちゅ、ぐちゅと音を響かせて開かれていくソコがひくひくと痙攣するのが自分でも分かる。指が増えて中でばらばらと掻き回されて内壁を探るようにしこりを弄ばれて。
「っふ、あぁっ!!…や‥んんっ‥ぁ」
声が、指に合わせて動く腰が止まらない。
快感とイケない苦しさでイカレちまいそうだ。
縛られたままほっとかれてる自身からは滲み出てる半端な液がぽたぽたと滴れている。
「もう1回聞くぜ?どうして欲しい、甘寧?」
後ろから聞こえる2回目の問い掛け。
その瞬間、俺は躊躇いを脱ぎ捨てた。
「はずしてっ…イかせ…ろっ…ぅあっ!!」
ぎりっと自身に爪をたてられる。
「ちがうんじゃねぇの?」
‥畜生…ッ!
「…ふぁっ、あ…イかせて‥下さ‥ぃ」
穴の辺りをガン勃ちしてる凌統ので撫でられる。
「もっと、ちゃんと、お願いしてみ?」
見えねぇけどきっとニヤリと笑いながら言う台詞。
ムカつく・心底ムカつく!
けれど身体は既に我慢の限界。
仕方なく口を開く。
「ふ…お前の…挿れ、て…っあ…下さ、‥ぃ…」
穴を軽く突いたり撫でたりしたまま、まだ挿れてくれない。
「俺の何を、何処に、どうして欲しいんだよ?」
…あまりの底意地の悪さに口籠もってしまえば促すようにとどめの言葉。
「別に俺はこのままほっといてもいぃんだぜ?続きは朝アンタを起こしに来た奴にやってもらう?」
「………っ!」
自分だってギリギリのくせに、そんな事できるわけねぇのに!分かり切ってるのに聞いてくる!!
あまりの屈辱と羞恥に目眩がする。
それでも。
すがるしか無い自分がなんて惨めな事か。
「っふ…お前の、‥ん…デカイ、ソ、レを…‥俺の中に‥挿れ…て、イかせて…下さぃ…」
最悪だ…なんもかんも捨ててお前を求めた事も、こんな事言わされたってのにソレにまた感じてる自分も…。
「…あんたにしちゃ、上出来‥」
ふっと笑った気配がして。次の瞬間、穴に先をあてがわれて一気に貫かれた。
「っぐ、ひあぁぁっ!!」
凄まじいの刺激と熱さに悲鳴じみた声を上げてしまう。もう声なんて駄々漏れなんじゃねぇだろうか。でもそんな事を考える思考は一瞬で散らされて。膝が震える俺を後から抱き込んで激しく突き上げられた。
「っあ…あぁ‥あぁ‥ぅんっ…」
水音をたてて、前立腺を掠めてギリギリまで引き抜かれて、またそこ目がけてねじ込まれる。断続的に続くあまりにも強すぎる快感に気が狂う。
「…ぅ‥あっ、も‥駄目…イか‥せてっ‥!…イかせ、てぇ…っ!!」
もぅ堪えらんねぇ。
必死に訴えれば背中から項をべろりと舐め上げられて、抱え込んでた片方の手でようやく戒めを解かれた。
「いぃぜ…?イケよ‥」
そのまま数回扱かれて腰を叩きつけられて…
「あ、…あぁっ、ふぁぁぁっ!!」
せき止められて溜まりすぎた精液が勢い良く飛び散って…なかなか止まらなくて、どうしようもない羞恥を煽った。
そのまま力が入んなくなって沈み込んだら身体を反転させられて
無理矢理口開かされて、その中に白濁を注ぎ込まれた。
「ん…んぐぅ‥げほっ」
口端の飲みきれなかった白濁を舐めとって今度こそ沈み込んだ。
しばらくして自分だけさっさと身支度を整えた凌統が両手の拘束を解いた。
長い事縛られっぱなしだったソコは青黒く痣になっていた。
「…無茶しやがって‥」
恨みがましく言ってやればフンと鼻をならして
「アンタだって楽しんだだろ?」
とか言ってさっさと自分のゲルに戻っていった。
あっさりしたもんだ。
とりあえず身体を清めようとするが腰に力が入らない。
(は…格好悪‥俺…)
気付いたときにはとめどなく流れる涙
(何泣いてんだか…)
情けなさか、悔しさからか
「…ふっ‥ぅ」
涙が止まらない
あんな行為は何の意味もねぇのに
そう理解してるのに
拒めないのは俺がお前に負い目があるからか
それとも…
それとも…
終