周りには今は使っちゃいねぇ資料とかが入った馬鹿デカイ倉庫
此処はソレの所為で陰になってるやっぱり使われてない倉庫で、付け加えるならば屋根の上
陰になってる分他より少しひんやりした空気が流れている
と、いってもソコは夏
やはり暑い事に変わりはなくて
「…暑…」
「…言わないで下さいよ。余計暑くなるじゃないっすか…」
「ばっか、お前。暑い時に暑いって言わねぇで何時言うんだよ?つか、言っても言わなくても変わんねぇし」
気分の問題じゃねぇかと頭で突っ込むもののまさか口に出す訳にはいかず溜息を吐いた
さっき言った事とかぶるけど此処は真っ昼間の、誰も人が来ねぇような屋根の上
暑い・暑い神経の焼けそうな真夏にアンタと二人きり
ただサボってるだけだと言えばそれまでだけど…
聞こえるのは煩いぐらいの蝉の鳴く音とアンタの息遣い
…ただそれだけで
まるで別の次元に居るようだなんて似合わねぇ発想すら浮かんでくる
「っあ゛ーっっ!堪えらんねぇっっ!」
俺の様子なんて気にする事無く一人暑さに憤慨して吠えるアンタに不意に現実に戻された
「だいたいこの死覇装が真っ黒ってのが悪ぃんだよっ」
そんなどうにもなんねぇ事にブチブチ文句を吐き出して、ついにはソレを脱ぎ始めた
「っっ!?先パイ何いきなり脱いでんスかっ!?」
さすがに驚いて叫べば
「あ?だって暑ぃんだもん。脱いだっつっても上だけだし、別にいーだろ?お前しか見てねぇし」
そう言って目を細めて笑う
あぁ、頭がくらくらする
「ま、下まで脱いだら変態だけどなー」なんて言ってる先パイの声はとうに俺の脳には届かなくて、虚しく右から左へ抜けてるそんな状態
俺の目の前には普段はきっちり合わせれて見えない白い鎖骨や薄い胸板、細いくせに綺麗に筋肉の付いた身体
既に無いに等しかった俺の神経や理性を焼き切るのには充分過ぎるその要因
気付けば俺の下に組み敷いてた
「…恋次‥?」
突然の出来事に少し不安げに見上げてくるその仕草でさえ、今の俺には欲望誘発剤
衝動のままに薄い赤い唇に吸いついた
「っん!?ん…ぅ‥」
紡ごうとした言葉は俺が呑み込んで、少しカサついたその唇を味わって解放した
「は…テメ、何のつもりだよ‥」
低く唸るその声も今の俺には届かない
煩いぐらいの蝉の鳴く音も
アンタの声も
何も…何も…
聞こえるのはドクン・ドクンと脈打つ俺の心音
ただそれだけ
「俺、先パイが好きです…」
なりやまない心音
目に映るのは少し赤く染まった先パイの顔
神経さえ焼く暑い日差し
夏はまだ始まったばかり
終
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