久々の非番、外は暑いくらいにいい天気で部屋の中居るのはにもったいないくらいだ。

けど、俺の部屋の縁側では当たり前のように陣をとり惰眠を貪る赤い犬がいて。
「恋次…?」

傍に行って名前を呼んでもぴくりとも反応しやしない。

口を開けて何だかうっすら笑ってるようにも見える寝顔。

(もうちょっと色気のある顔しろよな…)

頭の中でツッコミつつも顔に掛かった赤い髪を梳いてどけてやる。

「…ん‥修ぅ…」

不意にまだ夢の中を彷徨うお前が小さく、小さく洩らした声。

それはまぎれもなく俺の名前で。

(…やべ‥かなり嬉しいかも…)

勝手に口元が緩んで自然に笑みが浮かぶ。

(俺の夢見てんのか?)

いつも恥ずかしがってなかなか言葉をくれないお前が洩らした無意識の言葉。

嬉しくないわけがない。

「…恋次?」

さっきとは違って今度は耳元で飛び切り甘い声で囁いてやる。

「っっ!?」

耳が弱いお前は案の定飛び起きて、しだいに顔を真っ赤に染め上げていった。

「お、お前起こすんなら普通に起こせよなぁっ!」

真っ赤になって怒ってんのか恥ずかしがってんのかよくワカんねーけど。
今の俺にはどーでも良いことで。

「恋次…」

甘えた声で名前を呼んで寝起きの頭をいぃこ、いぃこと言わんばかりに撫でてやる。

「え。な、なに…?…んんっ!?」

俺の行動に狼狽え放題の恋次を気にせず唇をやんわり塞いだ。

「っは…」

恋次の下唇をペロリと舐めてそのままギュッて軽く抱き締めて背中をぽんぽんってしてやって。

「恋次ー大好きだぜー?」
って、さっきから溢れんばかりのこの感情を届けてみた。

「…‥…」

「?」

何だか腕の中で無言の恋次を不思議に思って顔を覗き込んでみたら赤いまんま金魚みたいに口をぱくぱくしてる人、在住。

ぱくぱくしながら頑張って何か言ってるから、ん?と言わんばかりに近づけば微かに聞こえた

「…お‥れ、も…」

って言う言葉。
またまた不意打ちくらって今度は俺が赤くなる番で。
2人して真っ昼間に抱き合ってしばしの硬直状態。

数秒間の沈黙の後、二人で顔を見合わせて、お互いの顔を見た瞬間指さしあっての大爆笑。

「あははっ!!顔、真っ赤!マジ、腹いてぇーっっ!」
「っははは!何、俺らちょー恥ずくねぇ!?」

色気もなけりゃ、ムードもないし。

愛を囁きあって大爆笑ってなんだよ俺らって思うけど、何だかもぅ全部どーでもいぃ感じ。

何もないただの天気のいい休日もお前となら特別になるみたいだし?

2人でいればそれで幸せ。
そんな馬鹿な愛を確認した休日の出来事。


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