アンタの命を奪うことはもう止めた。

父上はそんな事しても返って来ないって本当は知ってるから。

けど、一度奪われた痛みや己の無力さ。こんな感情をぶつけるのは、胸の喪失感を埋めるのは、アンタしか居ないじゃないか。

受けとめろよ。俺の事。

この憎しみと悲しみといろんな物が入り交じっためちゃめちゃな俺の事。

アンタにはその責任があるだろう?







「……っ…ぁ…」

陽に焼けた喉元を綺麗にしならせながら小さく聞こえる呻き声。

「我慢しないで声出せばいぃじゃん」

口端をわざと釣り上げて下から上目遣いに見上げてやる。

「…っせぇ…てめぇ‥何のつもりだよ…」

眉間に皺を寄せ、漏れそうになる喘ぎを堪えながら、必死に言葉を紡ぐ。

「…ふっ、ぁ‥は、なしやがれ…」

上目遣いの俺に視線を合わせるようにキッと睨み付けてくる。が、その眼はすでに涙で潤んでいて鋭さの欠けらもない。

意地っぱりっつーか、なんつぅかそういぅのが煽るだけなのにねぇ?

「何のつもりって…こぅゆぅつもりだけど?」

そう言いながらやわやわと扱いていた自身の裏筋をべろりと舐めあげてやる。

「っくぁ…っ」

とたんに押さえきれなかった声と、先端からぬるぬるとした液が溢れ出る。

「イィ?すっげぇ溢れてくるぜ?たまってたんだ?」
くつくつと笑いながら手はそのままにわざと羞恥心を煽る台詞を吐いてやる。

「…っるっ‥せぇ!」

「…素直じゃないねぇ」

なんて言ってみたものの、予想どおり顔を真っ赤にして口答えしてくるアンタが可笑しくて、込み上げてくる笑いを押し隠す。

「何時まで強がっていられるかな?」

抑揚の無い声で囁いてやって俺は軽い刺激にすら敏感になってる自身を口に含んだ。

「ひあぁっ!?や、…はな‥せ…んぁっ!」

急な直接的快感に熱っぽい悲鳴じみた声を出し身を震わせながら離せと頭を力なく押してくる。

その手をやんわり払いながら舌を尖らせて先端を刺激してやる。


ちゅく、ちゅく…

卑猥な水音をわざと大きくたてながら強弱を付けて出したり加えたり、たまに甘噛みしてやって丹念に奉仕する。まぁ、頼まれてねぇけど

「…っふぁ…もぅっ…」

限界らしく体も自身も小刻みに震えてきて。
びくびくと脈打つ解放寸前のソレの根元をぎゅっと掴んでやる。

「っっ!?」

「何驚いた顔してんの?あぁ…イきたいんだ?」

プライドとか理性とか羞恥心とか、アンタの中でそういう物が邪魔をして答えられやしないのを承知で囁いてみる。

問い掛けに首を軽く横に振ってぎゅっと眼を閉じ唇を噛み締めるアンタ。

まったくもって気分がいぃ。アンタの快感を堪える姿とか。屈辱でこぼれる涙とか。いつも憎らしくて仕方の無い顔も今は赤みをさして眉間の皺が艷っぽく見えたりして。

そんなの目の前にして自然に笑ってるつもりだけどきっと今の俺の顔は歪んでる。

「…ね、挿れてくんなぃ?さすがの俺もアンタに突っ込む気はおきねぇし…あんたも納まりつかねぇだろ?」

「…っっ!?何、言っ‥てやがる‥!」

締め付け弄ぶ指の先には確かに刺激を求めるアンタ自身が欲を吐き出したくて張り詰めてるくせに口に出すのは驚愕の言葉。

「だから、分かんでしょーよ?」

そう言って座ってたアンタを仰向けに押し倒して腹を跨いで膝だちになった。

そのまま硬直してるアンタの上で身に纏ってたもの全てゆっくり見せ付けるかのように取り払って嘲笑いかける。

「ここにアンタのを挿れてって言ったんだぜ?」

ゴツイ右手をとって数回舐めてから導いてやる。

「俺の事ヨくしてよ…」

この台詞に困ったような何とも分からない顔をして、躊躇いがちに導いてやった指が動きはじめた。

「‥ん…」

俺の唾液で湿らせた指先がくちゅりと淫猥な音を立てて中をかき回す。

爪で内側を軽く引っ掻くみたいに掠められて何とももどかしい刺激がくる。

「‥もっと、奥…」

自分でも鼻に付くような甘ったるい声を出してねだってみれば望みどおり中まで入ってくる。

指が二本に増えて内側のしこりを集中的に弄ばれて。開いていた左手は俺の胸の辺りをはい回って愛撫してきやがった。


「…ふ‥ん、ぁっ‥」

意外にも巧い指の動きに翻弄されてきてしまう。

このまま主導権を奪われては仕方ないので俺の中を解していた右手を抜いて、理解できないといった顔をしてるアンタの自身を掴んでやる。そのまま腰を落として中へ中へと迎え入れて。
「…っ、きつ…」

思わず漏れたであろうその呟き。

「…入り切ら、ないうちに‥暴発は、ゴメンだぜ?」
「…誰が‥」

もちろん悪態付くのだって忘れない。挿れただけで結構ギリギリだけど、アンタだってきっとそうなはずだし。

「はっ…ん、あぁっ!」

自分の良いところに当たるように腰を振ってただ快楽にだけ素直に。ひたすら欲を貪る。

「く、ぁ‥凌…」

煽りまくってやった甲斐あって俺の腰を掴んでひたすらに腰を打ち付けてくるアンタ。

ずちゅ…ずっ‥

不規則なリズムで突き上げられば理性はすでに無いに等しくて。

「…ん、…ひゃぅ……其処っ!‥もっとぉ‥…」

喉を反らして上下に大きく腰振って、ぎゅうって銜え込んで。

「やぁっ…も、イ…くぅっ!!」

女みたいに貫かれて、身体を弓なりに反らして限界を訴えれば追い打ちをかけるみたいに早急に揺さ振られた。

「…っ甘‥寧…」

「…凌、と…ぅ」

白濁の俺の精液を跨いでいたアンタの腹に吐き出すと同時に俺の中が熱いアンタに満たされた。

荒い呼吸を整えてるアンタの上で痺れてる頭で何となく腹にかけた精液を指で掬ってみれば何時の間にかいつもの小憎らしい笑顔のアンタが居て。

俺の手を取って、よりにもよって舐め取りやがって
「てめぇの味がする」
とか言われた。

未だ繋がったままの身体も俺の中もアンタで埋まってて。

気付きたくないのに気付かされた。憎む以上にアンタを好きになってる自分に。
中から外まで俺を侵食していつのまにかアンタでいっぱいになってた自分。

「本当、訳分かんねぇ…」
「そりゃこっちの台詞だろぅが」

呆れた様な口調でもその表情は柔らかで。

満たされてる自分にまた嫌気がさす。

「なぁ…マジで何考えてんだ?正直理解不能なんだけど」

まぁ、アンタにしちゃもっともな疑問だよな。親の仇だと今まで散々命狙ってきた奴に半強制的に犯られたわけなんだし。


けど俺は素直じゃないし、勝ちが見えない勝負はしない主義だから。

「さぁ…?その筋肉製の脳みそ使って考えてみたら、バ甘寧」

「っんだと!てめぇっ!!誰が筋肉馬鹿だっっ!!」
「自覚無いんじゃ重傷だぜ?」

身体を引いて笑いながらさっさっと身支度を整えて俺を非難するアンタを無視して戸へ手を掛ける。

「ってめ!犯り逃げかよ!まだ答え聞いてねぇだろぅがっ!?」

あわてて罵声をかけても俺はもう部屋の外で。

きっと中では俺を追い掛けようと急いで身支度整えてるアンタがいるんだろう。

追い掛けてきたらこの勝負は俺の勝ち。一生かけて責任取ってもらおうか。

「おぃっ!!待てよ、てめぇっ!!」

ガターンッと慌ただしく粗野に開かれた戸。ばたばたと聞こえる喧しい足音と声の主。

さぁ、早く俺を捕まえな。

もう一度問いただされたら軽い触れるだけの口付けをして、今度は目を見て微笑いながら言ってやるから。

「アンタの事しか考えてないぜ」ってね。


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