どうしたって何したって素直になんかなれない性分で。傷つけて、罵られて、挙げ句の果てには殴り合いまでして分かり合った振りなんてしているけれど。実際そんなのは上っ面ばかりの振りでしかなくて。結局俺が何したって、何言ったって気に食わねぇんだ。所詮仇は仇。どうやったって事実は変わらねぇし、溝は埋まらない。











見慣れた天井は自分の部屋の物ではなかった。不本意ながら見慣れてしまった天井は両の指を全て使っても足りないくらい朝を迎えた部屋の物。天井の柄が見えたかと思えば直ぐに別の物に遮られた。物と言ってしまうと些か語弊がある。正確には面だ。これまた不本意ながら見慣れてしまった人の面。顔だけ見たら大層美人なのに如何せん中が救えない。爽やかな外見に似合わず性格が悪い。こうゆう奴が俗に言う鬼畜って奴なんだろうなとか思ってる自分はこんな事態に慣れてしまって考えることを放棄していると言っても過言じゃあない。

目が覚めたら男が馬乗りになってましたとかどんだけアホらしい状況だろうか。貞操観念なんて今更皆無な俺にはまた非生産的だなぐらいにしか思えない。本当にどうでも良いことばかりが頭を過っていく。

「考え事かい?」

不意に目の前の唇か動く。語り掛けてくる口調こそ柔らかいものの覗き込んでくる目が笑っていない。それは欲を孕んだ獰猛で鋭利な視線…。同じ男に向ける目にしちゃ不気味なものだ。そんなもの向けられたって苦笑しか浮かばない。

「まぁ、そんな余裕剥ぎ取ってやるけどね…。」

形の良い女みてぇな唇が厭らしく歪む。見慣れたくもなかったその瞬間を何度この目で見ただろうか。こいつが言う余裕なんて有るわけでもない。かといって虚勢を張る訳でもないけれど怯えたり拒否する意味もない。むしろ全てに意味なんて無い。何の意味も持たない行為に何の意味も持たない思考。俺が遣ること為すこと全部全部がこいつにとっては無意味なんだ。それに俺は元より拒む気なんて無いから余計に無意味だ。

そんな俺がする事と言えば歪んだ笑みにただ流されるだけ。

「……好きにしろよ」

吐き出した投げやりな言葉にニイッとつり上がる唇。猫のように細められた目が酷く楽しそうだ。

馬乗りになった体制はそのままに白く細い指先が形でも確かめるかのように動いては撫で付ける。首筋から鎖骨を辿り胸から腹。焦らすようにゆっくり、ゆっくりと辿る指はもどかしく、淡い感覚しか産み出さない。

「っ…」

何も身に付けてない上半身に幾つもの噛み後を残し、そこを舌で舐められる。緩やかな愛撫が不意に乳首に施されれば息が詰まった。じわじわと追い詰めるような抱きかただ。

もぞりと身体を捩る。緩やかな刺激にさえ慣らされた身体は敏感に快楽を感じとってしまう。馬乗りになられた下半身は反応を示して下衣を押し上げてしまっている。その状態が情けなくも滑稽だ。しかし押さえ付けられている状態じゃあ精々身を捩ることぐらいしか出来ない。もぞり、もぞり。しかし待てどくらせど期待する刺激は訪れ無い。分かっているだろうにニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべるばかりだ。

「あぁ…悪いね。重かった?」

わざとらしい口調で体勢をずらして、ついでに下も脱がされた。冷たい空気に腰がゾクリと戦慄く。そうこうしている内にすっかり勃ち上がってしまっているソレが凌統の眼前に曝されてしまっている。

「…蜜。溢れてるよ?まだ触ってもいないっつうのにねぇ…。」

「うるせっ…」

男として当たり前な反応と言えど指摘されれば恥ずかしく思える。

「なぁ、どうして欲しい?」

「………っ…………」

毎回毎回癖なのか、質の悪い趣向なのか肌を合わせる度にこの身に降り注ぐのは淫らな言葉の数々。そして求められるのは俺からお前を欲する物ばかり。

脇腹や股の付け根。そして内腿とねっとりと舌が這う感覚。

「どうした?言えないっつの?」

「ん、あぁっ…」

ガブリと内腿の柔らかい肉に歯が立てられる。嫌だと感じるのに開拓されきった己はその痛みを快楽に置き換える術を知っている。繰り返し噛みついてくる痛みや追い詰めるような言葉にさえもさえも忠実に確実に快楽を拾っていく。

「も、やめっ…ろ」

下肢に頭を埋める凌統に目を向ければ意地の悪いそれと視線が絡んだ。

「止めていぃのかぃ?こんなにドロドロにしといて。…なぁ、素直になんなよ。」

「っあ…ん‥ぅ」

ふっと自身に息を吹き掛けられて自分でもジワリと精液が溢れた事が分かった。

「触れてもいないのにイけそうだね…なぁ、お頭さん。聞かれたりしたら困らないかぃ?あぁ、むしろ燃えるか…?」

「やっ‥止め!言う…からっ」

ふと窓に視線を向けられてその考えを察してしまう。結局、何時も何時も拒めやしない。お前から仕掛けてくるくせに俺から求めたみたいになっちまう。

「……お前ので、壊せよ……」

「…まぁ、合格点かな?」

人の嫌がる面見ては悦こんで、どこまでも俺を貶めて楽しんでやがる。

「ひぃっ‥ぁ…ん…っ」

さっきまでの緩やかな動きはナリを潜めて激しく動き出した指に翻弄されて馬鹿みたいに喘ぐばかり。耳に付く掠れた声が気色わりぃ。けれど口は閉じることを忘れたみてぇに唾液を溢しながらも開きっぱなしで否応なしに声が出っちまう。
三本もの指をケツに射し込まれて、前は前で扱かれて先走りがぐちゃぐちゃと卑猥な音をたてる。先走りと滲み出てる精液がもうイク寸前だと告げている。

「…も、イっちまう…っ」

「ん…挿れるぜ…」

ぐちゅっと割って入ってきたものに目眩がする。
いくら慣れてもこの時の苦しさは慣れやしない。生理的に流れ落ちてく涙でボヤける視界に映るてめぇの面はやっぱり歪んだまま。

「う…っ あ‥ぁん…っ」

中に突き立てられた熱が遠慮も躊躇もなく奥へ奥へと貪るように揺さぶっていく。抜き刺しされる度に馬鹿みてぇに身体は熱くなって息があがる。

高められているのに、まるで奈落に突き落とされるみてぇな感覚。

「はっ‥も、凌と…っ」


「…イッちまえっつの‥」


前立腺狙って突きあげられれば抗うこと無く一回も出してなかった欲が溢れた。同時に中に爆ぜた飛沫は燃えるように熱くて、互いの腹に撒き散らした物は気持ち悪い。

定まらない視線に見ないようにしてた奴の面が映る。歪んだ面で歪んだ笑み。近づいてきて一瞬だけの戯れのような口付け。掠めるようなソレは嘘みたいに冷たかった。




感じたのは温度差。
幾度めか分からぬこの行為。毎回突き付けられる現実。



あぁ、まったくやってらんねぇ。

目を閉じながらドロドロに汚れて意識飛ばすその時にいっそ。






いっそ、殺せよ。





なんて。そんならしくねぇこと考える自分にも目の前のクソ野郎にも反吐が出るぜ。





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