tuiki
以前にも書いたが、年々恥ずかしいという感情がなくなってきている。

この間、彼氏とエスカレーターを下っている時に目的地が上の階であったと気づいた。すぐさま降りて隣の上りエスカレーターに乗ると、彼氏に「ちょっと待ってから乗りたかった…」と言われる。私はそうする意味がわからず、「え、なんで?」と聞いたら、降りてすぐ上りエスカレーターに乗ったら、さっきまで後ろにいた人とと目が合うからと謎なことを言われ、世の中にはそんなことを恥ずかしがる人もいるのかと思った。

彼氏はよく人の目を気にしているが、私にはもうその感覚のほとんどがわからなくなってきている。特に2度会うかもわからない赤の他人に対してはほとんど作用しない。

しかし思い返せば、小さい頃はそんな子ではなかった。人の目が気になって恥ずかしがって、引っ込み思案で、大人しい子だった。幼稚園・小学校・中学校くらいまではそうであったと思う。とくに幼稚園・小学生の時は肌が弱く、朝、顔が赤く腫れていた日にはギャン泣きして学校に行くのを嫌がった。教育熱心だった親の元、ゲームなど持っていないことも、最近のテレビも何も知らないことも恥ずかしかった。ただ中学生になると周りはそんな子たちばかりだったのでその点の羞恥心は薄れた。それでもまだ、授業中積極的に手を挙げて目立ちだかるような子ではなかったと思う。

そんな私を変えたのは、1冊の本だった。
読書をしていて、「考え方に大きく影響を受け、行動まで変わる」ということは、そう多くはないだろう。そんな1冊に、私は高校1年生くらいの時に出会うことができた。


それは、「マンガ家と作るBLポーズ集 キスシーンデッサン集」である。

…冗談だと思った方が多いと思うが、本当である。
しかしこのデッサン集の中身というよりかは、このデッサン集の購入過程に意味があった。いつかの記事で、私が高校1年生くらいからBLにハマり、そこで色々と嗜んでいたことは記したが、実は、自分で二次創作イラストを描くことにも手を出していた!
ただいかんせん絵が下手であり、しかも練習も継続的にしたくないという最悪な根性を持っていたので、デッサン集をそのままなぞり、手っ取り早くいいイラストを描きたいというゴミ思考によりそれは決行された。

当日、私は何度もBLコーナーをぐるぐると周り、持った本を抱えながら迷った。
本屋に来て、ブツを手に取りまでしたのに、レジに持っていく勇気が出ない。レジには店員が3人おり、1人は女で2人は男。そこそこ並んでいるため誰に当たるかわからない。私は男には当たりたくなかった。
めちゃくちゃ迷った末に、一緒にいた友人から「もう私が買おうか?」という言葉を4,5回くらい聞いた時にようやくレジに並んだ。

男、女、男、男……
緊張の面持ちで祈った。

女性店員女性店員女性店員女性店員……
私の番が近くなっていく。

お次お待ちのお客様〜




男性店員に当たった。

神を恨んだ。

しかし私は人目を気にする子だったので、ここで列を乱す行動や「BL買うのを気にしています」という表情を出すわけにはいかなかった。
限りなく無に近いポーカーフェイス。違和感のない所作。
カバーつけますか?大丈夫です。
ありがとうございました〜

買うことができた。
「マンガ家と作るBLポーズ集 キスシーンデッサン集」を、男性店員を通して、購入することができた。

終わったあとの溢れ出る達成感はもう凄まじかった。そして男性店員の一切何も気にしてないという顔。
私の中で、人生の何かのステージをひとつ上った感覚があった。正直大概のことはこれより恥ずかしくない。そしてこの購入も今後繰り返していけば、恥ずかしいという感情も徐々に薄まる。私にはその確信があった。

この日を経て、私は確実に変わった。本がどうとか言ったが、実は経験が1番なのだ。その辺の自己啓発本を読んでもなんの実にもならないのは、そこに経験が付随しておらず、自らの体験で納得するという過程がないからだ。

私はあれから、何冊ものBLを買った。表紙からエロまみれのBLもレジに持っていったし、ネットで成人向け同人誌を買って親に見られたし、ゲイビも買ったがあまりの羞恥に処分したこともある。
何事も経験なのだ。

徐々に羞恥心の感覚がおかしくなっている私は、大学を留年など全く恥ずかしくない。なんなら5年生として過ごした日々も学内を日傘サングラスで歩き、授業で分からないところがあったら手を挙げ先生を呼び、周りの年下にも話しかけてた。

人生は恥である。人生から恥は決して切り離せない。
恥を多く持つことが、時として損に繋がるということも多い。1歩踏み出せない理由になることも多い。
そんな人は、ぜひ本屋に足を運んで欲しい。
そして店内でこれを買うのはまじで恥ずかしくて死ぬ生きてられないという本を1冊手に取り、レジに持っていって欲しい。それを乗り越えた先に、新しい自分があるかもしれない…

(セルフレジには逃げないこと。)
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