tuiki
一切というのは、デートすらないということである。

中高と女子校で過ごした私は、大学に入る頃にはすっかり男性が苦手だった。男子と関わった記憶が小学生で止まっており、6年の空白期間を経た当時、彼らが何を考えているのか全くわからない。未知の生命体のようだった。
幸い女友達からは「男から守ってあげなきゃいけない存在」というような認識で敵意を持たれず、とても良好な関係を築けた。恋敵にはならないであろう私に安心感もあったのだろう。私は文字通り異常な距離感を男性との間にとっていた。

人並みに恋愛をしてみたかったが、当時18歳の私は尖った考えを持ち、怯えていた。世の中には「3回目のデートで告白」というのが当たり前だが、私からしてみるとたかだか3回会っただけで交際を始め、キスや体を暴く権利を与えるということが信じられなかった。母に「大体3回くらい会えば自分との相性とかどんな人かわかるでしょ」と言われたが、そんな訳はない。そもそも未知の生命体なのだ。

悶々と悩む私に、数人の男性がアプローチをしてくれた。切っても切れない他愛もないLINEが始まり、私は怯えに怯えた。まずこまめに連絡をとれる性格じゃない。Twitterに死ぬほど浮上してるにも関わらず、LINEは3日放置が当たり前の私には、連絡を取り続けることが至難の業だった。次にデートの断り方がわからない。デートに誘われても、地獄の3回カウントダウンが始まってしまうと頭を抱えるくらいには相手を知る余裕がなかった。結果私は、約束のドタキャンを繰り返すゴミのような対応しかできず、最終的に既読スルーをする勇気だけ身につけた。

思い返すと本当に失礼で申し訳なかったが、今は当時好意を持ってくれた相手と楽しく話せるようになった。相手の優しさに感謝である。

そんな私が今の彼氏と付き合ったのは、大学2年。20歳の冬だった。約2年ほどの大学生活で、男性との距離感も縮まり、苦手意識もかなり薄れていた。そのため、彼からのアプローチもすんなり受け入れられた。
人として相手を知ろうと思えたし、何より二人で会ってみようと1歩踏み出せた。私はドタキャン女として名を馳せていたので、彼はギリギリまで断られるかもと思っていたらしいが、当時の私はもう一皮むけていた。あれだけ苦手だったLINEも、3日放置しても1時間で返してくる彼の速度に少しづつ合わせていくくらいには、相手に歩み寄れていた。

本当はこんなこと、みんな中高の時に経験してるのだろう。大体の人がすでに踏めるテンポを、私は少し遅く経験した。人を知ることを怯えすぎてはいけないと同時に、知らない自分を知ることもまた、怯えすぎてはいけなかった。私は自分がどのような恋愛ができるか知らない。最初からどタイプな人じゃないと付き合えないのか、付き合って徐々に深く好きになれるのか、どんな人が相性がいいのか、スキンシップはどのようにとるのか。何も知らなかった。未知は恐怖に直結する。

彼とは、決して私が嫌なことをしないだろうという確信から付き合った。上手くできないことが多い私を、だだっ広い心で受け入れてくれると思ったのだ。その予想は的中し、今も、彼を通して新しい自分を知っていく感覚は奇妙に心地いい。人と時間をかけて向き合うことは、こんなに自分を豊かにしてくれる。


まあ交際開始後もセックスは絶対に痛いから嫌だと暴れ、かなりの期間拒否したりしていたのだが、それはまた次の機会に語ろうと思う。
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -