Twinkle Twinkle | ナノ

ちらちらと雪が舞う。今日は気温が今期一番と言ってもいいくらいに下がっており、完全防備したはずだがそのあまりの寒さに燐は総身を震わせた。




「ぶ…えっくしょいっっ!!」

「わっ、大丈夫?燐」




悪寒が背中を駆け上がり、鼻に到達。大きなくしゃみをすれば、隣を歩いていたしえみが驚いた顔をしたあと心配そうに首を傾げた。そんなしえみに、燐はにかっと笑ってみせる。




「おー平気平気。心配いらねぇよ」

「そう?なら良かった」




ずびっと洟を啜りながらもそう答えれば、しえみも笑った。ふわりとしたその笑顔に燐は思わず顔を赤くする。それが悔しかったのか、燐はふいっと一度しえみから視線を外してまた戻した。




「……お前今日本当に真っ白だな」

「ああ、これ?神木さんと朴さんにね、今日燐とイルミネーション見に行くって言ったら貸してくれたの!!」




しえみは嬉しそうに言いながら、そして尚且つ歩きながら一回転した。今日のしえみは白タイツに白いポンチョ型のコート。白い耳当てに白い手袋。違う色と言えば、コートから覗く赤いスカートと茶色のブーティ。しえみが一回転したことにより、コートとスカートがふわりと揺れた。




「なんか雪ん子みてぇ」

「あ、それ朴さんにも言われた!!ふふ、食べちゃうぞー!!」

「………それ、違くね?」

「え?違うの?」




おかしいなぁと言って首を傾げるしえみ。なにがおかしいのだろうか。そう思って燐は訝しげな視線を向けた。しえみはそれに答えるように口を開く。




「朴さんが、『それ可愛い!!うん!!奥村君にもやってあげて。きっとイチコロだから』って言ってたからやってみたんだけど……イチコロってなんだろ?燐は知ってる?」

「………イチコロ………ああ。うん。確かにちょっとヤバかった」

「燐?どうかしたの?」




しえみが言ったことを頭の中で反芻させ、さらにそれを言ったときの笑顔で両手をあげて襲いかかる様を反芻させた。そして小さな声で呟く。しえみにはその呟きは聞き取れず、黙ったように見えた燐の顔を覗き込んだ。




「うおっ…なんでもねぇよ!!……しえみ」

「うん。なあに?」

「さっきのアレ…」

「アレ?」




燐の顔は赤い。しかしその顔は思いっきりそらされており、しえみにその顔は見えない。見えなくても、燐はしえみがきょとんとしたのを感じた。恥ずかしさを紛らわすように、燐はしえみの手をぎゅっと握る。そしてしえみに視線を合わせた。




「食べちゃうぞーとか、俺以外に言うな。言ったら怒るからな」

「え?なんで?」

「分かんなきゃ分かんないでいい。とにかく言うなよ!!」




案の定よく分からないという顔をするしえみに、燐は叫んだ。朴は一体なにをしえみに吹き込んでいるんだ、とああ見えて油断ならない朴に心の中で文句を言う。まあでも可愛いのを見れたからいっか、と単純な燐はあっさりと朴のことを頭から流した。




「うーん…よく分かんないけと、燐がそう言うなら誰にも言わないよ」

「おう。約束な」

「うん。約束ね」




にっこりと笑うしえみに燐も笑顔を返す。雪はもう止んでいて、イルミネーションが綺麗と評判のスポットもすぐそこに見える。しえみが隣にいる。それだけで幸せだ。燐はしえみの手を握る強さを少し強くした。それに応えるように、しえみの燐の手を握る力も増した。




「……ねえ、燐」

「ん?なんだ?」

「また来年もイルミネーション見に行こうね。来年だけじゃなくて、その先も……ずっと行けたらいいな」

「……ああ。行こうぜ。これからもずっと」

「うん。約束、もう一つ増えたね」

「おー……破んなよ?」

「燐こそ。約束だからね?」




立ち止まってきゅっと小指同士を絡ませる。額と額を合わせて、秘密を共有するように。きらきらと輝く光に照らされながら笑い合う。





慈しむように、幸せそうに。











Twinkle Twinkle
(きらきらひかる)














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