君を切愛したいと切望する

僕を拒否する限り、君を切愛することは許されないのかと、消沈している僕に愛を告げる人がいた。その人は、名を『葵』と言った。至極惹かれる名だった。地に這う茎にハート型の葉を付ける葵が、近くの神社に多く生えている。が、僕は立葵の方が好きだ。この時季、庭には背丈ほども天を突く立葵が多彩に咲く。『葵』の名を聞き、庭の立葵を思い出した。

「花が好きなの、男なのに」

季節ごとに様々な花が咲く庭を見て、この切愛出来ずにいる彼女『弥生』は、花を好きな男など気色悪いと言った。何が気色悪いのだと思ったが、それを言うには意気地無しだった。花のように華やかなお嬢さんではあったが、少し口がたつ。頑固で強情な点は、長女らしいところでもあった。

比べ『葵』は、小さな背丈で短い髪こそ幼く見せたが、瞳は凛としていて見透かすような強い眼差しをしていた。名ばかりではなく、そこにも僕は立葵を重ねたのかもしれない。 『葵』は、立葵も花を付けている多彩な庭を見て、素敵だと褒めてくれた。そして庭に誇る花々のように、自分にも丹精込めて貰えたら嬉しいと歯に噛みながらも瞳を輝かせた。

━━━葵
(双葉葵を見に行くかい)
(デート、ですよね)
そう言い僕を見上げる君は、 至極可愛い。
fin.

joie様提出 「切望」




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