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stardust

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Prince of Tennis
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泣きたい時は大きな声で(リョガリョ)

「ちくしょ…っ!」

 小さな影が蹲って泣いている。生い茂るオレンジの木の下で蹲っているそれを見た時、リョーガは小さく苦笑を浮かべた。その蹲る物体の正体に覚えがあったからだ。
 サクサクと芝生を踏んでその影に近づけば、ふるふる震える肩にぎゅっと力が入る。時々それから漏れる嗚咽が、それが泣いているということを表していた。

「また、負けたのか?チビスケ」

 そう言ってその小さな影を抱きあげれば、自分よりも遙かに高い温もりがもぞもぞと腕の中で身じろぐ。自分の腕の中にすっぽりと収まる小さな子どもは、グズグズと鼻水を啜りながら、ぎゅっとしがみつくようにリョーガの首元へと抱きついた。まるで擦りつけるように肩に顔を寄せる子どもの涙がリョーガの服を濡らす。じわりと湿ったそれに、普段ならば嫌悪するけれども、それがこの子どもの涙であると不思議な事に嫌悪感は湧かなかった。小さな震える背中をポンポンと叩いて、リョーガはオレンジの森から太陽の元へと出る。

「泣く時はちゃんとオレの所に来いって言っただろうが」

 苦笑を浮かべてそう告げても子どもはうんともすんとも言わない。唯、小さくリョーガの耳元で押し殺した嗚咽を漏らすだけだ。暗い影から子どもを引き連れて、庭の片隅に置かれたベンチに腰掛ける。太陽の眩しい光に瞳を細めながら、自分の体にしがみつくその小さな温もりをそっと膝の上に置いた。

「あーあ、ひでー顔」
「うる…さぃ!」

 その涙でぐしゃぐしゃになった顔は、見るも無残な酷さであった。目元は赤く擦れているのにボロボロと大粒の涙が未だこぼれ落ち、それと一緒に鼻水まで出てるものだからどれだけ泣いたのかと笑ってしまう。ハンカチなんて気の利いたものなど持ち合わせていないため、ゴシゴシっとシャツの裾でその顔を拭う。「ぅぷ」と間抜けな声がして、乱雑に顔を拭かれている子どもは息苦しそうに首をふった。

「次はあんな所でメソメソするんじゃなくて、お兄様の胸の中で泣きなさい」
「…ばか!」

 未だ赤くなった子どもの瞳を覗きこんでウィンクすれば、眉を寄せた子どもがベーッと舌を付き出して悪態を吐く。未だ子どもの瞳は薄く水の膜をはって潤んでいるものの、溢れ落ちる涙が消えなことに笑みを携えたリョーガは、そっと子どもを抱きしめるとその自分と似た色合いの柔らかな黒髪に顔を埋めて小さく呟く。「隠れて泣くくらいなら大声で泣いてくれ」と。



きたい時は大きな声で
(けれど、どんなに小さな声でも見つけてみせるから)
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After word(あとがき)
メモログ。リョガリョ。多分幼少時代ですが、リョーガさんが普通に大人な感じになってしまいました。
アメリカ兄弟がスキンシップ激しかったらとても好きです。そして、幼少だけでなくて、未だにリョーマくんが泣きそうになったら、子どもの時みたいに抱き上げちゃったりなんかするお兄さんが欲しいです。
2012/07/18
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