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stardust

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Prince of Tennis
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よく解らないSFものの1シーン(青学リョ)

 縺れる足を振り絞ってリョーマは走った。背後から迫りくる数多もの影から逃れるように、この先に待つだろう仲間を信じてただリョーマは走っていた。喉は枯れ、息をするのもやっとだ。苦しくて苦しくて、込み上げてくる涙を拭うことも出来なくて、もうやめてしまおうかと何度も思った。けれど、ここで諦めてしまえば、決してあの暖かな人達には会うことは出来ないだろう。こんな自分を受け入れてくれた、あの優しくて暖かいあの人達に、もう一度会うためにリョーマは全てを捨てて走っていた。
 いくつもの手がリョーマに伸びる。後少しで触れ合うその距離まで迫る影に、リョーマは絶望した。もう、終わりなのかもしれない。もう、彼らには会えないのかもしれない。心にいくつもの絶望が宿り、挫折にしてしまいそうになった。曲がり角を曲がる。この先に何が待ち構えているかなんてリョーマにもわからない。ただ、少しでも長く、彼らから逃げることだけが今リョーマに出来る事だった。
 捕まる!指先に触れた男の手にリョーマはひゅっと息を吸い込む。ギュッと目を閉じて思い浮かべたのは、本の数カ月だけ行動を共にした青年たち。最後に、もう一度会いたかったと思ったリョーマは、突然力強く引かれた身体にパッと目を見開いた。

「リョーマ!」
「国…光!」

 まるで自分を抱き込むように現れたのは、リョーマを保護した青年だった。あの日、鳥籠から逃げ出したリョーマを暖かな世界へと導いてくれた人。すぐ近くにあるその温もりに、リョーマは頬を伝う涙の意味を知る。あぁ、自分は会いたかったのだ。願いなんてとうの昔に捨ててしまったと思っていたのに、自分は今、彼らと共に生きることを願っている。もう、離れたくはないのだという思いが込み上がり、リョーマは自分を抱きしめる男の首元へと抱きついた。

「菊丸!不二!」
「OK!」
「任せて!」

 手塚が大きな声で二人の青年を呼ぶ。すると、手塚の頭上と隣を抜けて、二人の青年が躍り出た。

「可愛い後輩を苛めてくれたのは君たちだね?」
「オチビに怪我させたんだから覚悟しろよ、な!」

 リョーマを捕まえようと目論んでいた影に向い菊丸が走りだす。そうして手にしたナイフでその影を払うように一閃した。その後ろで銃を構えた不二が菊丸に襲いかかる影の足止めをしている。連携のとれた二人の流れる動きに呆然としながらも、リョーマは自分を抱きしめる手塚の腕の中で小さく身体を震わせた。
 結局、影は菊丸たちに傷を負わすこともできず、姿を消す。そうして、辺り一帯に異端の気配がないことを感じ取った二人は慌てた様子でリョーマの近くへと走り寄った。

「オチビー!!どこも怪我してにゃい!??」
「…大丈夫っす…」

 飛び付くようにやってきた菊丸をリョーマは青ざめた表情で見上げる。その痛ましい少年の姿に菊丸は燃えるような怒りがこみ上げた。この優しい少年をここまで脅かすあの異端が憎かった。そうして、自分たちからこの愛しい少年を奪おうとする連中が溜まらなく嫌いだった。顔を青ざめながらも気丈に振る舞うリョーマの姿を見て、この少年を守ってあげたい。守りたいとそう強い思いが心を支配する。少しだけ汗で湿った髪を撫でながら菊丸はこの小さな少年を守るのだとそう決意した。

「怖かったね…」

 気丈に振るまいつつも、手塚の服の裾を握って離さないリョーマに不二は切なげな声をあげる。そうして、落ち着かせるようにリョーマの顔を両手で触れると、もう敵はいないのだと優しく笑いかけた。
 リョーマは胸の奥底から込みあがった熱い気持ちに戸惑いを隠せずにいた。頼りになる菊丸、優しい不二、そうして絶対的な信頼を寄せている手塚。三人の大切な仲間に囲まれ、彼らを失いたくないという思いが胸を過る。そうして、リョーマは、少しだけ落ち着きを取り戻した様子で自分を見下ろす手塚へと視線を送った。

「お前はオレ達が守る」

 リョーマを安心させるように、そう力強く言葉を紡いだ手塚に心がスーっと軽くなる。あぁ、自分にはこんなに自分を思ってくれる大切な仲間がいるのだと、そう実感した。

「先輩ー!リョーマ!!」

 遠くから走り寄ってくるいくつかの影がリョーマ達の名を呼ぶ。走りだした菊丸の背中を見つめていたリョーマの手を優しく握った不二が「帰ろう」とそう笑った。リョーマは自分の手を握る暖かな温もりを力強く握り返す。自分の帰るべき場所は、あの鳥籠ではなく、この暖かな人達の傍なのだ、そう感じて。



オレ達がるから
(その鳥籠を壊してあげる)
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After word(あとがき)
メモログ。え?コレ何?っていうSFネタの1シーン。ただリョーマを守る手塚部長と戦う3-6が見たかっただけです(笑)本当はもっとバトルシーンを入れたかった。ちなみに菊丸先輩=ナイフを使うバリバリの格闘派。不二先輩=銃を使う中衛〜後衛のサポート型と思ってます。リョーマくんは特殊能力があって、そのせいでずっと軟禁されてて、一人で逃げ出したところを青学陣に助けられる…ていう妄想。手塚部長は…剣っていうよりも魔法とか使えそうww
2012/06/01
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