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stardust

http://nanos.jp/xxvorxx/ | Photo by Sky Ruins
Prince of Tennis
Short story
変態さんの嘆き(忍リョ)

「お前!何しとんのや!!」

 突然フェンスをこじ開けて現れた訪問者に場は騒然とした空気になる。お互い息が上がりつつリョーマと対峙する赤也も、二人の試合を見守っていたジャッカルも、ジャッカルから連絡を受け先程ここに到着した立海レジュラー陣も、ポカンとした様子で突然現れた男を見つめていた。

「氷帝の忍足か?」

 その顔に見覚えがあった柳は、自分の脳内のデータベースから情報を引っ張り出し男の名前を言い当てた。氷帝の天才といわれる関西出身の男。ダブルスもシングルスも中々の腕前を持つ。と、ここまで情報を出してみるがなぜここに男がいるのか、到底解らない。そう、誰しもが疑問に思っている最中、髪も制服も息も乱した忍足は、えらく怒ったような態度でコートの中へと走りよっていった。

「リョーマ!」
「侑…士?」

 慌てた様子で自分の元へと走りよってくる恋人に、リョーマは嫌な予感をひしひしと感じる。勘はいいほうだと自負しているが、こんなときに冴えなくてもいいと思いつつ、目の前に立った男の名前を呼んだ。
 ラケットのグリップを交換するために偶々神奈川に訪れていたリョーマは、何の因果か関東大会決勝戦前日に、対戦校である立海の赤也と試合をすることになったまではいいのだが…。しつこく何度も挑発するリョーマにキレた赤也が、まるで攻撃するような打球をリョーマの身体に浴びせたのだ。特に執拗に狙われたのが膝。何度もボールをぶつけられたそこは赤く晴れ上がり、当分は痣として残るだろう。
 水を差されたためようやっと理性を取り戻した赤也がばつの悪い表情を浮かべる。リョーマの身体の様子を診ていた忍足が真っ赤に腫れ上がる膝を見た瞬間、ギロッとその涼しい目元を吊り上げて赤也へと積めよった。

「お前な!何考えてとるんや!明日決勝戦控えとるちゅーのに、リョーマにこない怪我させて!いや、決勝戦前とかそんなん関係あらへん!オレの、大切なリョーマ傷付けよって!自分が何したか解っとるんか!!」
「侑士……」

 自分のこと以上に怒りを露にする忍足を見た時、リョーマは柄にもなくジーンと胸が熱くなった。ここ最近変態度があがり、忍足のかっこいい姿を見ていなかったのもその理由の一つかもしれない。自分の足に頬擦りしたり、唇を寄せたり、挙げ句舐めあげたりとどんどん気持ち悪くなっていく恋人に嘆いていたのかもしれない。少しだけ頬を赤らめ、自分を守るように赤也を睨み付ける忍足の背中をうっとりと眺めていたリョーマだったが、所詮彼が見たのは荒野の幻。直ぐ様かっこよかった恋人のイメージはもろもろと崩れ去った。

「こんの綺麗な足見てみろ!リョーマの真っ白くて細くてでも筋肉とのバランスがとれた綺麗な足がお前のせいでボロボロや!毎日オレが大切に大切にしとったもんを!!国宝もんなんやで!?世界遺産もんなんやで!?お前そこんとこ解っとるんかー!このアホンダラが!」

 前言撤回、やっぱり恋人はどうしようもない変態でした。
 ギャーギャー叫ぶ忍足にポカンと誰しもが目を見開く。これがあの氷帝の天才なのか?と疑問を抱いていることが容易く理解できたリョーマは、額に掌を置いて、空を仰いだ。

(Oh, my got...)



変態さんの
(嘆きたいのはオレのほう!)
| tns | →


After word(あとがき)
足フェチ忍足第二段。vs赤也戦に乱入です。こんなん書いておきながら…管理人は忍足大好きです(笑)
2012/05/30
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