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stardust

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Prince of Tennis
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人生楽しんだ者勝ち!(不良リョーマくん)

 ドシン!!という壮大な音がそこいら一体に響いた瞬間、先ほどまで騒がせていた騒音がピタリと止まる。汚い言葉を口々に喚いていた比嘉中の部員たちも、それに対抗するように大声をあげていた青学の部員たちも、そうして比嘉中vs青学の試合を見に来ていた他校生や観客たちも、今さっき目の前で起こった衝撃的な出来事に唖然とするほかなかった。
 六角中を難なく倒した比嘉中は連戦ではあるが、青学と戦うこととなった。と言っても青学の部員たちからすればあの年老いたオジイの顔面に向かって、それこそミスではない打球を食らわせた比嘉中に対し心底憤りを感じた最中の試合だ。元々血の気の多い様子の比嘉中に対し、ピリリと敵意をあらわにする青学。その第1試合としてシングルス3に踊りでたのは、青学で最も華奢で小柄なリョーマだった。対するは比嘉中一の巨体をもつ男。鼻息荒くリョーマを見下す田仁志に、あの生意気なスーパールーキーが怯えることなどなく、逆に挑発してしまうのだからたちが悪い。案の定リョーマの軽い挑発に乗ってしまった田仁志は、苛ついた様子でリョーマの胸ぐらを掴み上げると宙吊りにしてしまったのである。リョーマを溺愛する青学陣はそれこそ目に怒りを顕にしてリョーマの名前を呼んだ。いくらネットを挟んでいるとはいえ、あの小柄で華奢なリョーマがあのままあの巨体の男に投げつけられでもしたら、怪我を負うことは目に見えている。慌てた様子で二人に駆け寄ろうとした青学陣だったが、そこで突然響いた轟音にピタリと身体を硬直させた。

「あちゃ〜」

 青学陣のベンチの後ろで傍観していた千石は頭を抱える。彼は先ほど起きた出来事は全く動じることもなく、逆に周囲に与えてしまったインパクトに頭を悩ませるほどだった。内心これ以上好敵手を増やしたくないというのが千石の思う所だ。リョーマのある一面のみを見てリョーマに好意を寄せている連中ならば、千石の敵ではないのだが、リョーマが全てをさらけ出してしまった場合、千石の優位は終わりを告げるのだ。つまり、彼の一番近くにいるために、自分だけが知る唯一が欲しかった。その願いは今をもって淡く崩れ去ったのだが。

「い、今…何が起こったんだ…?」

 静寂が包む空間の中でポツリと誰かが言葉を漏らす。それほどまでに理解しがたい出来事が彼らに襲いかかったのだから仕方のないことだろうと千石は感じていた。
 田仁志に胸ぐらを掴まれたリョーマを救うべく、今にもコートの中へと飛び降りそうな青学陣だったのだが、それよりも早く動いたのは田仁志によって宙吊りにされているリョーマ自身だった。彼は自分を掴みあげている田仁志の手をギリっと捻り上げると、ストンと難なくその腕から解放し、そうしてブンっと思いっきり相手の身体を転がしたのである。その流れるような動きに唖然としたのは轟音を立てて地面を転がった田仁志だけではない。先ほどまで喚いていた周囲の観客たち、それにいきがっていた比嘉中の部員たちも、リョーマのことを心配していた青学の部員たちも今では呆然とするほかなかった。

「コシマエに手ェ出そうとしたんや。覚悟しとれよ」
「リョーマくんに喧嘩売るなんて、本当大したもんだよね〜」
「…ふん。後で吠え面かいても知らねぇ」

 ふと、それぞれ離れた所でいくつかの声が上がる。四天宝寺の部員たちと共に視察に来ていた金太郎がそれこそ猛獣のようにギラついた眼差しで比嘉中を見つめている。普段の無邪気な彼からは想像もつかないほど攻撃的な雰囲気に、同じ四天宝寺の部員たちもゴクリと唾を飲み込むしかなかった。山吹中の一同と共に青学のベンチの後ろ側に腰掛けていた千石が、感心したようなため息混じりで陽気に呟く。しかし、どこか同情めいたその眼差しには、ドロリと黒い悍ましい感情が渦巻いていた。少し離れた所で木にもたれ掛かったまま試合を傍観していた亜久津は小さく舌打ちする。彼の言葉は誰にも届かなかったようだが、そこにはとうとう正体を見せてしまったリョーマに対し多大なる不満が詰め込まれていた。
 無言のまま地面に寝転がる田仁志は、驚いてリョーマを見上げる。自分を冷たく見下ろすリョーマの瞳には、それこそ彼が今までに感じたことのないほど殺気が込められており、ゾクリと身が凍るような気分に陥った。顔色を青ざめる田仁志に気がついたリョーマは、フッと殺気を拡散させると、いつもの彼が浮かべる生意気な笑みを浮かべて右手を突き出す。

「You still have lots more to work on.(まだまだだね)」

 リョーマはそう冷たく言い捨てると、親指だけ立て付き出した右手を、グッと逆さに向けた。



人生楽しんだ者ち!
(いつも最後に笑うのはオレ)
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After word(あとがき)
リョーマくん。不良っていうかただたんに喧嘩がめっちゃ強いリョーマくん。自分からは喧嘩しないけど売られたらボコボコにする。でそんなリョーマくんは実は東京の不良たちには知らない人がいないくらい有名だったり。同様に金ちゃんは大阪で有名だったり。そうしてそんなリョーマくんのことを知ってる千石さんと亜久津。つまり金リョの千リョの亜久津リョ。今回は、オジイに対することも勿論怒っていますが、ただたんに胸ぐら掴まれたため咄嗟にやっちゃった的な話です。そのうち千石と亜久津との出会いも書きたい。
2012/05/30
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