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stardust

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Prince of Tennis
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歳上のペット(千リョ)

「ねぇ?」

 練習帰りのリョーマが近道を兼ねて路地裏を通ろうと考えていた時、ふと静まり帰った場所に男の声が木霊する。人通りの少ない場所にしては珍しいと辺りを見渡せば、暗い夜に紛れるように路地裏に座り込む男がいた。

「ちょ、アンタ…大丈夫?」

 よくよく見れば男は、ダメージの入ったジーンズに色鮮やかな模様の入った黒いTシャツというカジュアルな格好をしているが、所々泥に汚れ、ナイフで切られたような跡もあった。それがファッションだと言われれば仕方がないが、男の目につくオレンジ色の髪も乱れ、剥き出しになった顔や手に血の後があることから、何か厄介事に巻き込まれたのだということは一目瞭然だった。
 その生意気な性格に反し、意外に面倒見のよいリョーマは、少し慌てたようにして男の傍へてよる。少し汗臭いかもしれないがとテニスバッグからタオルを取り出すと、今も血が溢れている男の右手にギュッと押し付けた。

「恐くないの?」

 自分から声をかけた癖に何を言っているのか?とリョーマは訝しげな視線を男に向けた。するといくつも歳上かという印象を受けていた男は、きょとんと瞳を見開いてリョーマを見つめている。そのどこか幼い雰囲気にもしかすると自分とあまり年は離れていないのかもしれないとリョーマは感じた。
 テキパキと男の傷を処置するリョーマを、男はただ何やら驚いた様子で見つめ続ける。その男の視線に耐えられなくなったのかリョーマは小さくため息を吐いて男の瞳を覗きこんだ。

「恐くないよ」

 キッパリとそう言うリョーマに男は更に瞳を見開いた。そうして、彼は二三度瞬きを繰り返した。
 男は不思議だった。自分の怪我を手当てしてくれている少年は、結構な傷を拵えている自分を見ても全く恐くないと言い張った。男がこのような怪我を追うのは日常茶飯事だったが、こうやって恐れずに男に近づいてくる人間はあまりいない。大体は厄介事に巻き込まれたくないからと無視を極め込んだり、中途半端な同情を抱いたりと、そんなものだった。
 けれど、その少年はあまり動じることもなく、そして恐れることもなく男へと近付いて来たのだ。
 じっくりとリョーマを観察していた男は、にんまりと口許に笑みを張り付けた。そうして自分を治療するリョーマの手をガシッと握ると、突然のことに目を見開くリョーマにニッコリと笑いかける。
 どうやら面白いものを見つけたようだ、と楽観的なことを考え男は、驚いた様子のリョーマに声をかけた。

「ねぇ?オレを君のペットにしてくれない?」



のペット
(オレを飼ってよ、ご主人様)
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After word(あとがき)
メモログ。唐突千リョ。不良千石さんがリョーマくんのペットになる話どっかに落ちてませんかね?この後、越前宅にオレンジ色の犬が住み着きます。
2012/05/30
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