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stardust

http://nanos.jp/xxvorxx/ | Photo by Sky Ruins
Prince of Tennis
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絶対的極秘事項(青学リョ)

「へへ!オレいっちばん!」
「あ!英二先輩ずりぃー!」
「コラ!英二!桃!はしゃぐんじゃない!」

 バシャーンと!大きな水しぶきを上げて巨大な室内風呂に飛び込んだ菊丸と桃城を、ガラリと扉を開いて入ってきた大石が一喝する。その後ろからはぞろぞろと青学の男子テニス部レギュラー陣が姿を表し、思い思いに入浴を楽しんでいた。
 その日、試合前の調整を兼ね少し根の張る合宿場へと合宿を訪れた青学レギュラー陣は、その日の練習の疲れを取るために合宿場自慢の巨大な温泉へと足を運んだ。何でも氷帝の部長である跡部の傘下が経営しているらしく、その合宿場はまるでホテルのような美しさと完美さを持ち合わせていた。始めてそこに足を踏み入れた青学レギュラー陣は、ひくひくと口元が震えていたのだが、時間が経てばそれにも慣れ、今では普段味わえないゴージャスさに羽根を伸ばしている。そうして、夕食後、レギュラー陣全員で温泉へと来てみれば、そこは合宿場の自慢というに相応しいほどの素晴らしい広さと設備を兼ね揃えたスパだった。

「ふぅ…」

 かけ湯を施した後、簡単に身体を洗ったリョーマは広々とした温泉へと足を進めた。壁の一面がガラス張りになったその広い温泉は、夜景が一望できとても心地が良い。外にはどうやら露天風呂も設置され、菊丸達が喜んでサウナやらジャグジーやらを楽しんでいる所から、素晴らしい設備であると理解できる。根っからの風呂好き、温泉好きなリョーマは実はこの合宿場に来た時、情報通の乾から温泉があると聞いた時からワクワクと心待ちにしていた。常にいつものポーカーフェイスを浮かべているが、少しばかり浮き足立つその姿をどれだけ青学レギュラー陣が微笑ましく思ったかなど彼は知らない。そうして、ようやっと念願叶いなかなか来る機会がない、素晴らしい温泉に身体を沈めた時、リョーマは小さく息を吐き出して、ぐぐぐと身体を伸ばした。

「ここの合宿場は温泉街にあるということもあって、露天風呂まで完備しているからな。疲れた身体には助かるよ」
「そうだね。こんなに広い風呂にはなかなか入れないしね」

 温泉独特のむき出しになった岩肌にもたれ掛かり、湯気の中でも曇り一つない窓ガラスから夜景を見る。こんな幸せなことがあってもいいかと夢見心地になっていたリョーマの隣では風呂の中でも眼鏡をかけたままの乾が向かい側に腰掛ける不二と手塚に話しかけていた。三人ともとても満足しているようで、その表情や雰囲気はいつもよりも柔らかい。そうして、いつの間にやら様々な風呂を楽しんでいた菊丸や桃城、振り回され若干疲れた表情を浮かべる大石や、先にシャワーを浴びていた海堂と河村までもがその広々とした温泉へと足を踏み入れ、ふぅっとその日の疲れを取る。その場にはまったりとした穏やかな時間が流れていた。

「オチビ、気持ちよさそうだにゃ〜!」

 ふと、リョーマの隣に泳いできた菊丸が、ぽぉっと惚けるリョーマの顔を覗き込みニッカリと微笑んだ。そんな菊丸の言葉に誰もがリョーマへと視線をむける。そこには、口元まで温泉に浸かったリョーマが至福の時間を噛み締めるかのように、瞳を細めて柔らかな笑みを浮かべていた。

「気持ちいいです」

 顔スレスレまで身体を沈めて目を細めるリョーマは普段の生意気な姿からは想像できないほど、とても幸せそうな雰囲気でそう呟く。どことなく舌足らずなその言葉は「ふにゃー」と縁側で伸びをする猫のように愛らしかった。それに、浮かべる表情も普段よりもとても可愛らしい。少し赤らんだ頬。潤んだ瞳はうっとりと夢見心地で、それはとても可憐で無防備で、そして何よりも妖美だった。
 ゴクリと誰かが喉を鳴らす音が木霊する。普段からリョーマに言い寄る他校生を撃退しリョーマを守ってきた青学レギュラー陣でもそのリョーマの姿は、とても魅力的なのだ。この姿をリョーマにあからさまな邪な感情を抱いている他校生が見たとすれば、それは酷いことになるだろう。一瞬にしてその思考まで辿り着いた青学レギュラー陣は、一人大好きな温泉に浸かり至福のときを過ごしているリョーマを視界にいれながら、固く決意を交わした。

(こんなオチビ、他の学校の奴らなんかに見せられにゃい!)
(絶対に見せるわけにはいかねぇな)
(ふしゅ〜…面倒臭いことになるぜ)
(襲われること間違いなしだな)
(合同合宿の際は各校で風呂に入るように調整しなければ)
(うぅ…、胃が痛くなってきたよ…)
(越前ってお風呂好きだったんだな〜)
(注意するべきは幸村と跡部、それに四天宝寺の白石かな?)



絶対的極事項
(こんなの誰にも教えられない!)
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After word(あとがき)
メモログ。お風呂好きで、お風呂に入るとふにゃーんと無防備になるリョーマくん萌。そんなリョーマくんを守らないと!と決意する青学家族。そのうち他校登場編も書きます。
2012/05/28
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