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stardust

http://nanos.jp/xxvorxx/ | Photo by Sky Ruins
Prince of Tennis
Short story
あの子は僕の王子様(壇リョ)

「え、越前くん!」

 ザワザワと騒ぐ集団の中心にいるリョーマの名前を大きな声が呼んだ。数時間前に全国優勝を納めた青学の立役者となったリョーマは、参加校の大半が参加する祝勝会でも引っ張りだこになっている。青学の先輩たちからは頭を撫でられ、氷帝の跡部や忍足、立海の仁王たちからはセクハラ紛いな行為を受け、自分を巡ってなぜか山吹の千石と四天宝寺の白石が言い争い、決勝で対戦した幸村はあの時の暗い感情をどこへやったのやら満面の笑みを浮かべリョーマに料理を取り分けたりと甲斐甲斐しく世話をしていた。そんな大人数の中心でもみくちゃにされたリョーマは疲れた様子で顔をしかめる。そこに丁度彼の名前を呼ぶ少年が表れ転機は訪れたのだ。

「壇…?」
「えっと…、あ、あの!」

 リョーマが顔を上げれば、そこにいたのは山吹中一年の壇だった。彼はずり下がるバンダナにアワアワと対応しつつどこか緊張した面持ちでリョーマを見つめている。あまりに緊迫した表情に不思議に思ったのか、壇へと近付こうとしたリョーマだったが、そんな彼の手をガシッと掴んだ幸村が、行かせはしまいと自分のほうへと引っ張った。

「君は山吹中の子だね?」
「え?」
「ちょっと幸村さん」

 リョーマの手を掴んだままにっこりと魔王のような笑みを浮かべて話しかけてくる幸村に、壇は顔を青ざめながら間抜けな声をあげた。びくびくと怯える壇に高圧的な態度で接する幸村を見たリョーマは、文句ありげな表情で彼を睨み付ける。しかし、そんなリョーマの視線に気づくこともなく、幸村はうっすらと瞳を細めて、口を開いた。

「僕のボウヤに話しかけるなんて烏滸がましいんじゃないかい?彼は君のような何の力もない子が話しかけていいような人間ではないよ」
「っ…」

 辛辣な言葉を吐き出して下げずんだ眼差しを向ける幸村に壇はひゅっと息を飲み込んだ。確かに彼の言う通りだと壇自身理解していた。本日青学を優勝へと導いたリョーマは、壇から見ても特別な人間だった。あの日、都大会で始めて彼と会った日。自身と同じくらいの体格であの亜久津に対峙するリョーマを見た時、壇の心は彼に奪われていた。目の前にどれだけ強靭の力が立ちはだかっても臆することなく立ち向かうリョーマに、壇は勇気をもらったのだ。それから、ずっとリョーマを見てきた。彼は、その美しい瞳を常に輝かせ、強き者達を倒していく。そうして頂点へと登り詰めたリョーマは今や壇には手の届かない存在となった。
 ショボンと肩を落としてしまった壇を見て、幸村はふふんと鼻で笑う。しかし、それを一掃する者がいた。

「アンタ、何様?オレはアンタのものでもないし、友達くらい自分で作れるけど」
「ボウヤ……」
「越前くん…」

 パシりと自分の腕を掴む幸村の手を払ったリョーマは、とても不機嫌そうな表情で彼を睨み付けた。そうして、くるりと背中を向けると目を剥いている壇のほうへとスタスタ足を向ける。そうして彼のすぐ目の前に立つと、未だ不安げに揺れる彼の瞳を覗きこんで首を傾げた。

「なに?」

 壇は胸がジーンと熱くなるのを感じる。彼はこんな何の力もない自分を『友達』だと呼んでくれた。どれだけ手の届かない高みにいたってリョーマは、必死に手を伸ばす壇に容易に笑いかけてくれるのだ。
 彼は喜びのあまり込み上げてきた涙を、ぐいっと拭う。そして、目の前で首を傾げる大切な友達に視線を向けるとニコリと幸せそうな笑みを浮かべた。

「優勝、おめでとうです!」
「ありがと」

 彼はどんな時だって、自分の王子様なのだ。



あの子はの王子様
(いつもキラキラ輝いて)
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After word(あとがき)
壇リョ友情ものと大人げない幸村さん。壇くんは腹黒で精神的にも強いと勝手に思っているので、こんなのはないかなww
2012/05/28
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