*捏造、ジャンル、CPごちゃまぜ注意 log
(オリジナル)
ムカつくくらい空が高い。私は行き場のない苛立ちをぶつけるように土手に生えていたシロツメ草を毟った。青臭い匂いが広がって、爪の隙間に千切れた茎の繊維が入り込んで更に私を気分を落とした。
今年で二年目の黒い色のセーラー服はひたすら重く欝陶しい色で、赤いタイが媚びてるみたいで嫌いだ。大体なんで女子はセーラーなのに男子はちょっとお洒落なブレザーなの。意味わかんない。私は本当は隣の学校の紺色のブレザーが着たかった。なにもかもが絶望だ、春は嫌い。
緩く吹いた風が私の黒い髪をさらっていった。ホントは明るい茶色に染めたいのに。髪色が重いから私の気分も持ち上がらないんだ。私はとにかく全てを他人のせいにしてしまいたかった。
「なーにイラついてんの」
「別に」
かなえは同じ黒髪なのにそれを男の子より短くしているせいかとても軽く見えた。羨ましいけど、私はかなえみたいになりたいんじゃない。
「あ、岡本くんだ」
「嘘」
「嘘ついてどーするよ。相変わらずお洒落だよねぇ」
岡本くんはいつもヘッドホンをしていて、ごついそれからは英語の歌詞や男の人の温い絶叫が聞こえる。いつもギターを背負っている。別に特別カッコイイ訳じゃなくて、眠たそうな目をしている。でも髪型はお洒落だ、長めの襟足はけだるいイメージを助長させてる。あまり口数は多くない。授業中はぼんやりしている。のに成績はそこそこ良い。そんな誰でも知っている部分の他に私は皆が知らない所を一つ知っている。
ノートの端に詩を書いている。彼のオリジナルか、はたまた彼のお気に入りの曲の歌詞かは知らない。それは時々私の頭をぶち抜く。凝視しているのに気付いているのかいないのか、彼は構わず続きを書く。だから私は彼が何となく気になっている。
「でもさ、なんか近寄りにくい」
「なんで」
「聖人みたいじゃない?」
「どこが」
「女とか興味なさそう。むしろ自ら断ってますみたいな」
「何そのイメージ?何時の時代だよ」
かなえは腹を抱えてげらげら笑った。笑い方が少し下品でも私はかなえが好きだ。
「かなえ、うっさい」
また毟ったシロツメ草を投げ付けたら、岡本くんがこっちを向いた気がした。
うん、聖人っぽい。モーゼとかそんな感じ。長い前髪の下の目はやはり眠たそうだった。