岐路
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「好き、だ」
「…は?」
唐突にそんなことを言われても、混乱するだけで。
「リューナが好きなんだ、愛してる。」
ポッポタイムに私と遊星以外誰もいない昼下がり。
私は告白された。 遊星に。
あまりにも唐突すぎて、私は信じられない気持ちで彼と向き合う。しかし遊星の表情は崩れず、真剣そのものだった。
「いきなりどうしたの…?」
「いきなりじゃない、リューナと会って数日間、ずっとこの気持ちを抱えてきたんだ」
それでも展開的にいきなりであることに変わりはない。
「…」
「出来たら、今すぐ返事が欲しいんだ」
じ、と私を見つめる目は一瞬たりとも反らされない。どうやら私ももう、引き下がれないらしい。
「私は、貴方はアキのことが好きなんだと思っていたわ」
「アキは大切な仲間だが、俺が異性として好きなのは、お前なんだ、リューナ」
「アキは貴方のことが好きなんだと思うけど」
「…その気持ちに、俺は応えられない。」「…」
沈黙が場を支配する。
「…この気持ちは本物だ。…リューナ」
両肩を掴まれ、びくっと体が震える。
「WRGPのこともあるし、中々恋人らしいこともしてやれないと思う。…だが、俺と一緒にいて欲しいんだ。ずっと。」
まっすぐに見つめられ、視線を外せなくなる。
動揺はするものの、彼の気持ちに応えなければ、と私は思考を自分に向けた。
「……遊星」
「なん、だ」
しばらくの沈黙のあと、私は手を彼のそれに重ねる。
「私で、いいのね」
「! ああ…それにお前でいいんじゃない、リューナがいいんだ」
「後悔しないのね?」
「するはずがない」
「浮気したら許さないわよ」
「分かっている」
矢継ぎ早にやりとりをすると、互いにまた真剣に向き合う。
「…こういうのはよく分からないのだけど、これからよろしく、でいいのかしら?」
「いい、と思う。俺の方からもよろしくな、リューナ」
「上手くいったみたいだな」
「…本当に良かったのか?」
「良いに決まってるでしょ?
好きな人と好きな人がくっついたのよ?」
「…アキさ「あれー、皆何してるのー?」」
「「「「「「!?」」」」」」
「こら、龍亞、大きな声出したら迷惑じゃない!」
「えー、だって気になったんだもん」
ギィ、という音を立てて扉を開く。そこには聞き耳を立てていたらしい、クロウ、ジャック、ブルーノ、アキ、そして偶然あそびに来た龍亞と龍可がそろっていた。
「…皆、いたの?」
当然、覗かれていたと知ったら、詰問しに行くわよね?
いつもは(いい意味で)騒がしい龍亞に、今日は心の底からグッジョブと言わざるを得ない。
「え、あ、その」
「ち、違うぞ、俺はその、たまたまだな」
「落ち着いて落ち着いて暴力反対暴力反対」
口々に言い訳する男どもを尻目に、アキに視線を向ける。一瞬気まずそうにそっぽを向かれたが、すぐに私と視線が合った。
「アキ、良いのね?」
「ふたりが両思いなら仕方ないじゃない。」
それに、とアキは続ける。
「私、諦めないわよ?」
そう言うと、彼女は不敵に笑う。
それでも次の瞬間には、さっぱりとした笑顔を見せる。
「それに諦めないのは遊星だけじゃないしね」
「…何それ、私何かしたかしら」
「何もしてないわ、怖がらないで」
思い切り警戒を強める私をなだめるようにアキは私の肩を撫でてくる。手つきが少し怪しい気がしたのは気のせいだろうか。
「…さて、男性諸君」
逃げようとしていたのを気配で察知する。遊星が逃げられないように玄関の前に立っていてくれたのがよかったようだ。
「どこに行くのかしら?」
デッキから、≪氷結界の龍ブリューナク≫のカードを手にする。だってどの場面にせよ「覗かれる」っていうのは大変に不愉快だったから。
サイコデュエリストはこういう時便利だと思ってしまうのが、私の悪いくせだと思ってしまう。
きょとんとしている双子をよそに、大の大人が3人、逃げるように隠れるように家に入って行ったのが、たまらなく、滑稽だった。
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アキ→遊星⇔リューナだけど、アキからの矢印は遊星は気付いていない(リューナの話で知った)という後だし設定
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