10 | ナノ
「ほほう…」
地を這うような低い声が聞こえたと同時、ガタリと音を立てて仁王が立ち上がり、丸井を見下ろした。いつも鋭い三白眼はさらに剣呑になっている。ぶっちゃけ怖い。
「ケンカ売っとるんかブンちゃん…?」
「仁王こそ、そこまで言ってタダで済むと思うなよぃ?」
丸井も立ち上がって両者睨み合い、完全にケンカの態勢である。ちょっと待てよ、なにもかも桁外れのこいつらが暴れたときの被害ってどんくらい?窓ガラス数枚で済むんですか誰か止めろよ怖いじゃん!
「準備はええかブンちゃん?」
「いつでもこいよ!」
「行くぜよ…」
思わず廊下に逃げ出した。周りのやつらも似たような反応である。そしてほかのクラスも何事かと廊下に出てきた。よっしゃ、真田来た!鉄拳でもなんでもいいから止めてくれ!
「「第7回・どちらがパートナーを愛してるか対決!!」」
「…は?」
え、なんだろう幻聴かな。せめて聞き間違いだと信じたい。
だけど教室の中では柳生は眼鏡を外す前に一度直してから外す癖があるだとかジャッカルの作るワカメのみそ汁は地味にうまいだとか、なんでお前らそんなこと知ってんだよというような個人情報の応酬である。むしろ惚気だ。聞いてるこっちが恥ずかしい。ああもうほんと、さっきと違う意味で誰か止めてくれ。
「あいつらは…!」
やばい真田に後光がさして見える。あんな中に突っ込むなんて勇者以外の何者でもない。
「いつもいつも…!それはせめて部室でやれと何度も言っているであろう!!」
え、何この争いいつもなの。
そしてついに見てしまった
(奴らにとっての日常茶飯事)(なにそれテニス部恐すぎる)