02 | ナノ ×
「なーなー幸村知ってる?」
「なあに?」
いつも穏やかな級友を見ていて、唐突に思い出したのは正直信じられないような彼のチームメイトに関しての噂だ。だから、馬鹿馬鹿しい、と笑って貰おうかな、くらいの気持ちでその噂を口にしてしまった。
「なんかさぁ、真田って許婚がいるらしいぜ?女子が話してたんだけど、女子ってそういう話好きだよなぁ」
「へぇ、そうなんだ。それはおもしろい話を聞いたな」
「だろ?真田に許婚って、ありえねー!って感じだけど言われてみればすげーいそう」
「ふふ、確かにね」
相変わらずの笑顔で相槌を打った級友は、自然な動作で席を立った。「あれ、どっか行くの?」と聞いた俺に、彼は「ちょっとA組に」と笑った。
「A組?でももうチャイムなるよ?」
「大丈夫。すぐ済むから」
にこ、と深まった笑みにしかしなぜか恐怖を覚えた俺は、つねに笑顔を浮かべていることとつねに穏やかであることはイコールではないのだと、初めて知りました。
妙な噂を聞きました
(うん、なんか…)(ごめん、真田)
110225~110424