鳳と宍戸 | ナノ
お礼小説 // 鳳と宍戸
不思議系なお話です。フィーリングで読んでください。
ポケットが唐突に重くなったように感じて手を突っ込むと、コツリと指先に何かが当たった。
「ん?」
取り出して見れば入れた覚えのない、透き通った歪な形の石。日にかざせば、屈折された光が目に眩しい。
「…何やってんだ?長太郎」
「え、いや、この石が」
「石?どれ?」
「え?」
見えませんか?とその石を彼に見せても、ふるふると頭を横に振られた。
首を傾げつつ再び日にかざしてみても、その石は消えない。ひどく、まぶしい。
「おい」
「なんですか?」
「それ、貸してみろ」
「え、でも」
「いいから。なんか気になる」
ほら、とてのひらを出されて、そこに恐る恐るその石をのせる。すると彼は、少し驚いたような顔をしたあと、やんわりとその表情を微笑みに歪ませた。
「あぁ…、なるほど」
「え、わかったんですか?」
彼の大切な物なのだろうか?この不思議な石の正体、それも気になる。でも、それよりも、
見間違えでなければ、ひどく幸せそうなその笑みの意味の方が。
「長太郎」
「はい」
「お前の幸せは?」
「俺の、幸せ?」
キラリ、光が反射した。
「俺の幸せは、貴方の幸せです」
「そうか」
目をまぶしそうに細めて、彼はポケットから取り出した何かを、ぽとり、俺の手に落とした。
「俺の幸せも、お前の幸せだ」
crystalline
110211~110225