カストルとラブラドール | ナノ
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 庭園を歩いていると、何かに足をとられて思わずよろけた。


「おっと、」


 足元を見るとくるくると花の蔦が巻きついていて、彼だからこそできる引き止め方に犯人を思い浮かべて苦笑する。


「ラブラドール」

「だってカストルがおいしそうなもの持ってるんだもの」


 それこそ花のような笑みに逆らう理由はない。くすくすと揺れる草花に導かれるように、東屋に足を進めた。







「ありがとう、カストル」

「お好きなだけどうぞ」


 うれしそうに笑いながらお茶を淹れたラブラドールは、こちらがカップに口をつけるのを待って、カストルが買ってきたお菓子に手をのばした。細められた目尻を、柔らかな髪が軽く覆う。


「で、どうかしましたか?」

「え?」

「本題があるんでしょう?」

「…はは、ばれちゃった」


 今度は照れたように笑って、最後のひとくちを食べる。彼は本当に笑顔の種類が豊富だ。ふわり、ふわりと変化してゆく笑みは、季節によってゆっくりと姿を変える、彼が愛する草花を連想させた。


「テイトくんね、」

「はい」


 優しい色のお茶が入ったカップを持ったままラブラドールが視線を移した先には、子どもたちて一緒になって遊んでいるテイト=クラインの姿。喪服を纏いながら、それでも笑顔を浮かべる姿を見ると、とても安心する。


「そっくりだなぁ、って思って」

「え?」

「頑固で、なんでもひとりでやろうとして、目が離せない。誰かさんに、そっくりだなって」


 そう思わない?と、妙に含みのある表情を浮かべる彼に、残念ながら勝てた試しがない。フラウも自分も、肝心なところで彼には頭が上がらないのだ。


「と、いうことは、この変に辛いお茶は…?」

「おしおき」


 にこり、裏がなさそうな満面の笑みで、言っていることはきつい。つまり、多少なりとも仕事で無理をしていたことは、気づかれていたということか。


「それね、疲れている人だけ辛く感じるお茶なんだ」

「そうですか…」


 言い逃れはできない、そう悟って、がくりとうなだれた。



stalemate!





昴流さんへ