08 | ナノ
(へえ…意外。)
最近見られるようになったその意外な光景とは、3年の乾と2年の海堂のダブルスだった。本来は二人ともシングルスプレーヤーである上に、周りから一歩引いたような位置に立つ乾と、自ら一匹狼になる海堂はそろって人と群れるということを厭いそうなイメージがあったから尚更だった。
けれど、何だかんだであの二人のダブルスもなかなかのコンビだ。海堂を好きにさせながらも乾が絶対的主導権を握る、という形のダブルスは、我が校のゴールデンペアからより一層人間味を削った感じ、という印象だ。信頼はしているのだろうけど、それはどちらかというと理屈に基づいたビジネスライクな関係で。
「おつかれ、海堂。」
「……ッス」
だからこそ、あのスキンシップが異彩を放つのか。海堂の頭に手をやる乾と、抵抗もせずに受け入れる海堂。二人の性格を考えればスキンシップは極端に嫌いそうな感じだけど、実はそうでもないのだろうか。
「海堂、お疲れ様〜」
ものは試しとすれ違い様に肩に手を置こうとすれば、すいと避けられる。あまつさえ、一瞬の鋭い視線をいただいた。
「……はは、」
見せつけられた気分
(はいはい、悪かったよ、ビジネスライクなんて言って。)
120325~120525