なにいろの花束 | ナノ
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ぬくもりに名前をつける

 酔っぱらってしまったなあ、と分厚いくちびるが言った。朗々としたひくい声は、ひとこと話すごとにひりひりと響くようで、それがひどく心地よかった。あっけらかんとそう言い放ったその人――フェルグス・マックロイはそのまま人のベッドにごろりと寝転がって、ちらりと俺の方を見た。下手な嘘だ、と苦笑する。ケルトの大英雄、酒と女を何よりも愛した豪放磊落なこの英霊が、酒に酔っているところなど見たことがない。それでもその、吐き通す気はあるが、騙しきる気はゼロの嘘はありがたく、お誘いに従ってごろりとその人の横にもぐりこんだ。
「あ〜、フェルグスあったけー」
「がっはっは、そうかそうか。どれ、さらにあたたかくしてやろう」
「ぎゃーやめろー」
 ぐ、と覆いかぶさって抱きしめてくるのを、笑いながら足をばたつかせる。口先だけの抵抗。ああ自分も嘘が下手だな、と思う。ふたりして装う気のない嘘をついて戯れている。わかることが心地よい。わかられることが心地よかった。
 骨太の体に分厚くついた筋肉は、固いけどあたたかい。もがいているうちにうずもれてしまった腕の間からぷは、と抜け出して、もぞもぞと居心地のいい場所をさがした。
「――、」
 何かを、言おうとした気がする。言った気がする。それすらも覚えていないような、戯れの言葉。それに応えるように、見えているのかどうかもわからない細い目が相好を崩して、ひりひりと響く声で、言った。
「――ああ、マスター」



叔父貴の絆5は反則。