太陽と虹 | ナノ
放物線を描く、この恋の行方を
ゆるやかに、じわじわと熱は上がっていった。太陽が、山の間から顔を出してゆっくりと真上に来るように、ふと気づいたらひどく高いところにあった。
「七松先輩!」
「おー、金吾!お前で最後だぞ!」
「すみません!」
「ではいくぞ!いけいけどんどーん!!」
ある日突然、いなくなるのだと聞いた。
白い息を吐き出しながら、この間の次屋先輩の言葉を思い出していた。
冬休みが終わると、他の委員会の六年生が委員会に出ていないことに気づいた。そうしたら、こう聞かされたのだ。
『ここは卒業式ってないからな。忍者になるのだから、目立つことは許されない。だから、何の予告もなく、ある朝起きたら六年生がいないんだ。そのために、混乱が起きないよう早めに引継ぎを済ますんだ。』
『でも七松先輩は…』
『そ。先代も先々代もそうだったんだけどさ、うちの委員会はなぜか引継ぎがぎりぎりなんだよなあ。』
ったく、困ったもんだ。
ため息をついて立ち上がる次屋先輩の、その理由がわからずに首をかしげる。なぜ困るのだろう。その分体育委員会は六年生といられる時間が長くなると言うのに。
『お前にも、すぐわかるよ。』
ぽん、と頭に手のひらを載せられたけれど、そのときの先輩の表情は、真っ白の雪に反射した光のせいでよくわからなかった。
「「「「ありがとうございました!」」」」
すぐわかる、のすぐがきたのは、妙に空気が透った日の朝だった。
「昨日の委員会後、引継ぎを受けた。体育委員会委員長代理、平滝夜叉丸だ。」
そういわれたグラウンドのどこを探しても、狼の尾のような髪の毛どころか、千歳緑の装束すら見当たらなかった。
まるで、性質の悪い冗談のようだった。
昨日まで、いつものように近くで笑って、お決まりの科白を叫んでいたと言うのに。
今は、どこにも姿が見えないなんて。
「なぁ、困ったもんだろう?」
他の委員会みたいに、卒業が近いことを示してくれれば、信じられないなんて思わずに済むのに。
どうしたら、いいんでしょうか。
誰にともなく言った言葉は、空気を白くするだけで終わった。
じりじりと、じりじりと気づかないうちに高いところまで上がった熱は、どうしたらいいというの。
この熱は、もう上に向かうことはできない。どうあがいたって、ここがてっぺんだ。
あとはもう、日が沈むように、落ちていくだけ。
(落ちていった、その先に、)
何があるのだろうか。落ちたら、そこで、
その熱を、埋めることができるのだろうか。
(――――わからない)
放物線を描く、この恋の行方を