ぴこん、とスマホの上部に現れた通知をタップして、メッセージ画面を開く。ぽこぽこと続いて画像が送られてきた。上鳴くんはたまにこうして撮った写真をまとめて送ってくれる時がある。意外とマメだよね。
高校生にしては早寝なクラスメートが多い中で、日付の変わる時間帯まで起きているのも数人なので、だいたいこの時間の通知は三奈か上鳴くん、瀬呂くんか響香だ。A組比較的遅寝メンバー。あと心操くん。
「イ゙っ」
ありがとうのスタンプを送って、寝転んだまま写真を眺めていると、手からポロッとスマホがこぼれ落ちた。この瞬間って死を覚悟するよね。ガツン、と垂直に鼻の付け根の近くに当たってまあまあ痛い。クソ。最悪。
イ〜! となりながら胸元に落ちたスマホを拾い上げると、顔に付けた化粧水やら乳液やらがべったりと付着した画面に、『通話中』の文字が。うわー、やったわ。
『お、どしたー?』
「いやまちがえた」
『ウケる』
「顔面にスマホ落として泣いてる」
『可哀想〜……でも俺的にはラッキーだな!』
「え、なんで」
『え、だっておまえと電話出来たし?』
「えー」
口説き文句じゃん。
『えー、ってなんだよー。喜べし』
「いやうそうそ、私もちょっと面白いよ」
『ちょっとかよ〜!』
音声だけだけど、画面の向こうの上鳴くんの顔が想像出来るの声色にちょっと笑った。ごろん、とうつ伏せになって肘を着く。胸元にクッションを抱き込んで、ゲーム機を引き寄せれば夜更かし体勢抜群だ。ゲームしよ。
「ゲームするからこのまま寝落ち通話しよ」
『あり。っつかさ、明日の課題終わった?』
「かなり前に」
『マジかよ!』
「逆に終わってないのやばない?」
『いや、ガチでわかんねェ』
「ばかだ……」
『つかなんのゲームしてんの?』
「カップの妖精がイタズラして悪魔に魂取られるやつ」
『どんなゲームだよ草』
結構っていうかめちゃくちゃ難しいんだよね。今度上鳴くんも誘って……や、やっぱ爆豪くんだな。爆豪くんゲームも上手いし。
「どれわかんないの?」
『あー……問7以降全部?』
「え、えぐくない?」
『かっちゃん寝ちゃったからさ〜』
「爆豪くんかわいそ……」
切島くん、瀬呂くんと上鳴くんで爆豪くんの部屋によく入り浸ってるのは知ってる。たまにヘルプで入るもん。雄英受かるくらいには勉強出来るはずなのに、雄英のレベルが高すぎるせいで理解の追いつかない上鳴くんにキレ散らかす爆豪くんはめちゃくちゃ面白い。
「も〜、しゃあなし教えてあげる」
『マジ? 神かよ』
「ビデオ通話に切り替えて〜」
『今度なんか奢るわ!』
「游玄亭頼む」
『俺破産しちゃう』
人の金で食う高い肉が最高ってコト。軽口を叩きながらもビデオ通話に切り替えると、上鳴くんのドアップがキメ顔すんな。それから、消しゴムの跡があるばかりで後半ほぼまっさらなレジュメが写った。ゲロ、ガチで更地じゃん。
結局その日は2時過ぎまでかかって、翌日ちょっと寝不足だった。