派閥とフルーチェ




「バケツでフルーチェ作りたい」
「……一応聞いといてやる。誰が食うンだよ」
「爆豪くん」
「ざけんな死ねボケカス女」
「カスはだめ!」
「死ねとボケはいいのね」
「まあ……生きるし……」

 共有スペースでだらだら動画をを見ていたら、ハッと閃いた。ぼろかすに言われる私に上鳴くんがゲラゲラ笑って切島くんが爆豪くんを宥めて瀬呂くんにツッコミをいれられる。そういえばこのメンツ、どこかの界隈で派閥と呼ばれているらしいよ。どこでだよ。

「作るかあ〜」
「いーじゃんいーじゃん! 楽しそうだし」
「でもそんなフルーチェ大量にあるか?」
「こんなこともあろうかと……」

 切島くんの疑問に答えて、すっ、と取り出したるはなんかいっぱいあるフルーチェいちご。お祭り男の上鳴くんは多分なんも考えずに同意してくれてる。やっぱね、持つべきものはやる気元気上鳴電気なんよ。

「なんでこんな時ばっか用意いいの、おまえ」
「絶対俺は手伝わねェからな」
「へっへ〜ん、後でフルーチェ食べさせてくださいって水溜まりの上で土下座してきても知らないからね」
「誰がするか脳ミソババロア女ァ!」
「フルーチェだってば」

 ということで、バケツフルーチェ制作開始。



「混ぜるの疲れた〜」
「三混ぜもしてないじゃん」
「か弱い女の子なので……」
「自分で言うなよ」
「力仕事なら任せろ!」
「やーんさいこ〜。やっぱ切島くんしか勝たん」

 切島くんにバケツをパスして、ソファへ腰掛ける。うん、なんかフルーチェ臭やばい。吐きそうになってきた。

「気持ち悪くなってきた」
「まだ食ってないのにィ!?」
「頭いいハズなのに無謀なんだよなぁ……」

 ぐったりしてきたりいろいろしたけれど、切島くんの尽力により無事完成だ。

「わーい」
「フルーチェ久々に食うかも」
「俺食ったことねェや」
「あ、なんだかんだ美味いわ」

 お椀に注いで実食。懐かしい味がする。言うてそんなにフルーチェ食べた経験があるわけじゃないけどさ。プルプルした食感と口に優しい甘さで、夏にもってこいの味だ。今は冬だけど。

「……寒くなってきた」
「わかる、なんか俺も」
「ほーか?」

 なに? この謎の寒さは。上鳴くんと私だけが震えてる。あと、やっぱこんなに食べられないわ。爆豪くんとかひと口も食べてないし。

「はい、爆豪くん」
「いらねェ」
「あーんしてあげるから」
「もっといらね……ンガッ! ッ、……てめェ!」
「口に物入ってる時喋らないあたり爆豪って育ちいいよなー」
「な、それな」

 爆豪くんの口にフルーチェ多めを突っ込んだら飲み込んでから怒られた。うける。

「んー……もういらなくなってきたね」
「っから言っただろがボケ!」
「ま、ま、ま、安心して。こんなこともあろうかと」
「ゲ、本気でやってんじゃん」
「ウケる、馬鹿だー」
「助っ人を呼んでおきました」

 ちゃんとクラスのグループラインに流していたのだ。っぱ天才よ。呆れた響香とケラケラ笑う三奈に続いて女子が、それから男子も続々降りてくる。

「みんなおたべ、いっぱいあるからね」
「残飯処理だけどな」
「いやな言い方やめーい」
「喉仏にチョップやめい」

 瀬呂くんの喉仏に緩くチョップして、フルーチェパーティ第二幕の開催だ。百が入れてくれたあったかい紅茶を飲みながら、爆豪くんの隣でブランケットにくるまった。寒い。

「あー、また妙な思い付きだけどなんだかんだで楽しかったな」
「でしょ? 次はバケツプリンね」
「いや、懲りろよ」
「この女が学習するわけねェだろ」
「そうだぞー」
「威張ることじゃないからね」

 フルーチェ完食後の謎の寒気に震えたので、次はお好み焼きパーティだな、とひとり心に決めた。



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