オリジンと野球拳しないと出られない部屋



※下ネタ多め


『野球拳10回勝負しなくちゃ出られない部屋』

「よっしゃやるか〜!」
「エッ!?!?」
「ンでノリ気なんだクソ痴女がァ!!」
「野球拳ってなんだ」

 かくかくしかじかで閉じ込められた。上から私、緑谷くん、爆豪くん、轟くんだ。脱出条件は野球拳らしい。轟くんが野球拳を知らないのは天然かつ育ちの差だよね? 世代の差じゃないよね? 爆豪くん達は分かってるようだし育ちの環境の差だと信じたい。ジェネギャだと心が折れて銃フェラしそうになるから。

「だって部屋から出るなら野球拳しなきゃって書いてるし」
「だァらって何で素直にする必要があンだ馬鹿かてめェ! 馬鹿だったな」
「ひとりで納得しないでよ〜」

 馬鹿ではない。この場にいるの、偏差値バカ高雄英のクラス内でも成績上位陣なんだからね。めちゃくちゃ突っかかってくる爆豪くんに頬を膨らませてねえっ、て轟くんに振ると、そうだな、と頷かれた。絶対なんも理解してない。

「いやでも僕ら三人だけならともかくアッごめんかっちゃん例に出しただけだから睨まないで男三人での野球拳は地獄だと僕も思ってるよ! でもその緩名さん、女の子……もいる中でその……や、ややや野球拳はちょっと問題があるというかヒーローとして人としてマズいと思、うんだけど……」
「でも四人でやれって書いてるし」
「アッそっ、そうだね……」
「論破されてンなクソナード」

 四人で野球拳が部屋からの脱出条件だ。この幼なじみ達は仲が良いんだか悪いんだか、いや悪いんだけど二人して断固拒否してくるが、ジャンケンして脱ぐくらい、ねえ。子どもじゃないんだし。子どもだけど。実際野球拳ってしたことないけど、まあ脱ぐくらいなら……減らないよね。うん、減らない減らない。顔を赤くしたり青くしたり忙しい緑谷くんと、いつにも増してイラついて情緒不安定なキツツキレベルで舌打ちを繰り返す爆豪くんを尻目に、なあ、と静観していた轟くんが声を上げた。

「野球拳って何すんだ?」

 沈黙。そう言えば轟くん、野球拳知らないんだったね。サクッと説明してもいいんだけど、一応視線を巡らせて残りの二人の様子を伺った。緑谷くんはあからさまにどうしよう、って焦りを顕にしているし、爆豪くんは逆に表情が分かりにくい。凪だ。スンッとしている。そんな私達の三者三様を見て、轟くんが首を傾げた。

「やばいやつなのか」
「いや、あー……」

 やばいっちゃやばいかもしれない。宴会芸、合コン芸に近い。轟くんが将来野球拳とかしてたら泣いちゃう。

「なんか〜、ジャンケンするのね、それで、負けたら脱ぐ」
「……なんでだ?」
「え、そういうルールだから」
「そういうもんなのか。……緩名やばくねぇか、それ」
「ッからさっきからそれを言ってンだよぼんやりクソ男!」
「お、悪ィ」

 ぼんやりクソ男の語感良すぎてウケる。爆豪くんってなんだかんだそこらへん気にするよね。なんか最初のイメージは常識なんてぶっ飛ばせオラ! 拳で! って感じなのかと思ってた。

「ままま、大丈夫だって。全裸にならなきゃいいんでしょ?」
「てめェが一番焦れやボケ!」
「このメンツなら焦る必要もないかなって……」

 峰田くんとかいたらちょっとはやっべってなったかもしれないけど、なんだかんだみんな童貞ピュアボーイだもん。いや実際童貞かどうかとか知らないけど。性欲に支配されそうにない、というか、そこらへんはちゃんと信用している三人だ。ヒーロー志望としても、人としても。って思ってたんだけど、三人ともなんか気まずそうに目を反らすんだよね。怒ってる?

「10回勝負でしょ? よっぽど運悪くないかぎり全裸にはならないって」

 シャツ、スカート、キャミ、靴下、ブラ、パンツ。うん、いける。キャミ太ももまでの長いやつだから、余力あるし。流石にいたいけな男子高校生に同い年の美少女の肌色見せつける程私も鬼じゃないし。よっぽど運が悪くない限り、まあ、いけるだろう。

「ッソがァ……! てめェ絶対負けンじゃねェぞ……!」
「ええ、んなこと言われましても」
「僕からも、緩名さん、絶対負けないでね」

 爆豪くん、めちゃくちゃ無茶言ってくる。そこに乗っかって緑谷くんまで、念押しのように言い聞かされた。ルール的に八百長はダメっぽい。運だから。私が脱ぐよりまだ自分達が脱ぐ方が良い、と心の中で決まったんだろう。青少年たちの意思は固い。ゲームでラスボスに挑む前のスチルみたいな覚悟を決めた顔をしている。もっとフランクに行こうよ。

「じゃいくよ〜や〜きゅう〜す〜るなら〜」
「なんだその歌」
「こういうもんなの! もー」
「悪ィ」

 轟くんからの横槍が入りつつ、よよいのよい、で拳を出した。

「あ」
「……何負けとンじゃ緩名!」
「いやしゃあないじゃん」

 私の一人負けだ。めちゃくちゃ怒鳴られた。うるさ。三人とも仲良いね〜。しゃがんでハイソを脱いでいく。

「靴下ならセーフでしょ?」
「チッ」
「……」

 轟くん、ガン見だ。恐ろしいくらいガン見されてる。え、なに、こわ。

「ああ、いや、なんかエロくねぇか」
「ひえ」
「なっ」
「轟くん!?」
「お」

 轟くんの爆弾すぎる発言に、ちょっとだけ動揺してしまった。靴下脱ぐ姿がエロいって……正直わかる。うん、わかるわ。満点。分かっちゃった! 爆豪くんなんかマジかこいつ、みたいな目で轟くんを見てる。いや、そうなるよね。素直すぎる。あと爆豪くんのスペキャ顔めちゃくちゃウケるな。

「悪ィ、つい」
「ついじゃねンだよ変態野郎……!」
「変態じゃねえ」
「二人とも落ち着いて……!」

 爆豪くんが轟くんの胸ぐらを掴むと、轟くんもムッとしていた。変態じゃないよね。オープンスケベなだけで。わりとそういうとこある。青春だな、と見守っていたら、二人の仲裁に入って纏めて怒鳴られている緑谷くんに、緩名さんも止めて……! と明後日の方向を見ながら助けを求められた。いや、どこ見てんの。ただ裸足になっただけなのに、轟くんの発言のせいでドキドキしちゃった系かな? そんな反応されるとかわいくて弄りたくなっちゃうじゃん。

「どこ見てんの?」
「いやっこれはなんというか、気にしないで……ひっ」
「ねえ、どこ見てるの?」
「ちょっ、アッ、緩名さっ、待っ」
「なにしとンじゃスケベ野郎共!」
「うるさっ」

 緑谷くんのズボンに包まれた足に、するっ、と素足を絡ませてつま先でツンツンとつつくと、異変を察知した爆豪くんにひっぺがされた。セクハラ? いや、足でつつくくらいしかしてないから全然セーフ。言うのもなんだけど、このメンバーだと爆豪くんの血管切れそうだ。アハハ。上鳴くんとか切島くんのありがたみを思い知るかもしれん。オモロ。

「さ、2回戦やろ〜」

 激おこ爆豪くんを宥めて、2回戦だ。



「ッッンでだよ! 雑魚かてめェ!」
「やば、私予知能力あるかも」
「ンな能力あるなら勝っとるだろ!」

 2回戦、3回戦と私の一人負けだ。全然全敗。アイコにすらならないストレート負け。ジャンケンクソザコナメクジすぎるな流石に。どんな勝率? 爆豪くんに正論マジレスされる。うわ〜秒で全裸なりそう。全裸で男だけの野球拳を見守る美少女の図、地獄で面白くない? アリ。

「よっと」
「少しは恥じらえボケがァ!」
「……ッ!」

 2回戦ではブラウスを脱いだから、3回戦ではスカートだ。ホックを外すと、重みでとぅるんと滑り落ちる。パサ、と足元に溜まったスカートを爪先に乗せて持ち上げた。

「はしたねぇことすんな!」
「爆豪くん今日怒鳴ってばっかだね〜」
「誰のせいだと思ってンだ……!」
「あは、私?」
「……緩名、流石になんか着てくれ」
「や、着ちゃダメなんだよ、轟くん」

 キャミソール、ワンピタイプと言っても太ももあたりまでしかないからね。健全なのかは知らないけど少年たちにはわりと刺激強いのかもしれない。嘘、絶対ヒロスの方が露出多い。男の人の露出興奮具合の基準ってわりと謎だよね〜。爆豪くんと轟くんはまだ会話をしてくれるけど、緑谷くんに至ってはこっちを見る以前に、小さくなって震えている。小動物か。っていうか私と立場、逆じゃない? ちょっとでも近付くとなぜか察知して少し怯えられる。怯えんでも。

「まあまあ、時間かけるだけ恥続くしぱっぱとやっちゃお」
「くそっ」
「緩名、寒くねえか?」
「ん、大丈夫。はいじゃーんけーん」

 ホイ、と出すと、やっと勝った。やっと。4回目にして。負けたのは緑谷くんと轟くん。チラッとだけジャンケンを見ていた緑谷くんが、ちょっとだけほっとした顔をする。自分が脱ぐ方がマシなんだろうなあ。

「お」
「緑谷くんも負け〜」
「ハハ……」
「脱ぐか」
「え、何で上から脱ぐの」
「? 順番あるのか?」
「いや……まあいいか」

 緑谷くんは私と同じように靴下を、轟くんはシャツのボタンを外して脱いでいく。うん、まあ男の子だしね。轟くんだし。別にいいか。
 気を取り直した5回戦も轟くんが負けて、そこで靴下を脱いだ。

「爆豪くんジャンケン鬼強じゃん」
「たりめぇだろ俺ァ全部強ェんだよボケ」
「運要素なのに!? ゴンみたいな必勝法でもしてんの?」
「ありゃ1体1じゃなきゃ意味ねェだろうが」
「ゴンって誰だ?」
「漫画の登場人物だよ、轟くん」

 ハンターハンターを知らない轟くんに、緑谷くんが掻い摘んで説明して上げていた。連載再開、したら読もうね。ジャンケングーで爆豪くんにパンチしたらビビられるかな。ちょっと面白そう。普通に殴られそうだしやめとくけど。

「よーっし折り返し。ジャンケン〜ほいっ」
「あっ」
「お」
「チッ」
「待って調子いいかも、予知能力に目覚めた」

 一人勝ちした。むしろこの三人の出すのが揃いすぎなのかもしれない。

「爆豪くんぬぎぬぎしましょうね〜」
「こっち来んな変態痴女!」

 爆豪くんのシャツを脱がしにかかろうとしたら顔面に靴下が飛んできた。顔面に靴下て。犬か? 私は。

「じゃあ緑谷くん」
「ヒッじっじじ自分で脱げるから……!」
「てめェそれセクハラだぞ」
「緩名、駄目だ」
「冗談ですごめんなさい……」

 めちゃくちゃ顔を真っ赤にして怯えられた。とって食われるとでも思ってんのかな? 緑谷くんはシャツを脱いで、中にはいつものよく分かんない文字の書いたTシャツ。ドレスシャツって書いてる。違う。

「緑谷くんのTシャツって謎だよね」
「えっそうかな?」
「ダセェって言われてんだよクソデク」

 緑谷くんを煽る爆豪くんも、アジフライとか着てるからわりとニアって感じだと思う。ダサいとは言ってないもん。

「轟くん、半裸だね」
「そうだな」
「まあ……わりとよく見る」
「緩名さんは治癒もよくしてるしね」

 バサッとTシャツも脱ぎ捨てた轟くん。そう、実際回復して回る時に傷の具合を見るため、流石にちんちんとかは見ないけどパンイチくらいならわりと慣れっこなのだ。とはいえ、改めていい身体してるなあ、と思う。クビレの少ない、均整の取れた筋肉。ストンとしてる。肉が少なくて、スマートなのにわりと骨太だよね、轟くん。腹筋バキバキ。最高。筋肉ってエロい。

「緩名、見すぎだ」
「あっごめん、つい」

 ジッと見てしまった。治癒する時は治癒しなきゃって意識の方が先立つから、こんなマジマジ見るあんま機会ないし。眼福だ。

「触ったら怒る?」
「アァ!?」

 許可なく触れるのはマナー違反だからさ。今更って気もするけど。聞いてみたら爆豪くんが信じられねえみたいな声を上げた。緑谷くんも目を見開いている。え、痴女っぽい? いやでも女の人ってだいたい筋肉好きでしょ。マッチョバーとかあるじゃん。知的好奇心と少しの下心だ。

「いいぞ」
「てめェも許可してんじゃねェ! さっさと次やんぞオラ!」
「いった、ごめんって」

 べちんっ、とわりと強めに後頭部を叩かれた。脳みそ口から飛んでいきそう。ギチギチとそのままアイアンクローされる。いたいいたい、脳無になっちゃう。爆豪くんなりに一応手加減はしてくれてるみたいだけどまあまあ痛いんだって。
 怒り心頭の爆豪くんに促されるまま、7回目のジャンケンを繰り出す。パー、パー、チョキ、チョキ。ここまでアイコならないの凄くない? ちなみにパーは私と緑谷くんだ。やっぱり爆豪くん強い。緑谷くんがこの世の終わりみたいな顔をしてるし、爆豪くんの目付きは鋭いを超えて蝶々になって飛んでいきそう。かわいいね。

「おっまえ……!」
「いやいやいや、運だから、運」

 キレ豪くんだ。そんなに言われても仕方ないし。ジャンケンこんな弱かったかな〜。

「も〜じゃあ爆豪くんに選ばせてあげるから」
「てめェの死に方をか?」
「物騒〜。じゃなくて、ブラとパンツどっちがいい?」
「ブッ……!」

 止まった。え、流石に爆豪くんでも照れるんだ。え〜かわいい。今度から余計に弄りやすくなっちゃう。珍しくちょっと顔が赤い。

「緩名、そりゃだめだ」
「轟くん」

 半裸の轟くんに迫られる。うわ、顔がいい。身体もいい。高校生なのに出来上がった身体してるな〜。

「緩名は気にしてねぇみたいだが……俺たちも男だぞ。頼むからちょっとは意識してくれ」
「……はい」

 まさかの轟くんからガチめに説教、というか言い聞かせられた。冗談が過ぎたかもしれない、反省。ごめんなさい、と素直に頭を下げると、ポン、と大きな手が頭に乗って撫でられる。こういうこと、普通にするから意識しなくなるみたいなとこもあるけど、若干の責任転嫁だ。距離近いんだもん。逆セクハラ、だめ、絶対。

「まあでも脱ぐもんは脱ぎます」
「……見ないようにするから、俺の後ろにいろ」
「え〜」
「緩名」
「ハイ」

 普段わりと感情抑え目な轟くんの、ちょっとイラッとした声、こえ〜。言いつけ通り轟くんの後ろに隠れて、ゴソゴソとブラを取る。ホックを外すと解放感。息苦しいよね、結構。轟くんが胡座をかいて座ったので、なんかみんな座る感じになった。立ちよりマシ?

「ねえ服取って〜」
「あっ、うん!」

 地べたにブラ置くのもな……と思って、適当に畳んで置いてた制服を緑谷くんに引き寄せてもらう。触るのに一瞬躊躇した様子を見せたけど、こっちを見ないように緑谷くんが取ってくれた。避けられすぎて辛い。

「オイ」
「なに?」
「隠せや……!」
「え?」
「ソレ!」
「ああ」

 畳んだ服の上に脱いだブラを置いたけど、それもダメだったらしい。たしかにダメだわ。スカート、ブラ、シャツの順で重ねて置いておく。今日のブラかわいいやつでよかった〜。下着全部かわいいやつだけど。かわいい下着しかテンアゲしないしね。

「かわいくない?」
「ンなまじまじと見てねェわ!」
「もういい、次やんぞ」
「ん」

 8回戦。初めてのアイコだ。2回アイコが続いて、負けたのは爆豪くんと轟くん。いや、轟くんもまあまあやばい。

「お、やべぇな」
「轟くんフルチンになったらどうしよ……」
「汚ェもん見せんじゃねえよ」
「あ、アハハ……」

 緑谷くんの乾いた笑いが虚しい。爆豪くんは制服のシャツを脱ぎ捨てて、まだ余裕がある。目の前で轟くんがカチャ、とベルトに手をかけた。まあパンツくらいならわりと見慣れてしまっている。下半身怪我多いんだよね。

「グレーのボクサー……」
「緩名さん!!」
「ごめんなさい」

 イケメンって下着までイケメンだよね。トランクスだったらそれはそれで……ってなるけど。いや、オジパンの轟くんちょっと嫌かも。エンデパパはオジパン似合うけど。おじさんパンツ。緑谷くんにまで静止をかけられたので、反射で謝った。マジすまん。

「あと2回だ、はい、ジャンケンほほほい」
「フェイントずるくねぇか?」
「でも勝ってんじゃん」
「負けてンじゃねェよ……!」

 リズムを乱したけど、普通に負けた。私と爆豪くんが。

「んしょ」
「緩名さん絶対動かないでね」
「あい」

 もうパンツしか脱げるもんがないからさっさと脱ぐ。緑谷くんからの圧が凄いんだけど。一周まわって冷静になったかと思えば、轟くんの肩からちょっと覗くと顔は真っ赤だ。破裂する? 鬼灯みたい。

「かっちゃんの〜ちょっといいとこ見てみたい〜」「ッセ」
「盛り上げようとしてあげたのに!」
「脱ぐのにいるかンなもん!」

 パンパンと手拍子をすると、そこそこ手狭な謎空間に空虚に響いた。三人とも上裸、うち一人パンイチだ。みんな筋肉の付き方がそれぞれ違って、それぞれ良い。

「こう見ると筋肉みんな違うよね」
「ああ、そりゃ用途が違ぇしな」
「爆豪くんは個性的に腕とかメインなんだっけ。むきむき」
「鍛え方が違ェんだよ」
「緑谷くんはパッと見ひょろっとしてるけど筋肉あるよね」
「骨が細いんじゃねえか?」
「僕はまだ筋トレ全然足りてないから……そうだ! かっちゃんって筋トレ何してるの!?」
「誰が教えるかバァカ! つか何気軽に話しかけてきてんだァ!?」

 ここぞとばかりに爆豪くんのトレーニングを聞き出そうとした緑谷くんがキレられている。こうなると平謝りだ。緑谷くんってメンタルばちばちに強くない? この空間では個性が使えないので、派手な喧嘩にはならないだろうし放っておく。

「緩名」
「な〜に?」
「いや、……当たってる、さっきから」
「……それは、失礼いたしました……」
「……俺も悪ィ」

 筋肉を見るために身を乗り出していたせいか、轟くんの背中に押し当てていたみたいだ。ごめん、セクハラで逮捕されるかもしらん。ヒーロー生命終了。まじごめん。そっ、と距離を取って大人しくぺたんと座る。轟くんの赤くなった顔を見たら、なんかちょっと恥ずかしくなってきた。もーはよ終われ。

「はいはいラスト一回ね、はいジャンケンほい」
「急に適当になんなや」

 ぽい、っと適当に出すと、よかった、勝てたらしい。流石にこんな空間で全裸にはなりたくない。そこまで煩悩祭りじゃないもん。

「やっと終わった……」
「さっさ脱げやクソナード」
「さ、緑谷くんが脱いで終了、さっさと出よ」
「な、投げやりだなあ……」

 緑谷くんがさっさかズボンを脱ぎ捨てると、どこかでガチャ、と鍵の開く音がした。次いで、どデカい扉が現れる。こんなところでバリアフリー? あ、トランクス。緑谷くんはトランクス派なんだ。

「えっ、緩名さん、なっ、なに?」
「覗き見しとらんでさっさと服着ろ露出狂女」
「ふぁい」

 緑谷くんをこっそりガン見していたら、爆豪くんに怒られた。そう、服を着なきゃ出られないんだよね。パンツはそのままはけるから良いとして、ブラは流石に上脱がなきゃ着れない。後ろでホック停めるの苦手なんだよね。

「ねー、ブラ付けるから反対向いてて」
「ハイッ!」

 緑谷くんの勢いの良い返事と一緒に、爆豪くんと緑谷くんが素早くそっぽを向いた。いや、かわい〜。思春期を感じる。青い。エモ。ポップンかよ。
 前でホックを止めて、くるっと回して胸を押し込む。これが一番楽だよね。キャミを着て、制服のシャツを羽織った。よし。流石に男の子三人いる部屋で上裸になるのは、なんか違和感あったな。

「服きました」
「さっさと行くぞ」
「うい」

 扉を開けると、チカチカと目の前が瞬いて、フッと意識が飛ぶ。出られない部屋、もう二度と勘弁だ。



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