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 試験翌日。登校すると、朝から騒がしかった。

「試験で赤点取ったら林間合宿行けずに補習地獄! そして俺らは実技クリアならず! これでまだ分からんのなら貴様らの偏差値は猿以下だ!!」
「落ち着けよ長え」
「おはよ〜朝からパワフルだね」
「おう、はよ」

 落ち込んだ様子を見せる三奈、切島くん、砂藤くん、上鳴くん。実技不合格組か。林間、皆で行けないのかなあ? 行きそうな気するけど。学校に残って補習地獄、先生の人手を学校と林間で割かなきゃだし、効率悪くないじゃん。緑谷くんにまくし立てている上鳴くんをスルーして、自分の席に向かう。

「おはよう、眠そうだな」
「おはよ〜、ん、まだ眠いかも」
「あ、磨さん、寝癖が」
「んん」

 昨日学校で中途半端に寝たせいで、夜寝付きが悪かったからギリギリの登校になった。寝癖が付いているらしい頭を百に向けると、優しく触れる指の感覚。丸投げにしてると、結っても良いですか? と聞かれたので、よいよいと頷いた。好きにしてくれ。

「出来ましたわ!」
「わーおそろいだあ」

 どうぞ、と差し出された鏡を見ると、ポニーテールになっていた。百とおそろいだ。どう? と聞くと、愛らしいです! と自信満々に答えてくれる。うん、かわいい。

「お揃いか」
「うん、いいでしょ〜」
「いいな」
「轟くんもする?」
「……出来ねぇだろ」
「長さ的には難しいですね」

 適当に言った言葉に、轟くんと百の天然が入っている二人は真面目に返してくれる。ぽやぽやでかわいい。二人とも最初はツンとしてたのに。

「じゃあとりあえず写真撮ろ」
「お」
「ええ!」

 後ろを向いてインカメを構えると、二人ともカメラに視線を向ける。私が事ある毎に写真を撮るので、最初は戸惑っていたが慣れてきている。後で送ってくれ、と言う轟くんに頷くと、予鈴が鳴って、先生が入ってきた。

「予鈴が鳴ったら席に着け」

 さっきまで騒がしかった教室は、綺麗に静かになる。先生に手を振ると、一瞥をくれるのみで無視された。ひどい、昨日はあんなにお楽しみだったのに。

「おはよう。今回の期末テストだが……残念ながら赤点が出た。したがって……林間合宿は全員行きます」
「どんでんがえしだあ!」

 あ、やっぱり。筆記では赤点はゼロ、実技で落ち込んでた四人+瀬呂くんだ。瀬呂くんと峰田くんのペアは見れていなかったけど、瀬呂くんだけ落ちたんだ。ミッドナイト先生相手にいったいなにがあったのか。緑谷くんと爆豪くんのペアも、オールマイト相手に無事通過出来たんだ。良かった。険悪とか言うレベルでは収まらないぐらいの雰囲気だけど、チームワークを無事発揮出来たのかな。
 先生の最早お約束、合理的虚偽ってやつに飯田くんがおこぷんしている。めちゃくちゃ真面目だなあ。試験の内容は、生徒に勝ち筋を残しつつ生徒側がどう動くかを見ていた。私はちゃんと、先生達の課題通りに動けていたのかな〜。多分だけど、私の課題の一つは立ち回りの脆弱さ、近接の弱さだ。そしてもう一つは、諦めの良さかな、と思っている。サポートアイテムと地の利を活かすことで今回は乗り切れたと思うけど。そもそも私一人だけ単独試験っていう、結構な重荷だった訳だし、ちょっとくらい多めに見てほしい。

「まぁ何はともあれ、全員で行けてよかったね」
「一週間の強化合宿か!」
「結構な大荷物になるね」

 一週間、長い。キャリーとか家にあるのでいけるかな。夏だから冬場よりは必要な物は少ないけど、とはいえだ。いろいろ買い足しとかないとなあ。

「あ、じゃあさ! 明日休みだしテスト明けだし……ってことで、A組みんなで買い物行こうよ!」

 透の提案に、わいわいと皆が盛り上がる。用事のある轟くんとノリの悪い爆豪くん以外の皆が行くみたい。

「磨も来るよね!」
「ん〜……朝早い?」
「普通! お昼くらい!」
「普通かあ〜」
「起きろよ」
「婆か」
「悪口は許しません!」

 てぇい、と瀬呂くんと爆豪くんに緩くチョップをする。朝起きれないわけじゃないけど、休みの日は寝たくなるじゃん。雄英、土曜まで授業なんだもん。

「行きま〜す。起きれなかったらいなかったと思って」
「絶対起きてね!」

 頑張ります。なるべく。




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