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「予選通過は上位43名!!残念ながら落ちちゃった人も安心なさい!まだ見せ場は用意されてるわ!」

 危なげなく予選は通過。良かった〜。実況席にいる先生と目が合った気がしたのでピースしたらぷい、と顔ごと反らされた。見えてんじゃん!隣のマイク先生がピース返してくれた。やったね。

「さーて第二種目よ!私はもう知ってるけど〜〜……何かしら!?言ってるそばから……コレよ!」

 ルーレットの回り方が凄い。例年は何やるんだろう。

「騎馬戦……!」
「騎馬戦……!」
「個人競技じゃないけどどうやるのかしら?」
「こういうのも入ってるんだねえ〜」

 騎馬戦かあ。わりと役に立てるんじゃない?ルールによるかな。二人〜四人の騎馬、組み合わせは自由。第一種目の結果によって各自の持ポイントが振り分けられて、それを奪い合う……と。うん、分かりやすい。

「一位に与えられるポイントは……1000万!!」
「いっせんまん」
「……1000万?」

 そんなクイズのラスト問題どんでん返しみたいな。あらら、緑谷くん、可哀想。すんごい顔になってる。皆がギラついた捕食者の目で緑谷くんを見ていた。

「制限時間は15分。振り当てられたPの合計が騎馬のPとなり、騎手はそのP数が表示された“ハチマキ”を装着!終了までにハチマキを奪い合い保持Pを競うのよ」

 普通の騎馬戦とは違い、ハチマキを取られても、騎馬が崩れてもアウトにはならないらしい。ずっと何組もの騎馬がフィールド内にいるのか。勿論個性は悪質な危害を加える目的じゃなければなんでも使用可能。うへ、しんどいやつだ。

「それじゃこれより15分!チーム決めの交渉タイムスタートよ!」
「15分!?」

 わりと短い。体育祭内だから妥当か。うーん、誰と組もうかなあ。緑谷くんと組むのが一番面白そう。自由にペア組んでね!ってやつ、ぼっちには辛いやつじゃんね。

「あ、」
「!緩名さ、」
「緩名」

 緑谷くんと目が合って、歩き出そうとした瞬間、手首をがしっと掴まれた。え?と思って隣を見ると、爆豪くん。ていうか初めて名前呼ばれたかも。

「えー!爆豪くん、なになに?」
「組め」

 わあ。早い。今緑谷くんと組もうとしたんだけど。緑谷くんも驚いた顔で爆豪くんを見ている。あー。ま、

「いいよ!」
「よし」
「エエー!!!」

 面白そうだし!グッ、と親指を立てて承諾すると、爆豪くんがニヤッと笑った。初笑いなんだけど。だいぶ邪悪だけど。緑谷くんにはごめん、とハンドサインを送っておく。いや、いや、と困ったような顔で仕方ないと眼前で手を振ってくれた。爆豪くんに手を掴まれたままいると、轟くんと目が合った。爆豪くんと繋がってる、と言うか一方的に捕まえられてるだけだけど、手を見て、フイと視線を反らされた。何人か駆け寄ってきたけど隣の爆豪くんを見てああー、と言う顔をする。まあ、強化も劣化も出来る個性、集団戦だとかなり強いよねえ。

「爆豪!緩名!」
「俺と組め!」
「えー!磨、爆豪私と組も!?」
「私に決定権はないので……囚われの宇宙人なので……」

 わらわらと周りに集まってくる。爆豪くんと私、三位205Pと四位200Pで合わせて405Pだ。しかも個性も有用。

「てめェらの個性知らねぇ。何だ!?」
「B組ならまだしも!周り見てねーんだな!」
「やったー認知されてた」
「ていうか磨手いつまで繋いだままなの?」
「なんか離してくれないの……多分忘れてる……」

 掴まれてる手をブラブラさせたら大人しくしろ!と怒鳴られた。私のこと躾の行き届いてない犬かなんかだと思ってるんかも。

「轟の奴ソッコーチーム決めやがったぜ!爆豪!俺と組もう!」
「クソ髪」
「切島だよ覚えろ!!」
「爆豪くんの髪も似たようなもいたたたた手首ちぎれる」

 ぎゅっと手首を握る力が強まる。血止まるでしょお。最近の爆豪くん、弄りに対して直ぐ手出して来るんだよね。扱い雑くない?私に慣れないで欲しいんだけど。もしかして犬扱いこれのせい?

「ぜってーブレねえ馬だ!奪るんだろ!?緑谷……!」

 切島くんの言葉に納得したのか、また悪い顔で笑った爆豪くん。こわいっす。



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