act06 クラス分け
「皆谷さんはA組、桜庭さんはC組、志麻さんはH組よ」
「「優子とおっ!!」」
あの後優子がなんとか瑞香の機嫌を直し三人で職員室に向かう。言うまでもなくこの広すぎる校舎で職員室に着くまでに三人は迷いに迷い、この学校にはあの言い争いの時間の後から数えても約束時間の30分前にはゆうについていたのだが、職員室にたどり着いたのはギリギリ二分前という時間だった。
三人にクラスの説明をしたのは学年主任のおばさんで、この人もなかなか優雅な振る舞いで穏やかな人だった。
学校の説明を10分程度うけて、主任の女性が時計をみたかと思うと行きましょうかと言って立ち上がる。
それについて行く最中にクラスが告げられたのだが、優子だけクラスが遠く理沙と瑞香は思わず声をあげた。クラスを聞いた瞬間に優子は固まってから、ふ、と笑った。
「…いいの、どうせ私は一人遠いところに行くから……」
「優子、キャラ違うよ!」
「仲間外れ…っ」
「どうせ朝昼帰り一緒だろうし学校以外はずっと一緒じゃん。それでいーじゃん」
「そうだけど……」
「それにずっと三人でいたら飽きっぞ?マンネリだマンネリ」
「うちは瑞香と優子とずっと一緒でも飽きさせないよ!」
「そりゃどーも。…それに顔は広い方が便利、情報集めにも。心配しなくたって俺等の一番は俺等だろ」
「……うん!」
「出ました瑞香の天然たらしー顔が赤くなりそうですー」
「言わなきゃよかった」
「まさかのデレツン!」
前を歩いていた学年主任はよく分からないが暫く見ていなかった素晴らしい友情ねと言って涙ぐんでいた。理沙は何故?と首をかしげた。
「じゃ、昼休みにね!」
「おー」
「またね」
理沙のクラスの前で三人は短く別れの挨拶をしてまた学年主任に二人はついていく。
自分のクラスに辿り着いてからは担任から声がかかるのを待つだけだ、理沙は壁に背中をつけて寄りかかった。
横をみると長い廊下があって、少し先には瑞香も立っている。(隣の隣のクラスだから当然か)優子はまだ廊下を歩いていて、遠いせいで小さく見えた。暇だったので瑞香にひらりと手をふれば、呆れた顔をしてから返してくれた。ホームルーム中だから声をだして話す訳にはいかないのだ。
ああ、それにしても長い。我慢強いとは言えない理沙は早くもただ立っているのに飽きて座り込み始める。(疲れただけだ)瑞香はまた呆れたように理沙をちらりと見てため息をついた。
更に待ってもなかなか声がかからないので理沙はメモ帳とシャーペンを取り出して絵を書き始める。瑞香もわりと遅いことにイライラし始めたようで(何分瑞香も気が短い)ケータイをかちかちといじりはじめた。
やろうと思ったことが終わりぱちんと瑞香がケータイを閉じて右方向の理沙を見てから少し焦ったような顔にある。
「っおい、理沙」
「……(そーらーをじゆうに、とーびたーいなー)」
「(くそ、小声じゃダメかあの馬鹿)理沙!」
「はい、理沙コプター!…ん、なんだい瑞香」
「ほお、お前の夢は猫型ロボットか?皆谷」
「あー幼稚園のときはそうでしたねー、……あ」
「はじめまして皆谷?担任の大河原だ。何回も呼んだんだぞ」
「……てへ、はじめましてー趣味はあだ名作りです」
「……アホ」
瑞香は少し理沙を馬鹿にして笑ったあと大きくため息をついた。
本来この保護者ポジションは優子だというのにクラスが遠いばっかりにあの面倒は瑞香が見なければならない。
ああ、これでは自分が好き勝手できない、と瑞香は不満そうな顔をした。悠長に腕を組んで待っていたら瑞香にも声がかかる。
昼休みまでなるべく問題は起こさないようにしようと瑞香は一人決意した。
…なるべく。
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