act05 初対面が最悪






「理沙お弁当もった?」

「もったー」

「瑞香、書類忘れてない?」

「へーきだよ。優子、筆箱持った?」

「うん、もっ………ああっ!」

「……早く取ってこーい」

「ごめぇえーんっ」

「優子ってさ、ちょっと抜けてるよね!」

「お前に言われたくはないだろうけど……否定はできん」




翌日の朝8時頃に家を出た。初日というのもあって瑞香が朝にぶつぶつと言いながらも弁当を作り、優子がなかなか起きない理沙を起こして制服に着替えさせる。
リビングで見慣れない制服姿で三人顔を合わせて、何ともいえない顔をして苦笑した。家から学校に向かうのに一応地図を見て来たのだが、大通りに出れば氷帝の生徒がちらほらといたのでそれに着いていくことにした。






「おーきぃーー…」

「でかーい……」

「うぜー」



金持ちアピールか、と毒づいている瑞香を優子が宥める。ケタ違いの大きさに三人は校門を少し入った所で立ち止まり校舎を見る。瑞香がち、と舌打って腕を組む。
そうしている間に後ろからばたん、という車の扉を閉める音がして、女生徒の悲鳴に近い歓声が響く。瑞香は不機嫌なせいか校舎をその格好のまま眺めている。優子と理沙が後ろを振り返ってから瑞香を見て、困ったような面白そうな顔をした。



「邪魔だ、そこの女どきな」



優子は頭に手を持って行ってやっちゃった、とため息をついた。
随分な美形だなと思いつつアイスブルーの目をした男をみる。瑞香はゆっくりと振り返って、その男を睨んだ。



「あ?何か用かよ」

「どけっつったんだ。俺様が通んだよ」

「他にも余るぐらい歩くスペースあんだろ、お前がよけて歩きな」

「アーン?なんで俺様がよけなきゃならねぇんだ」

「俺がいま動きたくねぇからだ。なんだテメェ、何様だ」

「俺様だ。女のくせに随分な口の聞き方じゃねーか、この俺に対して」

「男女差別はよくないぜ。それにこの俺とか、なに、お前ウザいよ」

「ウザい?……テメェ良い度胸してるじゃねーか、何年だ。名乗りな」

「自分から名乗るもんだろうが」

「お前にそんな権利はねぇよ」

「え、なにうぜー。お前ほんとうぜーな、じゃあカルパッチョって呼ぶ」

「ああん!?なめてんのかテメェ」

「瑞香!瑞香!そいつ〜ニってのがつきそうな顔じゃん!」

「じゃあズッキーニでいい」

「それだぁー!」

「それだぁじゃないよ理沙!それに瑞香も、ちょ、カルパッチョはないよ」

「こいつうぜーんだもん。なんか毎日カルパッチョとか食ってそーな顔じゃねえか」





「ぶっ、……ははは」



しばらく見ず知らずの男と瑞香が言い合いをしている間に、その男の後ろにいつの間にきたのか眼鏡をかけた男が腹をかかえて笑っている。
瑞香はまた不機嫌そうにそいつをみた。瑞香と言い合っていた男もまたその眼鏡をみて苛ついた顔をする。



「……忍足ィ」

「もっ、もう無理や……っくく、この子ら、えらい……おもろいな………はは、」



その男は耐えきれないとでもいう風に笑う。理沙が真打ち登場かと言って優子に隠れながらそちらを見る。
人が増えた上見知らぬ男に爆笑され瑞香は機嫌が悪くなり、校門の方へ向かおうとする。



「気分わりィ。帰る」

「だっダメだってば瑞香!今来たばっかでしょ!」

「えー瑞香が帰るならうちも帰るぅー」

「瑞香も帰らないから理沙も帰るな!ほらいくよ!」

「もー帰らせろ……」

「じゃーねーズッキーニ」



優子に引きずられるようにして連れて行かれる瑞香とぶんぶんと手をふる理沙を二人は目で追う。男は相変わらず笑い続ける忍足を一にらみする。
後からきた体の大きい男が少し不機嫌そうな先輩にほんの少しだけ表情を変えて疑問をぶつけると、その男はなんでもねぇよ、と言ってから歩き始めた。

忍足はだいぶ落ち着いたのか男の隣に並んで靴箱に向かう。嫌そうに忍足を見てきた隣の人物ににぃと笑って、言った。





「女にあんな言われたんは初めてなんと違う?跡部」







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