act03 設定される







ぱちり。


は、と居眠りを起こされたように理沙は飛び起きた。が、頭はついていかず周りをただぼーっと見るだけだ。だが段々とハッキリしてきた意識、違和感のある場所。
理沙は思い出した、ついさっき起きたことを。(なんか、落ちてて、でも途中で急に眠くなって、)気づいたらここだ。ゆっくりと顔を動かしあたりを見る。

そこは何てことはない少し広めの普通の家のリビングのようだ。何でか自分は台所に横になっていた。立ち上がると、優子はリビングのテーブルに寄りかかり椅子に座って、瑞香はソファに横になって寝ていた。
なんであたしだけ台所?とかいう疑問もそこそこに、理沙は顎に手をあてて、言った。



「ここ、どこ」









「ちょっ、優子!瑞香っ!起きて!」

「っせぇ……」

「ぐはっ」



現状を理解するには自分一人では明らかに無理と判断した理沙は二人を起こしにかかる。しかし優子はぐっすりと気持ちよさそうで起きる気配はない、瑞香に至っては睡眠の妨害をしたからか軽く殴られる。
くそぅと呟きながら理沙はめげずにまず瑞香を起こすことにした。



「瑞香ーー起きてーー」

「マジ…うっせー……」

「うっせくない!何か私ボケたいのに二人がそんなんじゃボケられん!うちはツッコミは向かないんだよ!」

「知ってるっつーの…」

「あれ、なんだー起きてんじゃん!」



お前がうるさいからな、といって瑞香はゆっくりとソファから体を起こして座る。
寝起きな頭をフル回転しつつ辺りを見回してから、ゆっくりと理沙の方を向く。



「で、ここどこ?」

「うちが瑞香に聞こうと思ってたのに!」

「知るか。…優子は」

「テーブル」

「……起こすか」

「そうして下さい」



優子がテーブルのところへ行って優子の肩を軽く揺すりながら二言三言声をかけたら優子はあっさりと起き上がった。理沙が差別反対と声をあげたが二人は何のことかまるで分からないのでスルーした。
改めて三人でぐるりと辺りを見渡す。見覚えのない家だ。特に不審なものはないし自分たち以外にこの家に誰かがいる気配もない。

瑞香がちょっと見てくると言ってそのリビングから出て行くのを理沙が「行かないでぇええお前が居なくちゃ誰がうちを守るのおおお」と叫んでいたがそれだけ言えるなら大丈夫だろうと瑞香は冷めた目で理沙を見てから今度こそリビングを後にした。




ブツブツとまだ言い続ける理沙に優子は若干引いた。おもむろに台所へいき冷蔵庫を開けると、何でか様々な食材が入っていた。
飲み物もあるし、魚や肉、野菜、果てにはアイスなどもが揃っている。


(…怪しい。怪しすぎる)


揃いすぎている材料に優子は身構えた。いったい何なんだ、ここは。
理沙がソファにダイブしてごろごろとし始めたころ、瑞香が部屋に戻ってくる。





「どうだった?」

「……見ろ」

「なになにー」

「俺がいま外にでて写メったものだ」

「どれどれ」

「……は?」

「これは間違いなく我々の名字ではないかね?」

「……そうでございますね瑞香さん」




瑞香のケータイの画像はこの家の名札だった。そこには三人の名前が書かれている。
ということは、この家は。「俺らの家、っつーことだ」瑞香が不適に笑いながら二人にそう言う。それから三人は顔を見合わせてから、また家を見渡した。



「旅人としての住まい、ってことね」

「家一戸寄越すたぁ気前いいじゃねーか」

「アイツがいってた研究なんとかって金持ちなんかね?」




さぁ?、と言って瑞香はリビングを捜索し始める。と、テレビの下にある長方形の箱を見つける。かちゃり、手前に開くと中には鍵と手紙、そして通帳のようなもの。
その手紙は先ほどの白い人物、シンからのようだった。この家、そして家の中のものは全て好きに使って良いということ、この世界での三人の親と暮らしていない理由の"設定"、生活費は通帳に振り込まれるということが簡潔に書いてあった。読み終えると理沙はそこらの机にぽいとその手紙を置く。



「チッ、偉そうな物言いだな」

「……ねぇ、私たちまだ高2だよね?学校とかどうするんだろう」

「だよねーうんうん、うち学校嫌いだけど学食あるんなら行ってあげてもいいよ ?」

「お前は欲望に忠実すぎんだ、……」



よ、という前に瑞香がじっと理沙を見る。難しい顔で理沙を見ていた表情が段々とだらだらと冷や汗をかき嫌な顔になっていって、いやそれはないよないないと独り言を始めた。
理沙が気持ち悪そうに瑞香を見て「なに?気持ち悪いよ?」と言われたので瑞香は理沙を殴ってから、また理沙の頭に手を確認するようにしておく。



「……お前さぁ、急に髪のびた?」

「え、伸びるわけないじゃん」

「……いや、でもお前、髪型ちがくね?」



瑞香が理沙の頭に手を置いてもんもんと悩んでいる間に優子は手紙の入っていた封筒を手にする。


(……ん?)


外からの光で封筒が透けると、まだ中になにか紙があることが分かる。
封筒を逆さにして乱暴に出すと、パソコンで打たれた文字が並ぶ書類が何枚か出てくる。それを開いてゆっくりと読んでいった優子の顔が歪んでいった。



「っねぇ!これ!」



勢い良く紙を二人の顔に突きつけて読ませる。二人は疑問そうにその書類の一番大きな文字をみた。




「ひょう…てい、?学園……どこだそれ」

「偉そうな名前だね瑞香」

「全く持ってその通りだな。帝とかウザい」

「そこじゃなくて!!」



その下!と切羽詰まった表情で言ってきた優子に二人は目線をその下に移す。二人の顔はだんだんと嫌なものに変わっていく。





「「中等部ぅ!?」」






→next








人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -