act25 帰宅最中






「お腹減ったぁああ」

「うるせー理沙!」

「お前のがうるさいよおかっぱ!」

「あ、でも今日瑞香寄り道してくって言ってたな……理沙、今日ご飯遅いかもよ?」

「うっそーん」

「自分ら一緒に住んどるんやったっけか?」



部活の帰り、部室からレギュラーとマネージャーの二人が固まってぞろぞろと帰る。近頃理沙はやっとレギュラー全員の名前を覚えたからか鳳の名前を連呼していた中(漢字が気に入ったからというだけである)急に空腹を訴えて岳人と言い合いをしていた。
そんなとき優子は我が家の料理人の不在を思い出し呟くと理沙は大げさに沈んだ。忍足が思い出したように言えば、優子は素直にうんと頷いた。

変に隠すよりはおおっぴらに言ってしまったほうが怪しまれないだろうと転入してきた始めのころから一緒に住んでいることは皆に知らせている。



「お前等が作れば良いじゃん」

「……瑞香に禁止令出されてるから…」

「なんでー?」

「゙理沙たちに料理させたら死人が出る゙が瑞香の口癖の一つだよー」

「…そんなにできひんの?」

「それほどに出来ないのです」



優子が遠い目をしたのでその場に居たレギュラー+日吉は、あ、マジだ、と心中でハモった。跡部と樺地はまだやることがあると言ってまだ部室に残っている。樺地は付き合いだろう。
校門に着いたところで理沙と優子はくるりと振り返って、「じゃあまた明日ね」と言った。



「送ってこか?」

「あはは、それ何回目?大丈夫だよ、近いし」

「そんな暗くもないしねー」

「誰もお前は襲わねーよ」

「岳人うっさい!」

「まぁ心配なのは志麻のほうだな」

「宍戸まで?!見損なったぞ!」



理沙は宍戸を指差してそう言うが優子がはいはいと言いながら理沙の背を押し、今度こそばいばいと言いながら去っていった。鳳と日吉は本屋に寄っていくと言ってまた先輩たちと別れ、残りは三年だけとなった。
ジローと岳人は二人でぎゃあぎゃあと騒いでいて、宍戸と忍足はそれに呆れながら歩く。



「毎日家事やら何やら大変なんやろな」

「ああ、桜庭なんか早起き嫌いなのに弁当作んなきゃなんねーっつって毎日愚痴ってるぜ」

「志麻さんも洗濯干すん面倒やて言うとったで」



で、皆谷は何もないんだろうな、と言って二人は小さいマネージャーを思い出して笑った。



「何だかんだ言ってあの二人は皆谷にあめぇと思わねぇ?」

「せやな、…まぁ桜庭の方は知らんけど」

「何だよ?」

「何かよう分からんのやけど嫌われとんねん」

「お前何かしたんじゃねーの」



そう言いながら二人はにやにやと笑った。
後ろに居た子供二人組は二人で居ることに飽きてきたのか、前にいた宍戸と忍足の隣に並ぶ。



「俺らも混ぜろよ侑士」

「なになにー瑞香たちの話しー?」

「ああ、変な奴らだよなってよ。なぁ忍足?」

「せやな」



二人がまた笑いながらそう言うものだから、ジローと岳人は不審そうな顔をしながらもその会話は流した。



「そーいえばさぁ、宍戸は瑞香とよく喋るよねー。前は女子とあんま話そうとしなかったC」

「ああ……そうだな、何かアイツ楽だしよ」

「楽しいしね」

「つーかそれなら忍足だろ、いつになく志麻に執着してねーか」

「そうでもないで」

「嘘つけ」



一人の女にこんな興味持つことなんかなかったろ、と宍戸がつっこむと忍足はとぼけたように肩をすくめた。「忍足その顔うぜーえ」とジローが笑うと、岳人もまたけらりと笑う。
それにつられて、二人もまた笑った。







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